私はアフリカ社会における持続可能なフードシステムを研究しており、2008年からはギニア沿岸部における製塩業と環境保全のリサーチに取り組んでいます。これまで、年に1度渡航し、毎回、3週間〜4ヶ月半ほど滞在してきました。今回はギニアの食文化について紹介します。
ギニア共和国はアフリカ西部、大西洋に面した国で、広さは日本の本州とほぼ同じ。人口は約1,260万人で、国民の約85%がイスラム教徒です。
ギニアではまだまだ電気、水道、ガスが安定して供給されていません。大半の家には冷蔵庫がなく、調理に使うのは主に炭です。女性たちは朝に市場に行き、その日に使いきれるだけの食材を買います。家族のためだけに炭をおこして調理するのは効率が悪いため、親戚やご近所さんたちと共同でご飯を作ります。1回目の調理が終わるのは13時ごろと遅めなので、ギニアの人の多くは朝食を食べず、昼・夜の2食です。
1人で食事を取ることはあまりありません。おかずをたっぷりと盛った大皿を大人数で囲み、シェアして食べます。家を訪れる人には、食事時でなくても必ず「ご飯を食べていかない?」と声をかけます。日本では見られない習慣なので、遠慮してしまいますが、滞在を繰り返すなかで断らないことがマナーということがわかってきました。今では、おなかがいっぱいでもひと口だけいただくようにしています。
味付けは、かつては塩が主流でしたが、いつからか固形ブイヨンが多用されるようになりました。ギニアでは固形ブイヨンはさまざまなメーカーのものがあり、市場で調べてみたところ、20種類以上見つけることができました。家庭ごとにこだわりがあるようです。
これでまでのギニアにおいては、魚が主なタンパク源でした。 多く食べられているのはニシン、スズキの仲間です。ただし、コールドチェーンが不十分なため、燻製されたものが流通しています。一方で、フランス・パリのギニア食材店でも、燻製魚を見かけることがあり、いわゆるソウルフードであることが分かります。
羊、ヤギ、牛といった肉はお祝いごとや儀礼の時にのみ食べられてきましたが、経済的な発展や食文化の多様化が進み、近年は日常的にも少しずつ肉類を食べる機会が増えてきているようです。コロナ禍明けからは、街中にフライドチキン店が急激に増えました。
とはいえ、気候変動や人口爆発などの理由で、食料自給率がとても低いことが課題となっています。コメの約半分はタイやインド、他の食材や調味料は中東や中国からと、多くの食材を輸入に頼っています。
食堂では、一人前の量が決まっていません。手持ちのお金を出して「◯◯ギニアフラン分をください」と注文します。肉類が使われていないものだと5,000〜1万ギニアフラン(約91〜182円)程度頼めば、十分でしょう。
※1ギニアフラン=約0.018円(2024年1月現在)
私が研究調査で注目しているもののひとつが養蜂業です。ギニアでは、野生のハチの巣からハチミツを採取すること(ハニーハンディング)は古くから行われてきました。一方、初期費用やランニングコストがあまりかからないという理由から、養蜂は経済的発展途上国の生業に適しているものの一つとして注目され、2020年前後からギニアでも養蜂をはじめる人が増えています。多くの場合、海外支援団体の協力を得ながら、コミュニティ単位で取り組んでいます。また、個人的に独学で養蜂に取り組んでいる方もいます。ハチミツの流通価格は500mlで1〜4万ギニアフラン(約182〜728円)です。コメが1kgで8,000ギニアフラン(約146円)であることと比べると、ハチミツが高値で取引されているとお分かりいただけると思います。
ギニアの人びとにとってハチミツは、民間薬として位置付けられています。滋養強壮、喉や胃腸に良いといわれており、スプーン1さじ程度をそのまま口にします。ギニアのハチミツの味は蜜源により異なりますが、どれもしっかりと濃いです。流通範囲は限られていて、その多くは生産地や近隣で消費されます。しかし、輸出にチャレンジしたいという声も聞かれるので、いつか日本でも眼にする日が来るかもしれませんね。
日本人にとってギニアはなじみのない国かもしれませんが、まずは食から興味を持っていただけると嬉しいです。特に、ギニアは今、社会的に大きな変化を迎えています。調理方法や食事の内容、食べ方などが変わっていく様子についても知ってもらいたいです。そうすることで、アフリカを一枚岩として、あるいはステレオタイプ的にとらえてしまうことを見直すきっかけになると思います。