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秋の夜風を感じつつ、屋外で一献
  • TRIVIA
  • 2018.11.09

秋の夜風を感じつつ、屋外で一献

博多に行くとあちらこちらに屋台があり、地元や観光客で賑わっているのをよく見かけます。

屋台というのは解放感があり、店主を中心に一体感に包まれていて知らない客同士でも気軽に話したり、乾杯したりできてしまう不思議な魅力があります。

そんな屋台が、実は京都にも少し前まで点在していました。

七条河原町の角にあった屋台などは今の40代以上の方には懐かしいのではないでしょうか。

そして昨年12月、吉田神社の前で営業されていた京都最後の屋台ともいわれる「せせり」が閉店。私も含め多くのファンが落胆したことは記憶に新しい。

こうして京都の屋台文化が消えていくのかと思っていた矢先、なんと「せせり」が今年の4月に京都駅近くで営業を再開されたという嬉しい情報を入手。

ということで、今回は今の季節が最高な「秋の外飲み」と「京都の屋台」をテーマに飲み歩くことにします。

1.創業40年、元屋台の「吉田山せせり」

京都駅八条口から徒歩五分ほど、ホテルの開業ラッシュに沸くエリアの一角にあります。
「光洋軒」というお店の横に路地があり、ここを奥に進みます。

するとカウンターだけのお店があります。
こちらが「吉田山せせり」。以前の馴染み客にも分かりやすいよう「吉田山」と店名に付けられています。

さすがに屋台での営業再開は出来なかったようですが、店内のカウンター席以外にこんなテーブル席があり、外飲み好きには特等席となっています。

恐らく外飲みが最も気持ち良い季節は、1年の中でも4月5月10月ぐらいでしょう。
秋の夜長をまた「せせり」の焼鳥と共に過ごせるとは、こんなに嬉しいことはありません。

ねぎま、せせり、和牛ホルモン。
名物せせりは、ぐるぐると螺旋状に巻き付け焼かれた珍しい一品。

せせりを頬張りながら、お母さん(店主)に移転の経緯を聞いてみましたが、
やはり衛生面や諸々の事情で行政としては屋台営業を認めるのは難しいようです。

仕方なく40年営業されていた屋台をたたんで実家のあるこちらで再開することに。
なんと隣にある「光洋軒」は、店主のお姉さんのお店らしくチヂミのデリバリーも可能だそうです。

めちゃくちゃ美味しいです。
なんとも人の温かみがあり居心地が良く、屋台ではなくなりましたがその精神は変わらず営業を続けられております。

心もお腹も満たしつつ、二軒目へと向かうとしましょうか。

2.新たに誕生した屋台村、「崇仁新町」

今、京都駅エリアで話題のスポットがあります。
「たかばし」で有名な第一旭、新福菜館の向かい側に新たな屋台村が誕生したのです。
実はここ、芸大移転が決まっている場所なのですが、それまでの二年半、期間限定での営業となっています。

京都の人気店が集結し、昔ながらの屋台というより「ネオ屋台街」と言った雰囲気です。

天気の良い日や週末などは地元の方から観光客まで実に幅広い客層で賑わっております。
やはり外で飲むというのは、誰にとっても気持ち良いものなのでしょう。

そんな屋台村で絶対食べたいのが「おちょぼ焼き」です。
お好み焼きやたこ焼きの元祖とも言われ、この地域では昔からよく食べられていたソウルフード。お店だけじゃなく各家庭でもよく作られていたそうです。

専用のプレートにうどん粉を溶いた生地と、こんにゃく、スジ肉、たくあん等をのせて焼き上げていきます。トッピングもお餅、そぼろ、明太子チーズなど多彩に揃っています。

スプーンですくいながら食べるのですが、これがまた美味しい。
この辺りの人からすると懐かしいのに、初めて食べる人からしたら新鮮というのはなんとも不思議なものです。
屋台という懐かしいものを新しいものとして生み出し、懐かしい「ちょぼ焼き」を新しいものとして感じさせる。
時代の移り変わり、新旧が交わるネオ屋台村。
実に面白い。

3.木材屋が夜は外飲み酒場へ、「井倉木材」

場所は少し変わって、タクシーで10分ほどの距離にある府庁の北側へ。
昼は木材屋、夜は酒場という風変わりなお店で、電話番号も非公開、予約や問い合わせもできません。

井倉木材さんの面白いところは、お店の外の木材が保管されている倉庫に造られた立ち呑みスペース。

今の季節は夜風も気持ちよくて最高です。

住宅街なので、「粋な」大人にぴったり。
お一人様も多く、初対面同士でカウンターを囲んで談笑するというのもここでは日常の風景。

旬の魚などを屋外の焼き場で焼いてくれるのですが、これが臨場感があってまた良い感じなのです。
北海道産の秋刀魚は脂の乗りが良く、時折網ごと燃え上がらせております。

外で飲みながらいただく旬の素材。
今しかできない贅沢かも知れません。

他にも酒に合うアテが揃っています。
立ち飲み屋は京都にもたくさんありますが、外で立ち飲みというのはかなり珍しいかと思います。
ちなみに男性が用を足す際はトイレの位置の問題で、一番奥の立ち飲み席から背中が丸見えになります。
女性客がいたらお互い恥ずかしいながらも見て見ぬふりがここでは暗黙のルール。
最近は観光客の一人飲みも多いようで、地元民と観光客が行き交う酒場としても有名になってきています。
旬の肴とお酒で良い酔い加減。本日の飲み歩きはこのあたりで〆るとします。

最後に

昔ながらの屋台が無くなっても、それに代わる新しいスタイルの酒場がどんどん生まれてきているのは実に京都らしいと思います。
「旨い酒」と「肴」、「人の温もり」という酒場にとって最も大切な要素を守りつつ、これからも京都の街には新たな酒場が生まれ、いずれ老舗と呼ばれるようになっていくのでしょう。
まさに温故知新。
10年、20年先の京都の酒場がどうなっていくのか。
静かに見守りたい、そんな気持ちになった秋の夜でした。

一軒目 吉田山せせり
京都市南区東九条室町31

二軒目 崇仁新町
京都市下京区上之町19-6

三軒目 井倉木材
京都市上京区薮之内町77-1

細井 悠玄 氏

細井 悠玄 氏

ほそい ゆうと

ニュースサイト京都速報 編集長

龍谷大学法学部卒業後、本と京都が好きという理由で2002年地元の出版社に就職。グルメ情報を中心に扱う月刊誌の営業・制作を経て、2014年に京都初の男性版情報誌の編集長として創刊を担当。渋酒場、ネット未掲載の名店、一流シェフの最後の晩餐飯、など「使える街のネタ」を特集し地元京都の書店で3号連続ベストセラーを達成。その後、後任に編集長を譲り独立。「ニュースサイト京都速報」を立ち上げ取材の日々を過ごす。