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CULTURE 2019.07.31 佐藤 和弘

ドイツのソーセージとビールのお話 ー第1弾ー

ソーセージとビールの国ドイツ

「ドイツといえばビールとソーセージ」と言われているように、ドイツのソーセージの種類は数限りなく多い。スーパーの食肉売り場に行くと、目に飛び込んでくるその種類の多さに思わずうれしくなってしまう。どれから試してみようかといつも悩んでしまうが、これもドイツに行った時の楽しみの一つだ。聞くところによるとソーセージの種類はなんと1000以上あるという。毎日三食一種類ずつ食べても1年近くかかる計算だ。ビールはといえば、ドイツには現在およそ1300のビール醸造所があり、8000種類を超える銘柄のビールが醸造されているそうだ。毎日一種類のビールを飲むとすると、全種類踏破までなんと22年近くかかる。まさにうわさどおりの国である。

ソーセージには苦い思い出がある。30年以上も前に私が初めてドイツのミュンヘンで語学研修を受けていたときのことである。日本人仲間の一人に日本から上司夫妻が尋ねてくるというので、おもてなしということもありミュンヘンの由緒あるレストランで食事をすることになった。上司夫人が「ソーセージ」を食べたいというので、ソーセージはドイツ語でWurstだから、とメニューを見ているとWurstplatte(ソーセージプレート)なるものがあったので、それを注文した。すると出てきたものはいろんな種類のハムやソーセージが盛り付けられた大皿だった。そのボリュームにびっくりしてしまった。

ハムと目玉焼きプレート

だが、それを見た遠来の客の不満そうな顔が今でも私には忘れられない。

上司夫人が食べたかったのは、そう、あの熱々の焼きソーセージだったのだ。もちろんそのようなものは品格あるレストランには出てこない。焼きソーセージは一般的には屋台での売り物である。Wurstとはソーセージ全般をさすことばであるが、ドイツ人にとって普通Wurstとは薄くスライスされたソーセージのことで、我々日本人がイメージしている熱々に温まったソーセージまたは焼きソーセージの類はWürstchen(ヴュルストヒェン)、南ドイツではWürstlというらしい。このような違いは、しばらくドイツに住んでいなければわからないものであり、当時のことを思い出す度に今でも申し訳ない気持ちになる。

佐藤 和弘

さとう かずひろ

龍谷大学法学部教授

専門領域は応用言語学で、存在する言語とその環境との間の「相互作用」を研究するエコ言語学、言語(教育)政策、言語教授法学(ドイツ語) 論文として「多言語・多文化共生社会と言語政策 -ドイツの少数言語ソルブ語の復興・維持と言語教育」(『ドイツ語教育9』日本独文学会ドイツ語教育部会 2004年)、「ドイツ語教育と環境意識の構築」(『Brücke 21号』 2018年 京都外国語大学)など。