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ウイスキーは奥が深い -第1弾-

太田 裕見

国立健康・栄養研究所にて招聘研究員

ウイスキーは奥が深い -第1弾-

太田 裕見

国立健康・栄養研究所にて招聘研究員

サントリー「白州12年」、「響17年」が販売中止へ

2018年5月、日経新聞の朝刊にこのような記事がでた。
ウイスキー市場は、1980年、4500万ケース(約40万キロリッター)のピークから年々下降線をたどり、2008年にはピーク時の1/5にまで落ち込んだ。その後、新しい飲み物としてハイボールが飲まれ始めたのをきっかけに上昇に転じ、2017年16万キロリッターまで持ち直した。Ageを記したウイスキーは、そのAge以上の原酒を使用することが義務付けられているので、白州12年に使用する原酒は、2006年以前に白州蒸留所で蒸留したものでなければならない。市場が低迷した2000年代前半の10年間、12年後に市場が倍になると予測し、生産数量を倍にするという判断は不可能であったのだろう。

それでも、サントリーでは将来に備え、2013年に山崎に4基、14年に白州に4基の蒸留釜を増設してきた。でも、そこから生まれた原酒が12年、17年の齢を得るには——-。

ウイスキーの誕生

中世ヨーロッパの錬金術が、近代科学の基礎を創ったといわれている。不老不死を追い求めた結果、蒸留器が発明され、そこから人類のエネルギーを復活させるもの、生命の水(Aqua vitae)が発見された。12世紀にヘンリー2世(イングランド)のアイルランド遠征記にウイスキーらしきもの(アイリッシュ)が彼の地にあったことが記されているが、アイルランド語でAqua vitae はUsque baugh(ウスケボー) 、そこから Whiskie → Whisky という言葉ができた。 15世紀には、スコットランド王室にウイスキー(スコッチ)の出納記録が残っている。19世紀にはアメリカ大陸に渡り、バーボン、カナディアン、20世紀初頭に日本(ジャパニーズ)へと広がった。これを世界の五大ウイスキーと称している。余談だが、バーボンはWhiskey という綴りを使うのだが、西部開拓時代に貴重品であったために、いつも鍵(key)のかかる場所に保管されていたのが理由とか——–。

ウイスキーと水

水は不思議な物質。物質の三態、固体・液体・気体で重いのは液体で4℃のとき。水のあるところ全て、最後に凍るのは水底、それ故、生命が存続できたともいえる。

ジュースに氷を入れて飲むと氷はジュースに浮くが、比重の低いウイスキーでは氷は沈んだままで「On the Rock」が楽しめる。

サントリーの山崎、白州両蒸留所は、よい水を求めた結果の立地である。大麦の栽培に使用される水以外は、製麦の水、仕込の水、貯蔵の割水、ブレンドの水、度数調整の水、全て蒸留所で汲みあげる天然水である。だから、「山崎」には「山崎の天然水」、「白州」には「白州の天然水」を使ってほしい。できれば、氷もそれで——-。