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TRIVIA 2019.12.13 細井 悠玄

京都、冬、おでん

小さい頃、おでんが食卓に並ぶとがっかりしたものですが、野菜の美味しさやおでんそのものの奥深さ、そして何よりお酒との相性を知らなかったのがその原因だったと気付いたのはずいぶん大人になってからのことです。

いつからおでんが好きになったのか、はっきりと覚えてはいませんが、今となっては酒場の暖簾をくぐり抜けてカウンター越しにおでん鍋を見つけるとテンションが上がる自分がいます。

ぐつぐつと煮込まれた熱々のおでんに熱燗。やはり冬の酒場にはおでんが欠かせませんね。

ということで今回は「おでん」をテーマに酒場巡りをしたいと思います。京都はおでん専門店がそれほど多いわけではありませんが、古くから親しまれている名店、新たに誕生した実力店などが点在しています。京都おでんの新旧をほろ酔いで巡ります。

1. 創業90年、北大路の老舗「つじい」

地下鉄北大路駅から歩いて5分ほど、新町通沿いにある「つじい」。
創業昭和4年(1929年)の老舗おでん専門店です。

「おでん」を提供している居酒屋は多いですが、ここまで潔く「おでん」と店名に入っているお店は京都でもそう多くはありません。

店舗奥のL字カウンターに腰かけて、目の前のおでん鍋を覗き込む。
味のあるおでん鍋にたまご、大根、すじ肉、とうふなど見慣れた逸品が所狭しと入っており、ぐつぐつと煮込まれています。
はやる気持ちを抑えつつ、まずはビールを。
おでんの醍醐味の一つは、メニューではなく目の前で具を見て選べることですね。

お揚げ、玉子、じゃが芋、ロールキャベツの盛り合わせ。
いずれもかなり大ぶりで、お出汁がよく染みています。

こちらはゆば玉(450円)。オーダーが通ってから出汁に浸した湯葉に玉子を合わせた逸品。
玉子のとろみと湯葉の食感がたまりません。

おでん鍋から取り出した後タレをかけて完成するシューマイ(440円)もかなり大きく絶品です。

逸品も美味しいのでゆっくりしたいところですが、次のおでんを目指して街中に戻るとします。

2. 11月にオープンしたばかりの注目店「KELP」

地下鉄で四条駅まで戻って最近オープンしたばかりのおでん酒場へ。
四条御幸町にある「御幸町ONO」というおでんが人気の酒場の姉妹店で、京都おでんの盛り上がりの一翼を担っている注目店です。

烏丸仏光寺を東へ入ってすぐの路地奥にあります。

テーブル席、スタンディング席とありますが、おすすめはカウンター席。

新しいおでん鍋。これから徐々に味が出てくると思うと、それも楽しみです。

だいこん、だし巻き、たまご。
だし巻きをだしで煮込むというのも面白いですね。
たまごは白身が固まっているのに黄味がとろりとしている和食の料亭などでも出てくるタイプのもの。
他にも海老だんご、しょうが天、ねぎチーズ巾着など自家製おでんが揃っています。

おでん出汁中華そば。
おでんのお出汁が持つ優しい味わいと麺のツルッとした食感ががよく合っていて、口当たりも良いです。シメにぴったり。

炭火を使った一品もあるので、ゆっくり色々と味わえる良いお店です。

スタッフさんとの会話も弾み長居したくなりますが、せっかくなのでもう一軒、おすすめのおでん屋さんへ向かいます。

3. 四条大宮でおでんといえば「おでんと釜飯ムロ」

もともと飲み屋街だった四条大宮ですが、ここ数年新しいお店が次々オープンして、さらなる盛り上がりをみせています。
そんな中、2年前にオープンし瞬く間に人気店となったのがこちらの「おでんと釜飯ムロ」。
四条大宮どころか京都にあるおでん専門店で一番流行っていると言っても過言ではありません。

四条大宮から後院通りを上がると東側にひっそりと佇んでいます。

おでんの赤ちょうちんが目印です。

カウンター中央のおでん鍋は彩り豊かで、他の2店とはまた違う見た目です。
それにしてもさすが人気店、常に満席なのはもちろんですが、電話が鳴りやみません。
四条大宮はハシゴ酒をする方も多いので「今から席空いてるか」などの確認電話が多いのでしょう。飛び込みでも次々に人が入ってきては満席のため帰っていきます。

この人気の理由はなんと言ってもおでんの美味しさと個性。大根、玉子など基本的なメニューは押さえつつ、独創的なおでんも豊富なのです。それでは「ムロ」らしいおでんをご紹介します。

和牛すじ(500円)。たっぷりの和牛のすじがじっくり煮込まれていて、口に運べばホロホロとほどけていきます。お出汁との相性も抜群。

紅白のビジュアルが美しい完熟トマト(500円)。
クリーミーなスープにトマトの酸味が加わり深みのある味わいに。

鶏つくね(250円)はマストオーダーの1品。こちらの姉妹店、人気焼鳥店「ちゃぶや」の特製つくねで、出汁がよく浸みつつ鶏の旨みをしっかり残しています。

中にはうずらの玉子入り。

一瞬茄子にも見えますが、こちらはカマンベールチーズ(480円)。
チーズの酸味とお出汁が意外に良く合います。

独創的で美味しいおでんの数々はさすがの一言。さらにリーズナブルで居心地も良いとなれば言うことなしです。シメに釜飯がおすすめですが、本日は三軒目ということでお腹もきつくなってきましたので、また次回に。

最後に

おでんの楽しみ方は人それぞれですが、個人的におでん専門店は少人数で利用するのが好きです。その理由は「熱々のうちに」おでんを食べたいからです。宴会で話に夢中になって気づいたら冷めてしまったりするのが嫌なのですね。
熱々のおでんが目の前に届くたびに、はふはふ言いながら口に運んで、熱燗を飲む。やはりこれがおでんの醍醐味だと思うわけです。

そしてそんな素敵なおでんを提供する穴場のおでん専門店が京都にはまだいくつかあります。常連さんを大切にされていて取材拒否のお店が多くご紹介できないのが残念ですが、京都のおでんはやはり奥が深いなと再認識しました。

一軒目 つじい
京都市北区小山下初音町34-1
二軒目 KELP
京都市下京区上柳町315
三軒目 おでんと釜飯 ムロ
住所/京都市中京区壬生坊城町3-3

※価格等の情報は取材当時のものです。

細井 悠玄

ほそい ゆうと

ニュースサイト京都速報編集長

龍谷大学法学部卒業後、本と京都が好きという理由で2002年地元の出版社に就職。グルメ情報を中心に扱う月刊誌の営業・制作を経て、2014年に京都初の男性版情報誌の編集長として創刊を担当。渋酒場、ネット未掲載の名店、一流シェフの最後の晩餐飯、など「使える街のネタ」を特集し地元京都の書店で3号連続ベストセラーを達成。その後、後任に編集長を譲り独立。「ニュースサイト京都速報」を立ち上げ取材の日々を過ごす。