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CULTURE 2021.04.09 石原 かんな

【がんばり過ぎない食育】親子で楽しめる「ミニチュアフード作り」体験in京都

世界中の人も体験しているミニチュアフード作りは、子どもの食育にどう役立つ?

子どもへの食育のコツやアドバイスを紹介する【がんばり過ぎない食育】シリーズ。

今回は、京都市内の清水寺近くに「BONCHI Kyoto」という名のアトリエを構えるミニチュアフード作家・萩永麻由加さんのもとへ。

この萩永さんは作家でありながら外国人観光客への観光ガイドもされており、元は情報誌の編集者(現在はフリーの編集者)でもある多才なお方。京都で生まれ育ち、日々の生活や仕事などで得られた地元ならではの情報を外国人などに伝えながら、こちらまで思わずにんまりしてしまう可愛らしい笑顔や楽しい会話で、日本はもとより世界中にたくさんの仲間がいらっしゃいます。2020年2月には、世界中から集まった朝食の写真や説明をもとにミニチュアフードを作った「世界の朝ごはん」の展覧会も開催。

そんな萩永さんが2017年から取り組まれているミニチュアフード作りのワークショップを実際に体験させていただき、今までに参加された方の反応や萩永さんの想いなどもインタビューしてきました。さてさて、子どもへの食育にどのように役立ちそうでしょうか?

リアルさと可愛さが詰まった萩永さんの作品たち。アトリエのショーウインドウに飾られていて、通学で前を通る小学生が毎日じっと見ていくとか。

器選びや具材決め…料理を丁寧に作るような行程で頭もやる気もフル回転!

まずはミニチュアフード作りのワークショップの説明から。
外国人観光客などに向けたツアー「Walking & Lesson」では、萩永さんおすすめの地元の飲食店で、例えばうどんやたまご丼、ラーメンやオムライスなどを食べ、それを実際にミニチュアフードとして作るという流れで行われます。ゆえに「食べたものを自分で作ってみる。それを家に持ち帰り、思い出として飾っておける」という楽しみを味わえるのですが、実はそれだけでまとめられないほど奥深いのです。

ワークショップは大まかに以下のような流れで行われます。
1.作るものを決める(きつねうどん、たまご丼など)
2.器を選ぶ
3.構成する具材を紙に書く(うどん、かまぼこ、ねぎ、おあげ、出汁など)
4.それぞれの具材を作る
5.器にひとつずつ盛っていき完成!

私は約90分間の「きつねうどん(The Kitsune Udon)」作りを体験。その流れにゆるりと沿いながら、子どもが体験したらこんなことが学べるかも!と感じたことを挙げてみます。

◆作るものを決める=料理を作る時のようにあれこれ想像できる

「何を作ろうかなぁ」と考えることは料理の始まり。楽しく想像するきっかけにもなりますし、「食べる」→「作る」という流れだと楽しみも2倍になりますね。「あるお子さんは『ラーメン増し増しをつくりたい!』と。お父さんがいつも食べているものだからですって。子どもは大人の食べるものをよく見ていて、頭の中でそれを思い描いているのですね」と萩永さん。

うどんやラーメン、かつ丼、うな丼、カレーやオムライス…。私たちの身近な食べ物のミニチュアを作れます。

◆器を選ぶ=自分好みの器や料理に合う器を会話しながら選ぶ楽しさ

料理においても器を選ぶのは大切なこと。幼稚園や保育園、学校などの給食やファミリーレストランなどではシンプルで割れにくい器が使われていることが多く、忙しい親のお子さんは手作り感あふれる陶磁器に触れる機会も減っているかも。ですので、萩永さんがあちこちの出先で揃えたという様々な柄や形のアンティークの器(ミニチュア用なのでお猪口などの小さいものが多い)のお話を聞きながらの器選びは大人も子どもも特別な経験になりそうです。親子で「あれがいい」「これもいいね」と相談しながら選ぶのもよいですね。

趣たっぷり。柄や形、高さや厚みなどが異なる器から選びます。

◆構成する具材を紙に書く=頭できちんと整理して理解する

「作るものを決める」から発展させた行程。何を入れたいのかを書き出すことで準備すべきものを決定すれば、頭の中できちんと整理ができます。スマホの普及などで手書きする機会が減りがちな私たちは日本語を「書く」のも大切なこと。書くことが苦手な子どもでも遊びの延長として楽しんでできそうです。お料理する際にも真似したいですね。
萩永さん曰く、「私が忘れないためにも重要なんですよ(笑)」。

思わず食べてしまいそうな具材のストックもアトリエにはたくさん!具材の一部を自分の作品に使わせてもらうのも◎。

では、次の行程に参りましょう。

ゼロから具を作り、盛りつけて完成。本物の食材や料理への興味が湧くかも?

いよいよ具材作りに入ります。大体の具は樹脂粘土と絵具で作れます。例えば、作るのが難しそうな細いネギ。萩永さんが試行錯誤して編み出した秘技で輪切りの細かいネギもできちゃうのです。

ぶきっちょな筆者でも、萩永さんのアドバイスでグラデーションのあるネギが完成!

◆それぞれの具材を作る=大人も子どもも夢中に&食材への興味を持つ

ここが一番奥深く、かつ作業に没頭できるところかもしれません。
まずは粘土をある程度の大きさに丸め、理想の色に近づくまでちょっとずつ絵具を混ぜていきます。ネギであれば緑や黄色い部分、白い部分がありますが、この3色の粘土を薄く伸ばしてつなぎ合わせ、紐に巻きつけるとあら不思議。本物さながらのグラデーションのあるネギができます。また、お揚げのざらざらした表面は歯ブラシをトントンと叩くことで表現したり…。
「実際の食材に触れる機会が少ないお子さんでも体験を通して食材の色合いや手触りへの気づきがあるみたいですよ」と萩永さん。「肉うどんを作ったお子さんは、爪でお肉のシワを作っていました。よく見ているなぁと感心しました」。

具の色付けはほんの少しの絵具で。理想の色までちょっとずつ調整していきます。

お揚げの雰囲気を出すために、歯ブラシでしっかりトントン。

うどんの麺は粘土を伸ばしてハサミで切ります。細麺や太麺、平たい麺や丸い麺など自分の食べたい麺がどんどんできていきます。
「日本の漫画がきっかけで日本文化に興味を持って京都に来られる外国人の方も多いんですよ。私のツアーでおうどんやたまご丼など地元ならではの食を楽しみ、その後にミニチュアフード作りをされることで、海外の方に日本の『食育』が自然とできているような気がしています。私自身は食育を目的にワークショップを開いたわけではないのですが、子どもたちにもミニチュアフード作りを思う存分楽しんでいただくことで、無理なく『食育』の手助けができたらいいなと思います」(萩永さん)。

「これぐらいの太さがいいかな?」ハサミで麺を作っていきます。

◆器にひとつずつ盛っていき完成!=他の作品を見たり、自分で考えながらセンスを磨く!?

自分で選んだ器に具材を一つひとつ乗せていきます。切った麺を一本ずつ軽く丸めながら器にくっつけて、まずは麺を完成させます。

仕上がった麺と、これから乗せていく具材たち。

次にお出汁を接着剤で作ります。接着剤を入れた紙コップの中に絵具を付けた竹串をぐるぐると回して色を調整し、少しずつ器に注ぎこみます。

竹串で麺の間にもお出汁を行き渡らせます。

そしていよいよ具材をオン。かまぼこやお揚げを乗せ、最後に細かくハサミで切ったネギを散らします。
料理もミニチュアフードも、本当は見た目の正解はありません。色や形のバランスなどは固い頭で「こうしないといけない」と考えるものではなく、やっているうちに「こうしたらキレイかも」「美味しそうに見えるかも」と自然に考えられるもの。他の人の作品を見たり、食べたことのあるものを思い出して自分なりに考えてみたりすることで子どもの美的感覚が磨かれたり、料理の盛り付けに活かせたりするのかもしれませんね。

斜め切りのネギはこんな感じ。好みで小口切りにしてみても。

ピンセットを使ってそっと具材を乗せていきます。時間があっという間に過ぎていく…。

最後は萩永さんにちょこっと調整していただき完成!世界にひとつだけのミニチュアフードのできあがりです。ミニサイズのお箸と一緒に写真撮影も。オシャレで丈夫な袋で包んでもらい、お家に持って帰れます。

できました、できました!大満足の仕上がりです。

以上はきつねうどん作りの流れで書いてみましたが、他のミニチュアを作る時にも似たような楽しみ方や食育ができそうです。

「~しなさい」と押し付けずに見守る。そうすれば子どもは自由に、夢中に。

では改めて萩永さんに、このワークショップやツアーを始めたきっかけなどを尋ねてみましょう。
「この京都という土地を活かして日本の文化を伝えるような外国人向けの仕事をしたかったのと、大好きなミニチュアフード作りを教えられたらおもしろいなと思ったのがきっかけです。ワークショップは知り合いのお子さんなどにも体験してもらいながら改善を重ねてきました」。

子どもの食育については、「ミニチュアフード作りを通して、食べることや料理が楽しくなったり興味を持ってもらえたらいいなと思っています。このワークショップは大体5歳ぐらいから参加できるのですが、親子でいらっしゃっても、それぞれが夢中になって作られますよ。先日は、いつも仕事でお忙しいお母さんと小3のお子さんが参加されたのですが、カレーのミニチュアを作る際にお子さんがニンジンの形がわからなかったんです。いつも宅配のカット野菜を使われており、スーパーなどに食料品の買い物へ一緒に行くこともなく、休日は冷凍食品か外食が多いからだと伺いました。共働きというのもあり、平日も休日も親子でゆっくりする時間を捻出するためにうまく工夫されているのだと思います。ですので、『ワークショップでニンジンやジャガイモをまるごと作ってから切ることは、野菜の形を調べたり色を思い出したりしないといけないので食育につながるのでは』と、お母さんがおっしゃっていましたね」。

「ミニチュアフード作りという“遊び”を楽しみながら、“食”に興味を持ってもらえたらいいですね」

萩永さんの言葉で印象的だったのは、「子どもが先生」というキーワード。どうしても親は子どもに「~しなさい」と言ってしまいがちです。でも、料理でもミニチュアフード作りにおいても、子どもと一緒にやってみてもあまり口出しせずに、自発的に“やりたい”“やってみる”という気持ちを大切にするのが良いという気づきがあったとか。また、子どもの洞察力や観察力は大人が思っているよりも素晴らしいものだということも。食材のシワまで思い出してミニチュアを作ったり、親がいつも食べているものを子どもが作るのですから…。
「もしかしたら、食に関して一緒に何かするちょっと特別な機会を時々つくるだけでもいいのかも。そうすると、お子さんは自ら考え、学び、もっと進んでいくんじゃないかなと思います。その様子を見ることで、お母さんやお父さんにも気づきが生まれるのではないでしょうか。子どもが先生で、親御さんの方が食育されるようなイメージですね」。
また、「お人形を使ったおままごとだって『いただきます』や『ごちそうさま』の練習になるんですよ。先日、お子さんが作ったカレーのミニチュアを人形さんに食べさせ、『ごちそうさま』という言葉を添えた動画もいただきました。こちらまで嬉しくなりますよね」と萩永さん。

ちょっと特別な体験が食育のきっかけに。そして親子の大切な時間にも。

「食育しなきゃ」と感じながらなかなか動けていないお母さんやお父さん。遊びを通した食育は粘土でもおままごとでもできるのです。まずは身近な“遊び”から始めながら、休日は萩永さんのミニチュアフード作りを親子で体験してみれば、もっと新しい学びやヒントが見つかるかもしれません。それは、いつもとちょっと違う特別な時間を親子で共有できるという嬉しいご褒美にもなりますし、いつも何かに追われているお母さんやお父さんも創作活動にどっぷり没頭する機会を作るという意味でもオススメです。


取材協力:「Bonchi KYOTO(京都市東山区)」
https://www.bonchikyoto.jp/
◎営業時間:月~金13:00~17:00(時間外・土日祝は予約のみ営業/ワークショップは要予約)
※2021年4月現在、新型コロナウィルス感染拡大防止対策でワークショップのメニューを限定。申込み・問い合わせはHPからメールにて。

撮影:井原 完祐

石原 かんな

いしはら かんな

ライター・食育インストラクター

京都育ち、大阪在住のフリーライター。少しお調子ものでマイペースな男児の母。人物取材、グルメやファッションの取材撮影、企業や学校関係など分野は問わず活動中。美味しいもの、人生を楽しむこと、一生懸命に生きるひとに興味津々。世界中でいちばんお気に入りの場所は、京都の「鴨川べり」。