朝や昼を抜いて夜にドカンと食べると太るという。せっかくおなかを減らしてがまんしたのに、効果がないのはくやしい。そんな実感は確かにある。体脂肪の蓄積量は食べたカロリーと消費したカロリーの差であることはこれまで何度も強調してきた。食事を抜いてなぜ太るのだろうか。
空腹のあまり夜の食事が多くなりすぎることが考えられる。しかも朝食・昼食抜きは、正式な食事をしていないだけで、お菓子のようなものをちびちびとつまんでいることが多い。これは無視できないカロリーである。1食抜いているからだいじょうぶという安心感も災いする。食事を抜いた次の日に食べ過ぎてしまうことも多い。食欲は執念深くあなたの心のすき間をねらっている。
絶食がすぎると無理が来る。おなかがすいてきびきび動く気がしなくなってエネルギー消費が減る。疲れやすくてついつい座ってしまう。座席に着くと眠ってしまう。人間の体は生きるために必死である。エネルギー摂取が少ない日には、無意識に運動を減らすように仕向けている。このようにしてバランスをとっているので、朝食や昼食抜きは本人が苦しいわりには効果がない。結局、食事は一日3回で少しずつ節制するのが無難だ。
この問題は専門家でも議論の多いところである。酒を飲むと発熱するから実質的なカロリーは非常に低いという説と、私はアルコールで太ったという実体験とが入り乱れている。ドイツ人のビール腹を見るとビールは非常に太りやすいのではないかとさえ思ってしまう。
酒のアルコールのカロリーは化学的には1gあたり7.1kcalである。1gあたりの数値的としては脂肪と糖の中間ぐらい。しかしアルコールと同じカロリーのチョコレートを食事と同時に与えて比較した実験では、アルコールは同じカロリーのチョコレートほどは太らないようである。さらに、一定の食事とともにアルコールを与えた実験では、与えたアルコールの計算上のカロリーよりも体重増加は明らかに低い。だから、アルコールの実質のカロリーは理論上の数字7.1kcal(1gあたり)よりも低いことはまちがいない。しかしけっしてゼロではない。
出典:女子栄養大学出版部「栄養と料理」