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BUSINESS 2021.02.12 滝澤 理仁

種がなくても実がなる野菜の話

温州みかん、バナナ、デラウェア(ブドウ)、平種核(柿)、これらの果物に共通することがあるのですが、みなさん分かりますか?

そうです。これらの果物には全て種が入っていません。

このように、種がなく食べやすい果物は一般的によく見かけますが、実は最近種なしの野菜が、より正確に言うと「種なしの果実をつくる野菜の性質」が注目を集めています。

種なし果実と「単為結果」

果実が種なしになるためには、受精せずに果実が肥大する必要があり、この現象を「単為結果(たんいけっか)」と呼びます。
種なし果実を作るには人為的に「単為結果」を誘導するか、植物自身が自然に「単為結果」を起こす性質を持つ必要があります。
前者の例として有名なのがデラウェアです。デラウェアではジベレリンという植物ホルモンを花に処理することで種なし果実が生産されます。
一方で、後者は「単為結果性」とも呼ばれ、バナナはこの性質により種なし果実を自然に形成します。

野菜における「単為結果性」の利点

さて、この「単為結果性」という特性が最近、野菜で注目されています。
ただし、種なし果実を作るためではありません。

「単為結果性」は種なし果実を作るのに利用できるだけでなく、受粉・受精が阻害され、普通の品種が果実を生産できないような環境条件下でも安定した果実生産を可能にするのです。

例えば、最近、地球温暖化の影響で天候が不順となり、極端に暑くなったり寒くなったりします。通常の品種ではこのような条件だと受精が阻害され、上手く果実をつけられなくなりますが、「単為結果性品種」であれば安定して果実を生産できます。
また、トマトやナスなどの果菜類を温室で栽培する場合、着果と果実肥大を誘導するために人工受粉や植物ホルモン処理が必要となりますが、「単為結果性品種」であればこれらの処理を省略でき、より手間をかけずに果実を生産できます。

「単為結果性品種」の探索と利用

野菜では昔からキュウリで「単為結果性品種」が利用されてきましたが、最近では、トマトやナスでも「単為結果性品種」が開発され、販売されるようになりました。
さらに、他の果菜類でも「単為結果性」を有する遺伝資源の探索が行われ、メロンやカボチャで「単為結果性」を示す系統が見つかっています。
今、取り組まれている研究の中には、「カボチャの種はいらないよね」という発想から始まったものもあります。みなさんもそう思ったことはありませんか。

今後、日本では地球温暖化の進行や農業従事者の高齢化が大きな問題になることが予想されます。そのような状況で、過酷な環境下でも省力的かつ安定して果実を生産できる「単為結果性品種」の開発はますます重要になると考えられます。

滝澤 理仁

たきさわ りひと

龍谷大学農学部資源生物科学科講師

大阪府高槻市出身。大阪府立茨木高校卒業。2011年まで京都大学大学院農学研究
科で野菜園芸学を学んだ後、京都大学(助教)を経て、現職。