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世界を駆け巡るカレー ~ カレーの真実 ④ ~
  • TRIVIA
  • 2018.05.11

世界を駆け巡るカレー ~ カレーの真実 ④ ~

カレーといえばインドの伝統的な料理ですが、インド人が日本のカレーを食べて「この食べ物は何ですか?」と質問したとかしないとか...というくらい両国のカレーは似ていません。何故それほどまでに違うのか?それは15世紀中頃、西洋の大航海時代に活発だったスパイス貿易が関係しています。

日本のカレーの由来

仏教がインドからシルクロードを東に向かって日本に伝わったのは有名な話ですが、インドで生まれたカレーは同じルートを通らず、ヨーロッパへ大きく迂回して日本に伝わっています。
歴史的にみると、カレーの原材料である東南アジアやインド産のスパイスは、アラビア商人によってシルクロードを経由してヨーロッパに運ばれていました。当時たいへん高価だったスパイスを、アラビア商人を介さず直接入手できれば、大きな富を得られると考えたヨーロッパ諸国は、いち早くインドやアジアへのルートを開拓すべく海に漕ぎ出しました。これが「大航海時代」です。
当時ヨーロッパの国々は、インドやアジアの国々を植民地として次々と支配していましたが、インドもイギリスの植民地となっていました。こうしてカレーは、現地の総督だったイギリス人によってヨーロッパに紹介されたと言われています。

カレーをつくるのに欠かせないカレー粉は19世紀にイギリスで開発されました。あの特有のとろみも、小麦粉を加えるというイギリス風のアレンジです。日本に伝わったのは明治時代、日本の独特の食文化によるアレンジが加えられたのが、現在の日本のカレーです。このように、カレーはさまざまな文化が融合してできた料理なのです。

カレーこそ「グローバル」と呼ぶのにふさわしい

カレーに不可欠なトウガラシも世界中を駆け巡ったスパイスです。トウガラシの原産地は中南米で、15世紀にヨーロッパ諸国によって南北アメリカ大陸が「発見」され、支配されていく過程で世界各国に広がっていきました。いまでは、乾燥トウガラシやコショウの世界貿易額は20億ドルを越え、とりわけ、多種多様な人びとが暮らすアメリカのスパイス市場は大きく成長しています。

日本でもトウガラシは古くから栽培されており、世界の貿易拡大によって昭和38年頃には年間7000トンを生産、海外輸出していたようです。現在は円高と作り手不足により、多くを中国からの輸入に頼り、日本での収穫量は約200トンにまで減少しました。
日本の生産地は山形、大分、東京、福岡が上位4県で、全生産量の4割を占めますが、いまでもご当地トウガラシによる地域おこしが日本各地で活発に行われているようです。

トウガラシ以外にも、カレーに入れる代表的な食材(三種の神器とも言えるジャガイモ、ニンジン、タマネギ)の原産地は世界各地にまたがっています。つまりカレーは人と農作物のグローバルな移動の結晶といえるでしょう。

ひとつの料理、ひとつの食材は、現代社会を映す鏡であると同時に、多様な地域の社会、経済、文化の歴史を伝える語り部なのです。

坂梨 健太

坂梨 健太

さかなし けんた

龍谷大学農学部講師、博士(農学)

熊本県出身。熊本高校卒業。熱帯アフリカに暮らす農民の経済や自然環境利用について研究を行い、京都大学大学院農学研究にて修士過程、博士課程(農学)を修了。専門は農業経済学、アフリカ地域研究。著書に『アフリカ熱帯農業と環境保全』(単著、昭和堂、2014年)など。