植物同士が匂いでコミュニケーションする?!最初に聞いたのは、私が大学院生のときの研究室セミナーで高林純示助教授(現在は名誉教授)の話を聞いたときでした。『そうなん?!ファンタジーじゃなくてホンマにそんなことしてるん?!』って驚いたのを今でも覚えています。
植物間コミュニケーションの最初の発表は1983年、2つの別の研究グループによるハンノキとヤナギに関する論文でした。被害をうけたポプラやヤナギの近くにいる、別個体は害虫の被害を受けにくくなるという内容でした。匂いを介して植物間でコミュニケーションが起きているというセンセーショナルな論文でした。
しかし、すぐに批判を受けます。一つは実験反復の問題点です。信頼を得られるだけの実験回数ではなかったというもの。これは反復を多くすればよいのでクリアできる問題です。もう一つは、代替仮説が否定できないという問題点でした。匂い自体を昆虫が忌避した、植物体に吸着した匂いを害虫が忌避した、とかいう仮説です。確かに、それらの代替仮説はごもっともで、それをどうやって解決するんだろう?と思っていました。
その答えを出したのが高林先生と当時博士研究員だった有村源一郎さん(現在は東京理科大教授)でした。分子生物学的手法を用いて、ハダニに食害をうけたリママメから放出される匂いを受容した健全なリママメが、防衛遺伝子を活性化させているということを報告されたのが2000年でした(図)。
図:匂いを受容した立ち聞き葉で、防衛遺伝子が活性化しているかを調べた。
この論文以外にも、同じ年に2本の野外研究が発表されています。一つは、被害をうけたキク科ヨモギ属のセージブラシの匂いを受容した野生タバコの被害が減少することを5年間にもわたって実証したカリフォルニア大学デービス校特別名誉教授Richard・Karban(昆虫学・生態学)の野外研究、もう一つは、多大な被害を受けたハンノキから距離が近いほど、被害を受けにくくなるという樹木をもちいたTscharntkeの野外研究です。2000年はまさに、植物間コミュニケーション研究の再燃の年であったといっても過言ではありません。
そこから25年以上が経ちました。その間、40種以上の植物において匂いを介したコミュニケーションがあること、どのような匂い成分が植物間コミュニケーションを引き起こすのか、この現象を農業にいかすことはできるのか、など、さまざまな研究がなされています。筆者は幸運にも、高林さんたちが実証されたときにその研究室に所属し、また、2003年から日本学術振興会海外特別研究員として、2000年にセージブラシの研究を行ったKarbanの研究室にいくことができ、植物間コミュニケーションの研究を始めたのでした。
次回からは、そのお話をさせていただきます。
出典:日本種苗新聞
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