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第5の味覚「うま味」:うま味はうまいのか -第2弾-
  • TRIVIA
  • 2018.11.30

第5の味覚「うま味」:うま味はうまいのか -第2弾-

うま味にはアミノ酸系と核酸系がある

世界の理解を得るために、池田菊苗博士以来うま味の研究は日本が先頭を切って進めてきた。うま味には次の2種類がある。
1、グルタミン酸とアスパラギン酸に代表されるアミノ酸のうま味グループ。
2、鰹節のイノシン酸、干し椎茸のグアニル酸などの核酸のうま味グループ
である。この2つのグループの物質は、構造がまったく違うが、同じうま味を感じさせる。
1のアミノ酸グループでは昆布が代表格で、昆布にはグルタミン酸とアスパラギン酸しか含まれないと言っても過言ではない。料亭の一番だしには、1ml中に500μgものグルタミン酸が含まれる。アスパラギン酸もほぼ同量存在する。ちなみに、ワイン1mlに含まれるグルタミン酸の濃度は、ブドウ品種によっても異なるが20から60μg程度であり、料亭の一番だしと比較すると10分の1程度である。

グルタミン酸ナトリウムの「ナトリウム」とは何か

味の素®などのグルタミン酸の粉はグルタミン酸1ナトリウムである。グルタミン酸などのアミノ酸を水に溶かすとpHが酸性になる。うま味はあるがそのままでは酸っぱいので使えない。
酸性の溶液を適度に中和するためにアルカリ性の水酸化ナトリウムが必要である。だからアルカリで中和されて中性になったグルタミン酸はグルタミン酸1ナトリウムと呼ばれる。1という数字はナトリウムが1個で中和されたことを示すが、化学的な説明は理系の大学生でも苦手なところなので省略する。

うま味の味わい

うま味とはどんな味かを簡単に知るために味の素®を舐めてみてほしい。変な味である。鈍くてやや生臭くって、それでいてどこか退廃的とも言えるやめられない味である。酢昆布などの干した昆布をかじるとやめられなくなるのと同じである。
これが料理のなかに適量入っていると格段においしくなる。だから池田博士は「うま味」と言いたかったのだろうが、実際は「料理をうまくする昆布などの味」という方がわかりやすい。「うま味」ではなくて「料理をうまくする味」なのである。
多くの人は、まだすっきりしないかもしれない。

「じゃあ、味の素を料理にドカドカ投入したらうまくなるのですかね?」
この疑問はもっともである。
料理に砂糖をドカドカほりこんだら甘くなる。
料理に塩をドカドカほりこんだら塩っぱくなる。
料理にうま味をドカドカほりこんだらうま味が強くなる。
いずれも正しい。しかし、いずれもおいしくはない。
味物質をたくさん添加すると味が強くなるだけである。おいしさを作るには適切な量が必要である。
うま味は単なる味で、うまさの感覚ではない。

出典:(一社)日本ソムリエ協会「Sommelier.jp」

伏木 亨

伏木 亨

ふしき とおる

龍谷大学農学部教授、農学博士、龍谷大学農学研究科長

専門は農芸化学・栄養化学。「味覚と嗜好のサイエンス [京大人気講義シリーズ] 」ほか著書多数。日本香辛料研究会会長、日本料理アカデミー理事。平成24年日本農芸化学会賞受賞。平成25年飯島食品科学賞受賞。平成26年紫綬褒章受賞。