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私的注目エリア、島原の渋酒場を飲み歩いて改めて気づいたこと
  • EAT&DRINK
  • 2017.11.23

私的注目エリア、島原の渋酒場を飲み歩いて改めて気づいたこと

大学卒業後、京都の情報誌作りに関わってきた中で、私自身が飲食店に求めるモノが多様化していることに気づいたのは30歳を過ぎた頃でした。

20代の頃は、とにかくオシャレなお店、有名店で修業したシェフがオープンさせた話題のレストラン...とまあ知人、友人を連れて行ってドヤ顔できるお店探しに奔走していました。

アラフォー世代となった今もそういうお店には惹かれるし、よく行きますが、私の中では「オンモード」のお店というくくりにしています。そして、肩肘張らずに寛げる「オフモード」のお店というのが「渋酒場」なのです。

良い渋酒場というものは、店主、雰囲気のある店内、歴史、常連客、料理、学び...こういったものが絶妙に絡み合ってなんとも言えない居心地の良さを演出します。グルメサイトの点数のように安易に数字で評価できるものではありません。

ということで前置きが長くなってしまいましたが、そんな渋酒場が集まる島原周辺を飲み歩いてきましたので、「渋酒場」に少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです。

創業90年「たこまつ」

龍谷大学大宮キャンパスからも近いですが、島原は以前格式の高い花街として栄え、西郷隆盛などが訪れた揚屋(今でいう料亭、宴会場のような場所)も現存しています。この島原大門のような文化財も点在しているので、ハシゴ酒の酔い覚ましに歩くのもおすすめです。

そしてまずは一軒目!【たこまつ】
看板にでかでかとおでんと書かれていますが、
この時期はおでん……ありません!

こちら大根のおでんが有名なのですが、材料の聖護院大根が収穫できる11月中頃~3月の期間しかおでんを提供されないのです!女将さんのこだわりです!(私はこのお店のおかげで聖護院大根の旬を覚えました。)
それ以外の期間は一品料理を楽しむスタイルです。
では名物おでんが厳密にいつから始まるのか?常連さんに教えてもらいました。

こちらの店前の提灯。今は「一品料理」となっていますが、おでんが始まると「おでん」に変わるそうです。近隣の常連さんたちは11月に入ると、この提灯が変わるのを心待ちにされるそうです。ホームページで告知!とかではなくアナログでなんとも小粋です。

おでんはなくても一品料理はどれも絶品です。
ちなみにおでんはこんな感じです。

早く食べたい!
女将さん曰く「種まき終わったから、今年は11月20日頃かなー」とのこと。収穫を心待ちにするこの感覚が新鮮です。今は何でも簡単に手に入りすぎるのかも知れませんね。

ちなみにお茶はおかわり自由スタイル。

気さくな常連さん達と絡みながら旨い一品とお酒を楽しむ。至福の時間。
この日は笑い話以外にも、戦時中の実体験など貴重な話も聞けたりしました。京都にも空襲があった。京都に住んでいても知らない人が多いと思います。
そして女将さんがご主人を亡くされてからお店を引き継がれた時の話。お店のことが何も分からず手探りで営業を始めて、料理はなんと常連さん達に聞きながら完成させたそう。本当に愛され続けているお店です。

まだまだ話は尽きませんが今宵はハシゴ酒。このあたりで次の店へ。
『11月後半におでん食べにきますねー』
常連さん「それまでに来てー、さびしいやん」
『はい!』

「あか」発祥、お好み焼きやすい

京都のお好み焼き屋などで親しまれているこちらのお酒、「あか」または「ばくだん」と呼ばれています。

赤ワインと焼酎を混ぜサイダーなどで割るのですが、こちらが発祥の店とのこと。戦後間もない頃に先代が考案されたそうです。

絶品お好み焼きのソースは、

甘口と

辛口の2種類。甘口は本当に甘みが強く、辛口はなかなかの辛さです。「あか」が甘いので、辛口が良く合います。

他の鉄板メニューも美味しいです。

『この鶏、柔らかいし塩加減も良くて美味しいですねー』
店員さん「なーんにもしてない普通の鶏やけどなー」
この返しが素敵ですね。

お好み焼き好きな方は、「あか」発祥のこちらでお好み焼きとの組み合わせを楽しんでみてはいかがでしょうか。

本当は教えたくない隠れた名店【大八】

以前私が編集長をしていた雑誌で、「グルメサイトに載っていない名店」という企画をやりました。好評だったのですが、掲載するお店探しには大変苦労しました。ネットに載っていないため自分の足で探すしかないからです。
夜な夜な赤提灯を探して歩き回り、飲んだくれる日々。その中で出会ったのがこちらの【大八】でした。

島原から歩くこと15分。御前花屋町あたりです。

早速入店!
『お席空いていますか?』
入口付近の常連さん「空いてますー」
マスターよりも早く常連さんから返事が(笑)こういうウェルカムな雰囲気のお店なのです。

こちらはコの字カウンターのみで、馴染みのお客さん達がマスターを囲んで語らいながら食事を楽しんでいます。初めて訪れた時もマスターを介して向かいのお客さんに話しかけてもらい楽しませてもらいました。

私と入れ違いで帰る常連さんに、他の常連さんが「もう70(歳)なんやから、気を付けて帰りや」と声かけるとすかさず「今年69や」と返され他のお客さん達もくすりと笑う。
お客さん同士の細かなやりとりもおもしろかったりするので聞き逃せません。

そしてこちらの魅力の一つ、メニューの数!
焼鳥、ラーメン、お造り、お好み焼き、しゃぶしゃぶ…なんでもあります!

さらにその日のおすすめが大皿に盛られて並びます。これが絶品+ボリューム満点です。
今宵は三軒目なので軽めのものを。

名物の絶品餃子。

マスターおすすめ冷麺。これで半人前。

そしてコレ!サービスで登場した枝豆。丹波の枝豆はもう少し時期がずれるそうで函館産とのことですが、これがなかなかいけます。
頼んでいないメニューをマスターが好意で(気分で?)出してくれるのがこちらの特徴の一つ。
「これ食べてみー」と笑顔でお皿を出してくれるのです。

初めて訪れた際は3品も出てきて、会計時に全てサービスだと分かって大変驚きました。しかも常連さんのお土産の焼酎をタダで何杯もいただいて「酔っ払ってしんどかったらここに泊まって行ったらええでー」と。
さすがに社交辞令かと思いますが、まさにキングオブアットホーム。
家が近ければ週8で訪れたい酒場です。
まだ5回目ぐらいの訪問ですが、常連さんで顔を覚えてくれている方もいらっしゃって、楽しいひと時を過ごせました。

笑顔のマスターに近々来ることを約束しお店を後にしました。

ということで京都市の中心部から少し離れた島原周辺エリアを飲み歩きましたが、このエリアまだまだおもしろくて紹介したいお店が溢れています。京都という街は本当に奥が深い。

最後に

渋酒場という場所は、初対面の方でも目上の方でもしがらみ無く気さくに話せるので、会話の中から今まで自分が知らなかった世界の扉が開くことがあります。今回の酒場めぐりでは、【たこまつ】で聞いた戦時中の京都の歴史が気になるので勉強してみたくなりましたし、【大八】の常連さんに教えてもらった絶品うどん屋さんにも行こうと思っています。
こうして肩を並べ見聞を広めることも酒場めぐりの醍醐味の一つかも知れません。
暖簾をくぐればそこに拡がる未知の世界。
一歩足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
渋酒場に。


一軒目 たこまつ
京都市下京区花屋町通櫛笥西入薬園町167-5
二軒目 やすい
京都市下京区二人司町4
三軒目 大八
京都市下京区西七条西八反田町77

細井 悠玄 氏

細井 悠玄 氏

ほそい ゆうと

龍谷大学法学部卒業後、本と京都が好きという理由で2002年地元の出版社に就職。グルメ情報を中心に扱う月刊誌の営業・制作を経て、2014年に京都初の男性版情報誌の編集長として創刊を担当。渋酒場、ネット未掲載の名店、看板娘、一流シェフの最後の晩餐飯、などなど「使える街のネタ」を特集し地元京都の書店でベストセラーに。3号目を発行後、後任に編集長を譲りフリーランスに。