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お斎(おとき)って、知っていますか?―和食文化としての「お斎(おとき)」の研究の開始―

末原 達郎

元龍谷大学農学部食料農業システム学科教授、農学博士

お斎(おとき)って、知っていますか?―和食文化としての「お斎(おとき)」の研究の開始―

末原 達郎

元龍谷大学農学部食料農業システム学科教授、農学博士

龍谷大学農学部では、本年度設立された「和食文化学会」に、積極的に参与していますが、このたび「和食文化としての『お斎』の研究」を、開始しました。

お斎(おとき)って、知っていますか?

お斎とは、仏教の法会の後に出される食事の事です。

龍谷大学の建学の精神である浄土真宗では、親鸞聖人の忌日命日に、「御正忌報恩講」という法会を催しています。その法会の後には、多くの場合「会食」が提供されます。それを「おとき」と、呼んでいます。

報恩講の参加者にインタヴューする橋本さん

農山村地域においては、もともと「おとき」は、地元の住民が、自分たちの育てた農作物を持ち寄り、自分たちの手で調理した料理を、「報恩講」に参加した人々に提供し、共食するという形を取っていました。都市部の寺院やその報恩講では、「お斎」そのものを料亭から取って行うという形式に、変わってきています。最近では、農村部の寺院や「報恩講」においても、同様な形態が増えてきています。
本願寺派寺院では、本願寺をはじめ、全国津々浦々の末寺で、「報恩講」が営まれており、その際には、多くの場合「お斎」が出されています。

農学部4回生の橋本翠さんと2回生の増田恭子さんと末原との3人で、奈良県吉野郡天川村の光遍寺において、「お斎」の制作過程を聞いたり、見せてもらったりする機会を得ました。
お斎の制作開始は、朝8時からです。光遍寺は吉野の山中にあり、一番早くいっても、時間が間に合わないくらいでした。各集落から年番さんと呼ばれる女性が一人ずつ集まってこられ、いよいよ調理の開始です。ニンジンや大根を煮たり、お米を炊いたり、準備が続きます。橋本さんは、門徒さんの一人に、「お斎」の歴史を伺いました。増田さんは、写真撮影に余念がありません。橋本さんは、この経験を卒論に活かしました。