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初夏の嵐山、太秦。飲み歩きのすすめ
  • TRIVIA
  • 2018.06.01

初夏の嵐山、太秦。飲み歩きのすすめ

京都屈指の観光スポット嵐山。渡月橋あたりは「お祭り?」というぐらい観光客で溢れかえっています。

地元京都の人は観光地のイメージが定着していてあまり足を運ばないエリアですが、嵐山には京都人が愛してやまないものがあります。

それは「川」。

天気の良い日に鴨川沿いをジョギングしたり、座って眺めてみたり、「川床」が夏の風物詩として親しまれていたりと、とにかく京都人は川が好きです。

嵐山の川といえば桂川。そんな桂川沿いに、先斗町の川床(ゆか)や貴船の川床(かわどこ)とはまた違った昼酒場があります。

今回はこちらから飲み歩きスタートです。

桂川沿いで一献 琴ヶ瀬茶屋

まずはこちらの看板をご覧ください。
「向岸の茶店にお越しのお客様はこの黄色のボートをご利用下さい」とあります。

そう、このボートで桂川を渡ることから始まります。冒険の始まりのようなワクワク感。

では、早速行ってみましょう。

対岸にうっすらお店が見えています。

ちょうど川の半分。まだ結構距離あります。

ようやく近づいてきました。

到着。
こちらが琴ヶ瀬茶屋。実は創業大正8年、100年以上の歴史あるお店なのです。
それにしても川が近い。席から川までの距離は2mほどでしょうか。

川を眺めながらの一杯は最高です。まさに非日常空間。

ボートで楽しむ方々を眺めていると、自分の住んでいるところが観光地なのだと再認識しますが、耳にするのとその中に入り込んで体感するのではリアリティが全然違います。
世界中から長い時間をかけてこの場所に来ているって、改めて凄いことです。

とここで名物、川魚のあまごの天ぷらの登場。少し内臓の苦味がありますが塩加減も絶妙でサクサクいただけます。
旬のものを採れた場所でいただくのは何とも贅沢。
夏は天然ものの鮎の塩焼きも登場します。
保津川(桂川)の鮎といえば、某人気グルメ漫画でも取り上げられたことがあるぐらい有名ですから、鮎好きの方にはたまりません。
さて、夜に備えて嵐山散策でもして、酔いを醒ますとしますか。

ちなみにこちら、実は陸路でも行けちゃいます。
雨、強風、飲みすぎの際はこちらをご利用下さい。

風呂上がりの一杯 京乃湯

阪急松尾大社駅から四条通を東へ。散歩も兼ねて歩くこと20分。
自称“ネオ銭湯”こと【京乃湯】があります。

なぜこの企画で銭湯に来たかといえば、飲み屋さんが併設されているから。

入口の階段にはメニューがずらり。

とりあえず汗を流すとします。大人430円と良心的な価格帯で、手ぶら歓迎というのも嬉しい。

~入浴中~

汗をかけばかくほど湯上りの爽快感は倍増しますね。さっぱりとして生き返ります。
それでは併設の【京乃湯亭】で風呂上がりの一杯をいただくとしますか。

カウンター、座敷、テーブルとなかなかの広さです。
とりあえずビールと数品をオーダーします。
出てくるまで時間があるので、こんなもので遊んでみましょう。

昭和世代には懐かしいおもちゃ。久しぶりに遊ぶとかなり楽しいです。
あっという間にメニュー到着です。

キンキンに冷えたビールとポテサラ。
風呂上がりの火照った体に一気に流し込みます。
ここで一句。
“散歩して お風呂入って ビール飲む”
日常に潜む最高の贅沢を表現してみました。

なんだか旅行に来ているような気分になってきますね。

お造り盛り合わせ3種1480円。ブリ、真いか、かわはぎなど。
銭湯の併設と思って侮ることなかれ。かなり美味しい。
漁師から直送してもらっているというこだわりぶりです。
これからの季節はブリからハマチに替わるそうです。
ハマチと言えばブリの幼魚のことですが、出世魚ブリの名称は成長過程によって、また関西と関東で違ったりしているので調べると中々奥深いですよ。

それにしてもこちらはメニューの種類がかなり多い。トルコライスに麻婆豆腐、ラーメン、蕎麦、チャーハン、ナポリタン、揚げ物…
魅惑満載です。
ずっと居たくなりますが、そろそろ次の酒場へ向かうとしましょう。

知る人ぞ知る名酒場 おっぺけ亭

太秦というところは京都市中心部からわざわざ食事だけに来る人が少ないので、意外と知られていない名店が多々あります。
撮影所の関係で俳優さんがお忍びで通っていることも多いですね。
先ほどの【京乃湯】さんから徒歩5分ほど。

太秦ではかなり有名な【おっぺけ亭】さんがあります。

店内は大賑わいです。そして壁に貼られている名言の数々。

「酒は飲んだら 飲まれるべし」
飲まれるな、ではありません。笑

「負けるな お父さん」

「自分は自分でいいやん」

ぼーっと見ているだけで楽しいこれらの文言は、大将とお客さんが考えて書かれたもの。
常連さんとの繋がりの深さが透けて見えます。

そして、大将のこの文才はメニュー内でも遺憾なく発揮されているのであります。
例えばニンニクを使った「にんばく」の隣には、「今宵のチューはあきらめて」と一文添えられています。“キスではなくチュー”というところがなんとも乙なものです。

他には、「たたきキュウリ」には「パーよりグーでたたくと美味い!」なんかも面白い。“握りこぶしではなくグー”というところにセンスを感じます。

こちらは豚マヨ炒め。キャッチコピーは「作り方教えての声もちらほら」です。
確かに美味しくて家で作りたくなるので納得。
カウンター席でしたら、大将との会話のきっかけにもなります。
そうこうしている内に、気が付けば常連になってしまっているという方も多いと思います。

もう一品面白いメニューをご紹介。

玉子、とろろ、納豆を“ずるずるっ”といただくその名も「ずるずる」。
血糖値を上げにくいヘルシー食材揃い踏み。
いただくとやはり“ずるずる”と音がするので、少し「やられた」と思い、はにかんでしまう。

そして、牛すじがトロットロの煮込みや、

焼き鳥といった酒場定番メニューも揃う。

四日市の名物、トンテキのような期間限定メニューもあったります。

こんなに楽しく旨い酒場がある太秦。やはりわざわざ来る価値ありです。

それでは最後のお店へ向かうとしましょう。

俳優にも愛される名酒場 得喰ん

こちらも地元の方に愛される名酒場。
俳優さんがよくいらっしゃることでも有名です。特別扱いせず過ごしてもらうようにされているのが逆に心地いいのでしょう。

21時を過ぎてもお客さんが絶え間なく来店され、入れ替わりつつも常に満席。

夏の酒をいただくとします。

夏吟醸陸奥八仙。さっぱりと飲みやすい酒。やはり夏は“冷や”が美味しいです。

注文をして店内を眺めているとカレンダーに先ほどの「おっぺけ亭」の文字が。
こんな偶然もあるのですね。
おっぺけ亭からハシゴで来たことを伝えると、大将が笑顔で「そうなんですか!うちも仲良くさせてもらってるんですよ」とのこと。

その街にはその街の人と人の繋がりがあるものです。馴染みのお客さん同士が話す姿を見ていても、なんとも温かいというか、“人の体温を感じる”居心地の良いお店だなと実感します。

辛味大根の蕎麦があったので、ちょっと酔い覚ましに。
そして、芋をポリポリ食べる“芋ポリ”を注文。

さつまいもを一からカットされます。

しっかり揚げると、

完成。
シンプルな料理ですが、食べ始めると止まりません。
ポリポリポリポリ…

再びお酒が進み、お皿にこぼれたお酒を注ぎなおします。
ちなみにこの「もっきり」と呼ばれるお酒をこぼれるほど注ぐスタイルは、グラスを半分ぐらい飲んでからグラスの底を拭いて、こぼれたお皿の酒を注ぎ直すと良いです。

お腹の具合もそろそろ限界。
ということで今回のハシゴ酒はこれにて終了。

酒場で身も心も満たした後は、涼しくなった夏夜の太秦をそぞろ歩き。
夜風が心地いい。京都市中心部と違って街の灯りが少ない分、店の灯りが目立ちます。
灯りに吸い寄せられるように近づいてみるとスナックの看板が…
もう一軒寄ってみようかな…

最後に

今回は京都市西部、嵐山、太秦の渋酒場、変わり種酒場を巡りました。少し足を伸ばすだけで一気に非日常感が増すのでかなりおすすめです。
このエリアのお店で“俳優の〇〇さんが食べに来ていた”という話が出ると、必ず“何の撮影で来ていたのか”という話になります。するとなんだか身近に感じて、「その映画、観に行ってみようかな」という気分になります。
おそらくこのエリアでは、単に“有名人が来てくれた”というだけではなく、身近にある撮影所や俳優さんを応援する文化が昔から根付いているのだと思います。

このように普段行かないエリアの名酒場にはそのエリアならではの新しい発見と、人の温かさ、さらに旨い酒とアテが揃っているものです。

一軒目 琴ヶ瀬茶屋
京都市西京区嵐山元禄山町
二軒目 京乃湯亭
京都市右京区梅津南上田町47-1
三軒目 おっぺけ亭
京都市右京区太秦樋ノ内町11-12
四軒目 得喰ん
京都市右京区太秦多藪町43-32

細井 悠玄 氏

細井 悠玄 氏

ほそい ゆうと

ニュースサイト京都速報 編集長

龍谷大学法学部卒業後、本と京都が好きという理由で2002年地元の出版社に就職。グルメ情報を中心に扱う月刊誌の営業・制作を経て、2014年に京都初の男性版情報誌の編集長として創刊を担当。渋酒場、ネット未掲載の名店、一流シェフの最後の晩餐飯、など「使える街のネタ」を特集し地元京都の書店で3号連続ベストセラーを達成。その後、後任に編集長を譲り独立。「ニュースサイト京都速報」を立ち上げ取材の日々を過ごす。