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Vol.2「村田斉潔氏に聞くスポーツめし”」”

村田 斉潔

龍谷大学アメリカンフットボール部ヘッドコーチ

Vol.2「村田斉潔氏に聞くスポーツめし”」”

村田 斉潔

龍谷大学アメリカンフットボール部ヘッドコーチ

日本一のアメリカンフットボール解説者のひとり、村田斉潔・龍谷大学アメリカンフットボール部シーホースヘッドコーチ。

第1回目では、知られざる氏の人となりについてお話しいただくことができた。

現役引退から時を経た今もコンディショニングに努め、食事は朝昼晩、野菜・魚・肉とバランス良く食べ分けているという。

堂々とした体躯の大男が全力でぶつかり合う究極のスポーツ・アメリカンフットボールに見せられた村田氏が語る、アスリートの「食」とは???

村田ヘッドコーチの現役時代の体づくり

モグラボ編集部(以下、編集部):現役時代の体づくりってどういうものだったのですか?

村田ヘッドコーチ:体が資本なので、基本はご飯をたくさん食べました。ぼくらの時代は栄養士が付いて体づくりの指導をしてくれたりしませんでしたので、今の方がはるかに科学的に食事もトレーニングも考えられていますね。例えば、運動した後に、体づくりのゴールデンタイムという時間があり、その時にタンパク質と炭水化物を摂取すると、体力回復や筋力強化に効果的であるとか。

編集部:今は、ゴールデンタイムを意識して指導されているのですか?

村田ヘッドコーチ:そうですね。練習が終わったら、ミーティングとかシャワーを浴びる前にすぐに栄養補給です。プロテインや炭水化物を摂取してもらいます。栄養の面も技術の面も、昔とは全然違います。走るトレーニングでも、ものすごく細分化され、理に適っていて、効果を実感できるようなことをしてもらっています。それは食事に関してもそうです。

「君らもアスリートなんだ!」と伝える選手への食事指導

編集部:選手への食事指導は?

村田ヘッドコーチ:大学のストレングスコーチやご協力頂いているサプリメントの企業の方には、トータルカロリーや食事のバランス、摂るタイミングなどを指導してもらっています。体は資本。体は入れたものでしかできません。入れたものが悪ければ、いい体にはならない。

編集部:具体的には、どのようなことですか?

村田ヘッドコーチ:企業さんに協力していただき、サプリメントも有効に活用しています。自宅生の場合は、親御さんに「しっかりとした食事を摂らせてください」ってお願いしたりしています。試合前には、炭水化物、水分をしっかり摂って、あとは睡眠。もちろん、体に悪いものを摂るなよって。学生だけど、自分はアスリートだって意識を植え付けたいと思っています。同じ世代の人たちがオリンピック出ているわけですから。「君らもアスリートなんだ」って常に伝えながら、食事に関しても意識付けをしています。

食事面でのアスリートの大変さ

編集部:食事の考え方や方法はNFL(米国プロフットボールリーグ)も一緒なんでしょうか?

村田ヘッドコーチ:一緒の部分もありますが、違う部分も多いですね。何よりも徹底度が違います。大きなビジネスですからね。当然、チームにはストレングスコーチやアスレチックトレーナー、栄養士がいて指導してくれたりするのですが、食事のバランスや摂取のタイミング、水分補給についてまで徹底して指示を受けるようです。また、ポジションによってはチームの食事だけではなく、外に行ってそれ以上にたくさん食べたりもします。体を維持するためだけにとにかく食べまくらなきゃならなかったりして。

編集部:すごいですね。

村田ヘッドコーチ:NFLのオフェンスライン(※)なら、ミールのコンボを1日に6回7回食べるっていう人もいる。

※オフェンスライン:攻撃ポジションの一つ。攻撃チームの最前線に位置し、ボールを保持する味方プレイヤーを、相手守備チームのラッシュから防御する盾の役割を担う。

編集部:かなりの量ですね!

村田ヘッドコーチ:食べ物見るだけでも苦痛っていう話も聞いたことがあります。

編集部:でも食べなかったら、練習もあるし、試合もあるし、痩せていきますよね?

村田ヘッドコーチ:そうです。だから、意地でも維持するために食べなければならない。フットボールの場合は、そういう部分もあるんですよね。もちろん競技によっては、減量のために、食べられない場合もあるわけじゃないですか?食事は、スポーツにとって難解なテーマですね。

編集部:競技ごとに考え方が違うのですね。

村田ヘッドコーチ:食べられない苦痛、食べなきゃいけない苦痛。
中には、食べても食べても太らない人もいるわけで。トレーニングしても、いくら食べても、全然肉が付いていかない選手もいる。それも苦しいですよね。しかも、しょっちゅう僕らから「体重何キロになった?」って聞かれるし。ある種、戦々恐々としている部分はあると思います。

編集部:年々、選手の平均体重は増えてきているんですか?

村田ヘッドコーチ:そうですね。増えてきています。アメリカのオフェンスラインなら、昔は130キロぐらいのポジションの選手が、今150キロぐらいになってたりとか。

編集部:それは、食事が科学的になってきたことも要因ですか?

村田ヘッドコーチ:それもあります。あと、ポジションの要請というか、ポジションごとに求められるものが年々変化してきていて、それに合わせている部分も大きいです。大きくてかつ動ける選手は当然重宝されます。それを目指す学生の大学での体づくりも変わってきていますね。

アメリカ修業時に感じた食事のこと

編集部:コーチとして、アメリカのサウスダコタ大学に行かれていたとのことですが、アメリカの大学の選手って体格が違うじゃないですか。やっぱり、食べているものが違うのですか?

村田ヘッドコーチ: 基本的には、食べているものも違いますが、やっぱり骨格ですよね。人種が違う。筋肉質ですし、肉の付き方が日本人とは全然違います。なんなら、歩き方も違います。よく言われるのは、日本人は腰痛持ちが多いですが、アメリカ人は腰痛持ちがあまりいないそうです。選手が、腰痛で試合をアウトするのはほとんどないですよ。腰痛が起こりにくい体形をしているみたいです。

編集部:アメリカの大学生って不摂生なイメージがありますが、そんなことないですか?日本人の方が、食べ物に気を使いそうなイメージがあります。

村田ヘッドコーチ:国民性もあるし、パーティー好きですからね。基本的には、摂取しなければならないカロリーの総数があります。僕くらいの体格と運動量で、5000 キロカロリーは摂らないといけません。日本は、食べ物がちょっと高いので、なかなか肉などのタンパク質系で5000キロカロリーをバランスよく摂るって難しいですが、アメリカは肉が主食ですから。

編集部:そうですね。

村田ヘッドコーチ:アメリカにいた時の話ですが、飽きるまで肉を食ってやろうと地元のスーパーで大量に肉を買い込んで、毎晩でっかいステーキを食うわけです。でも、夜中になると、お腹が減るんです。それも異常に減る。結局、スニッカーズとかのお菓子類やドーナツを大量に買い込んで、夜中に食べる。
お客さんがフットボールのオフィスにくるときって、大概どでかいドーナツの箱を差し入れで持って来るんですが、そこで食べるドーナツがくそ甘いけど、おいしくて。なぜかって考えたら、僕ら日本人はお米で糖質を摂っているんですが、アメリカは圧倒的に糖質が少ない食事。だからあんなにドーナツも甘い。あれじゃなかったら、満足できないんですよね。

編集部:ああ、そうか。

村田ヘッドコーチ:それがよくわかりました。だからアメリカ人は味覚がバカなんじゃなくて、摂らないといけないから、あれだけ糖質を摂っているのだと。今までの考えが大変浅はかで、申し訳ないなと思いました。それからアメリカのドーナツをおいしいと思えるようになりました。

村田ヘッドコーチの食事事情

編集部:今は、どのような食生活を送っているんですか?

村田ヘッドコーチ:朝はパン、昼は魚、夜は肉。かなりバランスよく食べています。昼は、龍大近くの定食屋に行きますね。すごくおいしいお魚料理出してくれるのですが、全部定食800円! で、夜は家に帰って食べることがほとんどです。

編集部:すごく健康的ですね。

村田ヘッドコーチ:お酒はほとんど飲まないです。大好きですけど(笑)。晩酌はしない。お酒を飲むと、トレーニングの効果は半減します。トレーニングは、体を壊して回復させるっていうこと。お酒飲むと、回復させる力が、お酒から回復する方に使われちゃうんですよね。僕自身今でもトレーニングを続けていますから、トレーニング効果を下げたくないと考えてしまうんです。

編集部:なるほどー。

村田ヘッドコーチ:トレーニング期には、できる限り全メニュー、選手と一緒に走って、ウェイトトレーニングもして。僕が普段からトレーニングしているのは、可能な限り体力を維持したいと思っているのと同時に、痛みやしんどいことに対して弱くなりたくないからです。年をとるということは、そういった苦痛に耐えられなくなるということです。
ですから、毎年順番にどこか一箇所は必ず壊れるのですが、動ける限り絶対に止めない。ウエイトをすると、膝が痛い年があれば、肩が痛い年もある。50歳超えていますから、毎年どこかしら壊れていく。でも痛いからトレーニングしないというのは嫌なので。痛いけどやるって自分に課しています。

編集部:ストイックですね。村田ヘッドコーチ、ありがとうございました。ますますのご活躍を期待しております。