「”食育”に大切な食材選びや調理のアドバイスを知りたい!」
前編では、園児の給食をつくりながら食の大切さを伝えている管理栄養士さんに、簡単にはじめられる食育のコツやアドバイスを尋ねて紹介しました。この後編では、小さいお子さんがいらっしゃるお母さんやお父さんが知りたがっていた「食材選びや調理のアドバイス」などを聞いてみました。
(前編)子どもたちが「やってみたい」「食べてみたい」というきっかけづくりから食への興味を持たせるコツを紹介している前編はこちら
Q.食材選びについてのアドバイスをお願いします。
食材は、できるだけ旬のものを選ぶのがポイントです。たとえば、スーパーで入口に置いてある野菜などを手に取ってみてはいかがでしょうか。
農家では、収穫した野菜をそのまま蒸して食べたりしますよね。そのように、旬の食材は自然のうま味が凝縮され、みずみずしく、ほかの時期にとれたものより栄養価が高くなっています。ですので、それほど調理に凝らなくても美味しくいただくことができるのです。
もし、旬の食材や調理法がよくわからなければ、給食のある保育園や幼稚園、小学校などのメニューを参考にしてもよいと思います。もしくは、給食の先生などに尋ねてみるのもいいかもしれません。学校や園によってはなかなか話しかけにくいこともあるかもしれませんが、聞かれて嫌がる先生はまずいないと思います(笑)。
そんな風に、旬の食材とレシピを覚えれば毎年作りやすくなりますし、お子さんが好きなお母さん・お父さんの定番料理が生まれるかもしれませんね。
Q.なかなか買い物に行きにくいときもあるのですが…
外食では加工品を食べることも多いでしょうし、家庭ではできるだけ加工品を使いたくないものです。
とはいえ、食材を買いにいく時間がない場合は、切り干し大根や干し椎茸、高野豆腐などの乾物を常備しておいて使うのはどうでしょう。栄養価やうま味が凝縮されており、保存も効くのでおすすめです。のちほど紹介する「みそ玉」でも、乾物は活躍します!
また、お出汁は一晩冷蔵庫で寝かせるだけの方法も。いわゆる「水出汁」というもので、水道水を使って大丈夫です。昆布やかつお節、あるいは煮干しなどを水に浸けて冷蔵庫に入れておくだけで完成。保存の目安は3日から1週間というところでしょうか。
また、冷凍の製氷皿に入れるともっと長持ちしますし、使いたいときに好きな量を使えるという利点も。保育園の保護者の皆さんもされているみたいですよ。
Q.子どもと一緒にちょこっと調理する方法はありますか?
特に2・3歳ぐらいの子どもは「自分でやりたい」という想いが芽生え、その経験で新しいことを発見したり、自信などにつながります。ですので、いんげんやほうれん草などのゴマ和えをしてみたり、かつお節をお豆腐やサラダにかけてみるのもよいでしょう。
100円ショップなどでも売っている小さなすり鉢・すりこぎを手に入れれば、お子さんと一緒にゴマすりをすることもできますよ。
自分でやってみる、それを食べるということは、大人にとっては当たり前のことかもしれませんが、子どもにとっては特別な経験になり得ます。お母さんやお父さんがちょっと意識するだけで、新しい経験をさせてあげることができるのです。
また、子どもたちは“ごっこ(まねっこ)”遊びが大好きです。親やまわりの人がしていたことや、一緒にやったことを覚えていて、その「ふり」や「まね」をして遊びます。それにより、想像力や発想力が育まれていきます。ですので、食育にとどまらず、生活のなかでお母さんやお父さんのさまざまな姿を見せたり、一緒に何かをすることは子どもの成長にとって大切なことなのです。
Q.なにかと忙しい私たちに、レシピをひとつ教えてください!
「みそ玉」は、ラップでくるんで冷蔵庫に保存して、朝などにお湯をかければお味噌汁ができる作り置きアイデアで、保育園の保護者の皆さんにも人気のレシピです。
材料は、「みそ」が小さじ1強ぐらいと、出汁が出る「かつお節」や「干しエビ」などを中心に、「わかめ」などの具材を適量ラップにくるむとできあがりです。「かつお節」のかわりに「粉末のかつお」でもいいですし、具材として「麩」や「高野豆腐」などもいいですね。具材はお子さんと選んでみてはいかがでしょうか?なお、水分の少ない具材がおすすめです。
忙しい朝は、炊飯器で予約しておいたご飯と、この「みそ玉」にお湯をかけたお味噌汁、納豆、卵などで十分!少しでもラクができる方法を使い、お子さんとのご飯のひとときを楽しんでいただけたらと思います。
「食育ってなにかわからない」「なにをすればいいの?」と思っていたお母さんやお父さんも、保育園で働く管理栄養士の伊藤先生のアドバイスで、今すぐやってみたい食育のアイデアが見つかったのではないでしょうか。
先生は、「食べること=生きること」だとおっしゃっていました。食べることは私たちが生きていくうえでとても大切な、そしてシンプルなことであり、頭で難しく考えることではありません。これからは、食育をあまり難しくとらえずに、子どもと一緒に楽しみながら調理したり、食べたり、話したりしてみてはいかがでしょうか。
先生に教えていただいた工夫や、“子どもと一緒にやってみよう”というちょっとした意識があれば、無理なく食育はできるのだと感じました。
これを読んでくださった皆さんが、親子で食にまつわるあれこれについて楽しく経験できたり、食べることがもっともっと好きになりますように。
取材協力:社会福祉法人 あおば福祉会「おひさま岡町保育園」(大阪府豊中市)
http://www.ohisamaokamachi.jp/
撮影:井原 完祐