TOP / Agriculture / イネも風邪をひく!?

美味しい新米の季節ですね。そこでお米にまつわるトリビアを少々。

お米は、ご存知のようにイネの種子です。イネはお米をたくさん実らせてくれ、日本人はじめアジアで大切にされてきた作物です。そのイネ、実は寒い夏に風邪をひくってご存知でしたか?風邪といっても私たち人間の風邪とは症状も病原体も違いますが。

寒い夏はお米の敵です

今年は猛暑でした。でもお米の作況指数は悪くなさそうでよかったです。
もし冷夏だったら、凶作になることがしばしばあります。ある程度以上の年齢の方なら覚えてらっしゃるかもしれません。1993年の冷夏。この年は凶作で緊急輸入が必要になり、平成の米騒動と呼ばれる事態にまで発展しました。外米の輸入も行われるほどで、社会問題になりました。幸い、餓死が出るような深刻な問題には発展しませんでしたが、これが江戸時代以前なら、大量に死者を出す大飢饉です。寒い夏はお米の敵です。

「いもち病」って?

冷夏には、冷害が収量や品質の低下をもたらすのですが、そういう年に限っていもち病というイネの最大病害が蔓延してしまいます。これが米の収穫に致命的な影響を与えます。
低温に加えていもち病。泣きっ面に蜂です。神様の意地悪!って思っちゃいません?
いもち病はいもち病菌というカビの仲間が感染して起こる感染症の一種ですが、イネはいもち病をはじめいろんな病原菌に対して抵抗力を本来備えているので普通の夏ならばイネは元気です。
さらに、病原菌に対する抵抗力が高い品種を日本人育種家は作り出して来ました。栽培方法も改良が重ねられて来ました。
さらに、イネの抵抗力を高める滋養強壮剤みたいな農薬もあったりします。(もちろん人間にも環境にも無害です)。
なので、いもち病菌はあちこちにいますが、普通の夏には大発生したりはしません。

イネの風邪は恐ろしい。。。

ところが、パワーアップした抵抗力があっても、寒さや乾燥に晒されるとイネの抵抗力が低下することが最近わかってきたのです。
もう、ピンと来た方もいらっしゃるかもしれませんが、いもち病の発生はイネの風邪なのです。冷夏に限っていもち病が大発生する、というよりは、冷夏だから抵抗力が落ちて大発生していたんですね。イネが悪性の風邪をひいたと言えます。
ブルっと震えてくしゃみとともに鼻水たらす私たちの風邪は、漫画の一コマに描かれますが、イネにとっては恐ろしい病気なのです。