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熱力学的ダイエット論 その4 ー食事回数とアルコールの影響は?ー 【第1弾】
  • HEALTH
  • 2019.05.09

熱力学的ダイエット論 その4 ー食事回数とアルコールの影響は?ー 【第1弾】

ダイエットの基本は食べる量と消費する量のバランスを自分で把握することにつきる。しかし、現実には正確なエネルギーの出入りがわからないこともある。今回は、そんな食べ方のビミョーな問題を探る。

検討①食事の回数

食事回数を増やすと太りにくいのか

一日3食を2食にしたら太るか、あるいは、食事の回数を増やしたらやせるのか。しばしば話題になる。答えはノーである。食事の回数を増やしたら太るに決まっている。食事を何度かに分けると太らないという伝説は次のような実験結果に基づいている。
「同じカロリーの食事を1度に与える場合と数回に分けて与える場合を比較すると、1回で無理に食べる方が太りやすい。」
食事の回数が少ないと、食間の飢餓感が脂肪の合成を盛んにする。“この次はいつ食べられるかわからないからともかく脂肪にして蓄積しよう”と体は考える。危機管理である。
食事のたびに熱産生や消化吸収に必要なエネルギー消費、自律神経系の興奮などが起こる。食事の回数が多いとむだなエネルギー消費が期待できる。1回の食事量が少ないと血糖値の上昇が穏やかになるために、インスリンレベルが急に高くならず脂肪が蓄積されにくい。もしも食べる量の合計がいっしょならば、食事回数を増やしたほうが太りにくいという説は正しい。

しかし、現実には食事の回数が増すと一日に食べる総量は確実に増える。食事回数が2回から4回に増えると食べる量のトータルも増える。食事を何回にも分けるメリットをいっぺんに帳消しにする。一日の量が決まっている場合に限り、それを何回かに分けて食べるほうが太らないというのが正しいが、そんな妙な食べ方は現実の食生活には当てはまらない。

朝食を抜いたら太るというのも正確ではない

1日に食べる総量が確実に減るならば、食事抜きでやせることはあっても太ることはない。多くの動物の中で、1日3回規則正しく食べる人間だけがブヨブヨ太っており、次はいつ食べられるかわからないような不規則な食事しかできない動物はスリムである。回数よりも食べる総量が重要なのだ。現代人は余計なことを考えすぎているようだ。活発に動いて一日の摂取カロリーをコントロールすることに専念したほうがシンプルで本質的である。

朝食抜きの極端な場合には自律神経のリズムが崩れ、体温が低いままで1日が終わり、エネルギー消費が極端に低下するケースもあるが、食事を抜いて太ったという人の多くは空腹をしのぐために食べた間食のカロリーが意外に大きいことに気づかないだけである。
食事回数を減らして空腹時間が長引くと、消化管からの栄養素の吸収が良くなるので太りやすいという説もある。これも誤りである。人間の小腸は6メートル以上もある。実際に使われているのは前半部分で、後の半分以上はいざというときの予備に待機している。
まんじゅうでもそばでもうどんでも、パンでもごはんでも、食事回数を何回にしようとほぼ100%吸収される。激しい下痢でもしたら別であるが、動物も人間も腸管からの栄養素の吸収はいつも完璧に近い。食事回数にかかわらず栄養素をむだに排泄することはない。

出典:女子栄養大学出版部「栄養と料理」

伏木 亨

伏木 亨

ふしき とおる

龍谷大学農学部教授、農学博士、龍谷大学農学研究科長

専門は農芸化学・栄養化学。「味覚と嗜好のサイエンス [京大人気講義シリーズ] 」ほか著書多数。日本香辛料研究会会長、日本料理アカデミー理事。平成24年日本農芸化学会賞受賞。平成25年飯島食品科学賞受賞。平成26年紫綬褒章受賞。