アルコールの代謝は複雑で、エネルギーを生む経路と生まない経路の両方がある。摂取量が多いときにはアルデヒドから酢酸になりエネルギーを生む一方で、代謝物の一部がアセトインという化合物になればエネルギーの産生は起こらない。
アルコールを飲むと血流が増して顔も赤くなり熱くなる。大量のエネルギーを使っているように思われるが、運動などと比較すると見かけほどはエネルギーを消費していない。アルコールの実際のカロリーは正確な数字はないが、専門家の間では1gあたり5kcal程度はあるという意見が多い。結論は出しにくいが、どちらかに賭けるならば、私は「アルコールは太る」に賭ける。
酒のつまみはカロリーオーバーの原因になる。ロング缶ビール1本をピーナッツか枝豆をつまみにキューッと飲み干すのは暑い夕方の楽しみだ。至福の時間であるがカロリーはご飯2杯分に達するだろう。その後普通に食事をしたらもちろんカロリーオーバーである。しかもアルコールは糖にならないから、ごはんの代わりにはなりにくい。あとでごはんやラーメンが食べたくなる。やはり酒はダイエットの強敵である。
アルコールの摂取は血液中の糖分を脂肪に変換する方向に向かわせる。糖新生(※)にもストップをかける。つまり血液中の糖分が減少に向かう。アルコールで体が熱いので、糖分が充分足りていると脳が錯覚するのだ。繰り返しになるがアルコールは決して糖には変わらない。(※糖質が不足すると、体を構成する体たんぱく質や体脂肪が分解され、アミノ酸など糖以外の栄養素からブドウ糖が合成される。体内に備わっているこのしくみを糖新生という。)
しかも、酒のつまみにはたんぱく質や脂質が多くて糖質が少ない。飲み屋を出るころは血糖値が下がり始める寸前だ。そこで脳も糖が足りないことを知ってあわてだす。そして急に糖分がほしくなる。
ラーメン、お茶漬け、うどん、アイスクリーム、デザートのスイーツ。いずれも酒のあとで食べたい糖分が多い食べ物である。アルコールでしびれた脳はカロリー計算などしない。気分も大胆になっている。野獣のように貪欲に糖に向かう。
錯覚なのだから食べないのが一番。がまんできなければ、おかゆぐらいが無難だ。ラーメンの大盛りなんかを食べたら3日は響く。アルコールのカロリーよりも酔いで大胆になったあなたの食欲のほうがが要注意だ。
参考文献
お酒の健康科学、アルコールと健康研究会編、金芳堂、1996年
出典:女子栄養大学出版部「栄養と料理」