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野菜ソムリエと行く農家巡り~okulu編~

頭川 展子

美容研究家、野菜ソムリエ

野菜ソムリエと行く農家巡り~okulu編~

頭川 展子

美容研究家、野菜ソムリエ

野菜ソムリエの資格を持ち、京都おもてなし観光大使としても活躍する頭川展子さんと共に農家さんを訪問し、京野菜の魅力に迫る本企画。

今回向かったのは、京都市右京区京北にある農家「okulu」さん。年間約100種類の野菜を育てながら、様々な取り組みをされている注目の農家さんです。

商品開発や食の空間づくりにも挑戦

左:頭川さん 右:吉田さん

頭川さん「初めまして。のどかで素敵なところですね」
吉田さん「初めまして。私もこちらに来て5年になるのですが、空気も水も綺麗でいいところです。」
頭川さん「地元の方ではないのですか?」
吉田さん「出身は熊本県です。こちらで農業を立ち上げるために5年前にやってきまして、今ではすっかり馴染んでいます」
頭川さん「どういうきっかけだったのですか?」
吉田さん「こちらには縁があって知人に呼ばれてきたのですが、もともとは食べることが好きで、日常的においしいものを食べるにはどうすればいいかと考えた結果、農業を始めました。始めてみると、最高の状態にある野菜を採りたてで食べるということは、すごく恵まれているなと。」
頭川さん「本当にそう思います。うらやましいです。そんな美味しい野菜はどういうところで売られているのですか?」
吉田さん「okuluで作った野菜は、個人宅への宅配や、料亭やレストラン、京都のオーガニック食品を扱う『GOOD NATURE STATION』でも販売しています」
頭川さん「『GOOD NATURE STATION』でも売られているんですね」
吉田さん「はい。食品売場での販売だけでなく、2階にあるレストラン『TAKAYAMA』さんでも使ってもらっています」
頭川さん「すごく人気店ですよね」
吉田さん「実はオーナーシェフの高山さんとはオープン準備の頃から仲良くさせてもらっています。うちの野菜を使ったトマトソースやジェノベーゼ、それに京北のジビエを使った熟成肉やハムなど商品化に向けて一緒に研究しています」
頭川さん「商品も一緒に考えられているんですね」
吉田さん「そうです、また名産の北山杉を使った店内装飾など、食空間の演出にも関わらせてもらっているので、是非店内も見てみてください」

里山に新たな価値を創る

頭川さん「色々と取り組まれているのですね」
吉田さん「実は他にも、『さともり』という取り組みを始めておりまして」
頭川さん「さともり?」
吉田さん「はい。簡単にいうと“里を守るサポーター制度”です。
東京などにお住まいの方で田舎がないという方が増えているので、そういう方にうちの野菜を毎月買っていただいて、その代わりにバケーション先、林間教育や生涯学習の場として、この場所を利用していただけるようにする取り組みです。
また緊急時には、避難して生きていられる疎開先という危機管理対策の機能も提供しようと考えています」
頭川さん「美味しい野菜が毎月届いて、第二の故郷が持てるって素敵ですね」
吉田さん「ありがとうございます。この地域がありのままの姿で価値を持てるようにしたいのです。行政の方たちとも連携して試行錯誤しながらですが進めています」
頭川さん「コロナ禍で利用する方が増えそうですね」
吉田さん「はい。実際かなり増えています」
頭川さん「やはりそうですよね。でも普通に野菜買うだけでも十分嬉しいです」

おいしさを優先する経営哲学

吉田さん「ちょうど植えたところなのですが、こちらでは水菜、壬生菜、チンゲン菜、ほうれん草、九条ネギなどを作っています」
頭川さん「どれも大好きなお野菜です。水菜と壬生菜って良く似てますよね」
吉田さん「元々は同じもので変異していったと言われていますね。うちでは水菜だけでも3~4種類育てています」
頭川さん「そんなに?スーパーなどでは水菜としか書かれていないので、それだけ種類があるのに驚きです」

吉田さん「水菜でも品種によって硬さが違うのでサラダ向き、お鍋向きなど様々です。九条ネギもこれからのものは寒さで甘みが増しますし、同じ野菜でも季節や育て方によって変わっていきますね」
頭川さん「奥が深いですね。私が野菜ソムリエの資格を取得してからもどんどん新しい品種ができるので、常に勉強です…」
吉田さん「本当にそうですね。」
頭川さん「今は他にどんなものを作ってらっしゃるのですか?」
吉田さん「そうですね。落花生とか」
頭川さん「落花生!私大好きで毎日食べてます!」

落花生の畑へ移動する二人。

頭川さん「こんなに一杯!テンションあがります。よく丹波の落花生を食べるのですが、こちらでも作ってらっしゃるのですね。京都ではあまり落花生作っていないと思っていました」
吉田さん「そうですね。京都の土は粘り気があって落花生は育ちにくいと言われていて、京北でも作っている農家は少ないと思います。柔らかい土の方が相性いいですね」

頭川さん「やはりそうですか。貴重な体験ができてうれしいです。ピーナツの油は体にも良いので大好きです」
吉田さん「体に良いと言えば、菊芋もそこで育てていますがご覧になります?」
頭川さん「菊芋!糖尿病予防にもすごくいいと言われていますね。見たいです」

吉田さん「これです」
頭川さん「こんなに背が高くなるのですね」
吉田さん「菊芋は育てるのに時間がかかるので、面積に余裕がある農家でないとなかなか難しいのです」

頭川さん「デンプンが少なく低カロリーで血糖値が上がりにくいんですよね。チップにしておつまみにしたりしても美味しいですし」
吉田さん「生でスライスしても美味しいですよ」
頭川さん「生で食べても美味しいのですか?」
吉田さん「はい。食べてみます?」

ということで、川で採れたての菊芋を洗います。

農園の隣を流れる川も綺麗です。

頭川さん「本当に美味しいですね」
吉田さん「皮も剥かなくていいので楽ですね」
頭川さん「やはり野菜作りでこだわっていらっしゃることって多いですか」
吉田さん「シンプルなのですが、迷ったらおいしい方を作ることにしています。経営として考えたら非効率であっても、それがおいしさにつながるのであればそちらを優先します。色々な栽培方法を検証した上で現在は有機栽培に近い栽培方法を採用していますが、よりおいしいものを作るために有機栽培では使用しない肥料や技術なども積極的に取り入れています。有機栽培はあくまでもおいしさの手段であって目的ではないのです」
頭川さん「美味しさって本当に大切ですし、それによって多くの人が食べたいと思いますね」
吉田さん「そうですね。うちの野菜作りの基本は「自分たちが食べたいおいしいもの」なのです(笑)でも、おいしい品種は栽培が難しい、採れる量が少ない、病気に弱い、形が揃いにくい、など経営的栽培に不向きな性質のものが多いです」
頭川さん「収穫時期なども難しいそうですね」
吉田さん「そうなのです。野菜が1番おいしいタイミングで収穫すると、一般的な規格からは外れるので販売しにくい場合も多くあります。例えばトマトは完熟で収穫するのが1番おいしいですが日持ちがしなくなります。大変ですが、おいしい野菜という選択肢を増やすことは生活の豊かさにつながると信じて日々汗を流しています。」
頭川さん「そういうお野菜だからこそみんな食べたいと思うのだと思います」
吉田さん「ありがとうございます。野菜好きな人はもちろん、食に興味のない人にも食べてもらいたいので、「雑味がなく風味と味がしっかりしている滋味」を目指して頑張ります」

里山で暮らすということ

吉田さん「山羊もご覧になりますか?」
頭川さん「みたいです。飼われているのですか?」

こちらの2頭の山羊は、無農薬栽培によって生えてくる雑草を食べてくれるそう。
吉田さん「はい。よかったら餌にこちらをどうぞ」

餌やりを体験する頭川さん。
頭川さん「かわいいー。結構力も強いですね!」
吉田さん「引っ張る力が強いですね」
頭川さん「楽しいです。吉田さん、あの檻のようなものは何ですか?」

吉田さん「あれは鹿を捕獲する檻です」
頭川さん「野生の鹿ですよね。結構獲れるのですか?」
吉田さん「月に10頭ほどは獲れることもあります。あの檻にセンサーが付いていて、鹿が入るとアプリでスマホに連絡がきて、ボタン押すと檻が閉まるようになっているんですよ」
頭川さん「ハイテクですね!」
吉田さん「便利ですね。鹿が獲れると捌いてみんなで食べるのですが、美味しいですよ」
頭川さん「そんなこともされるのですね!鹿肉は脂質も少ないしヘルシーで女性にも最近人気ですね」
吉田さん「高タンパク低カロリーで鉄分も豊富です。いずれは鹿肉の販売もやりたいと思っています。年間100頭ぐらい獲れるようになれば一人雇用できるので、京北地域の活性化にも繋がると思うのです」
頭川さん「地方で仕事を作るって大事ですよね。コロナ禍でみんなの考え方も変わりつつありますし、ぜひ頑張ってほしいです」

豊かな里山にIT技術を取り入れ、現代の生活様式にあった提案をするokuluさん。地域創生への取り組みは着実に前へ進んでいます。

■取材先okulu
https://www.okulu.kyoto/