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CULTURE 2020.03.09 Mog-lab取材スタッフ

日本料理における品位とは? 龍谷大学×日本料理アカデミー シンポジウム報告 vol.1

老舗料亭の料理人たちが中心となり、日本料理の文化継承と発展のために活動するNPO法人「日本料理アカデミー」。同アカデミーの活動の一つに、龍谷大学の研究者との協同研究があります。これまで約10年にわたり行われてきた研究活動では、「テロワール」、「食感」など1年ごとにテーマを掲げ、料理人と研究者がディスカッションや試作を繰り返すことで、日本料理の伝統の中で感覚的に受け継がれてきたものを科学的な視点で分析し、理解を深めてきました。今年度のテーマは「日本料理と品位」。その成果発表として、20202月に京都市で開かれた6回目となるシンポジウムの様子を、2回に分けてお伝えします。

今年のテーマは「日本料理と品位」

今年度のテーマは、日本料理における「品位」とは何か。龍谷大学の伏木亨教授は、日本料理が世界に広がっている現状に触れながら、「私たちがこれからも守っていかなければならない日本料理の真髄と、変えていかなければならない部分、この2つをきちっと分けて考えていく必要がある。品位とは恐らく、私たちが忘れてはならない基本とすべき部分ではないか」と説明。「『品位』とは何かを掴むべく、この1年でかなり実験的な試みも行ってきた」という伏木教授の言葉に、これから行われるプレゼンテーションへの期待が高まります。

研究者VS.料理人

「研究者VS.料理人」と題したディスカッションでは、研究者として、味の素株式会社 食品研究所の川崎寛也氏と、龍谷大学の山崎英恵准教授が登壇。対して、品位のある料理をプレゼンテーションするのは、京料理 直心房さいきの才木充氏と、大和学園の宗川祐志氏です。
龍谷大学では、定期的に研究者と料理人が集まって議論するラボを開催。いつもエキサイティングなやりとりが展開されています。今回のディスカッションは、このラボの雰囲気をそのまま会場にもお伝えしたいと、事前の打ち合わせなしで、料理人のプレゼンテーションにガチンコで質問を投げかけるスタイルで実施。料理人が回答に詰まる部分も含めて、ライブ感のあるディスカッションが繰り広げられました。

美味しすぎないポテトサラダ?

まず、才木氏がプレゼンテーションしたのはポテトサラダ。
自らが考える品位の要素として「おいしすぎない余韻」と「食感の均一性」を挙げ、それらの要素を取り入れた試作を披露。「おいしすぎない余韻」のために、マヨネーズや卵、ベーコンといった動物性の油脂や強いうま味を避けじゃがいもの風味を活かす味付けに。酸味により後味を消す狙いで酢炊きした干瓢を具材として加えたそうです。そして、さいの目に切ったじゃがいもと、裏ごしして滑らかに仕上げたマッシュポテトを均一に口に運べるよう盛り付けて「食感の均一性」を表現。
川崎氏は「じゃがいもの特徴である風味や食感を活かすような『素材の尊重』が日本料理における品位なのではないか、また、邪魔なものを取り除き必要なものを残した機能美も『品がある』と感じる要素ではないか」と見解を述べました。

B級グルメに品位を

宗川氏は、品位について考える上でその対極にあるものとして「B級グルメ」を挙げ、自身が生まれ育った大阪のB級グルメ「お好み焼き」を題材に。

まず料理の品位を構成する要素として「味・香り・食感・色彩・形」があるとして、お好み焼きをその5つの要素において再構築することで、品位とは何かが見えてくるのではないかと考えたそうです。キャベツ、海老、ソースといった、お好み焼きを象徴する素材を煮凝りに仕立て、初回の試作で出た「お好み焼き過ぎる」という指摘から、キャベツの硫黄化合物による香りを抑える、ソースを植物性素材のみのものに変えるなどの改良を加えた過程までを解説しました。

山崎准教授は、才木氏が「ポテトサラダ」でじゃがいもの特徴を活かそうとしたのに対し、「お好み焼き」ではキャベツの特徴である香りを抑えるという、素材や料理によって「品を出す」ための方法が異なるのは面白いと注目。また、おいしすぎない、量が多すぎないといった「物足りなさ」が、日本料理において「品がある」という感覚に繋がっていることに気付きがあったとしました。それが何故か?という問いに対して、空腹が満たされる「満腹」と、心が満たされる「満足」は生理学的にも異なるとされていることに触れ、「心が満足するような料理が品を感じさせるのかもしれない」と考察。
宗川氏は、「足りない部分を食べる人のイマジネーションで感じてもらうことが日本料理を味わう上で、大事なのではないか」と結びました。

第1回のレポートはここまで。第2回では「品位とは」という問いに対して、8名の料理人の考察した料理をご紹介します。