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コーヒーを通して見えた、アフリカ・ルワンダ農村の暮らしと経済

藤田 寿乃

龍谷大学大学院 経済学研究科 院生

コーヒーを通して見えた、アフリカ・ルワンダ農村の暮らしと経済

藤田 寿乃

龍谷大学大学院 経済学研究科 院生

コーヒー生産国・ルワンダのコーヒー輸出率は9割

ルワンダはアフリカの中央部に位置する内陸国です。私は2022年11月より、独立行政法人国際協力機構が行うボランティア事業に参加し、JICA海外協力隊としてルワンダに赴任しています。主な活動内容は、コーヒー農家への栽培技術指導と、地域産品のマーケティング活動です。

私が暮らしているのは首都・キガリから車で90分ほどの距離にある、ルワマガナ郡カレンゲセクターです。一軒家を借りていて、お隣も正面もルワンダ人の方がお住まいです。市場でお米やジャガイモ、ニンジン、茄子等を買って和食を作って食べることも多いです。

ルワンダにはコーヒーを飲む習慣がなく、地元の人たちは紅茶に牛乳、砂糖、生姜を加えて煮込む「イチャイ」をよく飲んでいます。そのため、コーヒーは換金作物として栽培・加工されており、平均して約9割が輸出されています。

とはいえ、ルワンダ国内でもわずかですがコーヒーが流通しています。豆は500グラムで850~960円程度、エスプレッソマシーンを使って抽出するカフェがほとんどです(なので、ドリップコーヒーを提供するお店は少数です。)。私は日本では紅茶派だったのですが、ルワンダに来て、コーヒーに関わるようになってからはコーヒーが大好きになりました。自宅では、朝にドリップコーヒーを飲むのが日課で、ルワンダのコーヒーは果実の爽やかな酸味を感じられて本当に美味しいんです。加工したての新鮮な豆で飲むコーヒーの味は格別です!

ルワンダ国内での流通促進を支援

コーヒーの栽培に適した気候条件は「平均気温20℃」「乾季と雨季がある」こと。 世界の栽培地としては中南米が有名ですが、アフリカ・ルワンダも環境に恵まれており、コーヒー栽培の歴史は100年以上もあります。

ルワンダには乾季が2回、雨季が2回あるのですが、近年は季節の間隔がずれたり、雨季が極端に短くなったりするなど気候が変化してきています。世界的にも、気候変動や温暖化の影響で、コーヒーの生産が安定しなくなってきました。「2050年には安定生産が難しくなり、現在のようにコーヒーを飲み続けることができなくなるかもしれない」と指摘する研究も存在します。

コーヒーチェリー。赤色に近づくほど完熟に近くなる

ルワンダでは、国内の農家さんが完熟のコーヒーの果実「コーヒーチェリー」を加工場に持ち込みます。買取り価格は、2023年は1キロ410フラン(約50円)でした。物価は日本の約10分の1なので、農家さんはこの収入で生活はできるものの、決して裕福な暮らしをしているとはいえません。コーヒーチェリーの取引価格に不満をもつ農家さんの中には、コーヒーの木の代わりに、より高値で取引されるマカデミアナッツを育て始めた方もいます。

コーヒー加工場ではコーヒーチェリーの実と種(豆)を分ける作業がおこなわれます。加工場では数百人が分担して作業をしており、初めてルワンダの加工場に訪れた際、その光景からコーヒー産業の壮大さに感銘を受けました。それが、私がコーヒー生産の実情をたくさんの人に知ってほしいと思うようになった大きなきっかけです。

一緒に活動をしている加工場の一つ

私がコーヒーに関連して一緒に活動しているのは、セクターにある2ヶ所の加工場です。スイス企業の加工場は外国とのコネクションがあり、日本を含め外国に輸出しています。もう1ヶ所はルワンダ企業で、コーヒーを継続して買ってくれる業者が見つからず苦労されています。私は「ルワンダ国内でもコーヒーが販売されるようになれば、企業の収入も安定するのではないか」と考え、国内での取扱先の新規開拓に取り組んでいます。スーパーマーケット1軒で販売が決まったほか、外国人も滞在するホテル数軒にも交渉を行っています。
また、任地では良質なハンドクラフトも制作されており、コーヒーとともに販売促進をおこなっています。

活動先のクラフト組合で制作したコースター

高品質のコーヒーを育てても農家の売上につながらない

最高級品質の豆(パーチメント)

ルワンダでは約20年前まで、コーヒーの質を問わず量産し低価格で輸出していましたが、2000年代に政府が「量より質の高いコーヒーを作り、外貨をさらに稼ぐ」方針に転換しました。近年は、高品質・高付加価値・高価格のスペシャルティコーヒーの生産が増加しています。私が活動している加工場では生産量の約10%をスペシャルティコーヒーとして輸出しています。
課題は、どんなに良質なコーヒーを栽培しても、農家さんに還元されにくいという業界構造です。加工場では農家さんが持ち込むチェリーを農家ごとに分別せずに一緒に加工するため、農家さんが持ってきたコーヒーチェリーは通常一定の買取金額で取引されます。つまり、スペシャルティコーヒーの輸出で高価な取引ができても、農家さんがスペシャルティコーヒー生産による恩恵を受けるとは限らないのです。

地元の人たちが仕事に誇りをもつ仕組みを作りたい

私の任地は観光地ではないためか、私の関わっているコーヒーやクラフトの完成品を見たことがない方が多くいらっしゃいます。以前、任地で制作したクラフトの写真を近所の人にお見せした際に、「カレンゲにこのようなものを作れる場所があったとは知らなかった」という声を聞きました。
私の想いは「現地の人々が住む地域や仕事に誇りを持ってほしい」ということ。そのためには「成果物を認めてもらい、報酬につなげる」仕組みが必要だと感じます。
残りの任期では、マーケティング活動を通してそのような成功体験を増やし、自信を持つ人々を増やしていきたいと考えています。

JICA海外協力隊員としての任期終了は2024年秋。私にとっての収穫は、一緒に頑張りたいと思える人たちに出会えたことだと思っています。国籍や人種、立場を越える“仲間たち”とともに、地域産業の活性化に努めていきたいと思っています。

日本にいる読者のみなさんには、ルワンダのコーヒーを見かけたら「頑張って作っている人たちがいる」と遠く離れたアフリカに想いを馳せ、味わっていただけると嬉しいです。

 

カレンゲコーヒーを飲める場所
MAME NO TAKUMI
https://mametakucoffee.com/?pid=166990137&fbclid=IwAR1N-rHPkrAJiJ7thT9kn3uaTJuko7_BbVmLljFVLtGJcGGE7gvHnW8rYCM
自家焙煎珈琲カフェすいらて
https://cafesuilatte.base.ec/items/45559972
Loquat coffee roaster
https://loquat-coffeeroaster.com/products/%E3%83%AB%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%83%80-%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%A9-200g