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HEALTH 2019.07.23 石原 かんな

【がんばり過ぎない食育】保育園勤務の「管理栄養士」さんが教える食育のコツ(前編)

「そもそも“食育”ってなに?」「親はどうすればいいの?」

さて、「食育」ってなんでしょう?食育とは、食べ方や栄養などの教育と思われがちですが、広くとらえると、「食を通して生きる力を育む」ということです。そうなんです、わかるような、わからないような…。
いずれにせよ、食の大切さは本来家庭で伝えられるべきものですが、家事や育児、仕事などで忙しいお母さんやお父さんが世の中に増え、核家族が一般的になった今、なかなか食育まで手がまわらないというのが現実のようです。書き手である私自身も、一児の母として多くのお母さんやお父さんと会話をするなかで、「食育には興味があるけれど、なにをしたらいいのかわからない」「食育をするには時間的・気持ち的になかなか難しく、それを少しでも支える知識やアドバイスがほしい」「気構えすぎずに子どもと食を学びたい」などの声が聞こえてきました。人に聞いておきながら、そういえば私自身も全然わからない…。
そこで、大阪府豊中市にある食育を大切にしている保育園を訪れ、園児の給食をつくりながら食の大切さを伝えている管理栄養士さんに、簡単にはじめられる食育のコツやアドバイスを尋ねてきました。


Q.まずは、保育園のご紹介と食育への取り組みをお教えください。

A.「食べたい」という想いが膨らむ給食づくりや食育を心がけています。

2001年に開園した「おひさま岡町保育園」は、保育目標のひとつとして「よく寝て、よく食べ、よく遊ぶ元気な子どもたち」を掲げています。これが、子どもたちが人として生きていくための大切な基礎と考えているからです。
そして、給食をつくる私たちは「食べることが大好きな子どもたち」になってほしいという願いで日々の仕事に取り組んでいます。
実際には、子どもたちがただ「食べる」というだけではなく、調理をする前の野菜を目で見て触って香りを感じたり、食べたときや噛んだときの音や食感を楽しみながら、旬の食材を五感で味わうことを大切にしています。そのなかで、子どもたちの食べ物への興味が広がったり、食べたい想いが膨らむような経験を土台に、「食べてみたい!」「もっと食べたい!」と思えるような給食づくりや食育を心がけています。また、大好きなお友だちや保育者と一緒に「楽しい」と思える給食の時間も大事にしています。

お話を伺ったのは、「おひさま岡町保育園」に勤めて5年目になる管理栄養士の伊藤桃子先生。

Q.では、簡単にできる食育方法はありますか?

A.食材を「買う」「見る」「触れる」や「下ごしらえ」を一緒にしましょう。

たとえば、食材を一緒に「買う」、「見る」だけでも十分食材に触れる機会になります。そして、できそうな「下ごしらえ」は一緒にする。子どもたちにとっては、お手伝いも楽しいひとときなのです。
スーパーに食材を買いに行くと、大きなカボチャや、まるまるとしたトウガンが置いてあることもありますよね。また、実際には切り身のお魚を買うとしても、泳いでいた姿のままのお魚もあるでしょう。そのように、食材を目で「見る」、ちょっとだけでも「触れる」経験は貴重で、買うものを決めさせてもらうことも子どもたちにとって大きな自信、やる気につながると思います。
一緒に出かけることや下ごしらえが難しいようなら、お母さんやお父さんが調理している様子を隣で「見る」だけでも新しい発見があります。おもしろい形のレンコン、切ると中の色が違うナスの様子を見たら、お子さんはどう思うでしょうか。
当保育園では、園児の年齢に合わせて「下ごしらえ」のお手伝いをしてもらうことがあります。とうもろこしの皮を剥いたり、ひげを取ったり…。その手触りや香りをそれぞれに体感する園児の姿が見られます。ほかに、季節によってたけのこ、そら豆なども登場します。
子どもたちにとっては“学ぶ”というような意識はなく、ただ単純に“楽しい”、“おもしろい”という気持ちでお手伝いに取り組んでいます。でも、そのような経験や、自分たちがお手伝いしたものが調理されて自分のものとして食べることによって、食材がより身近に感じられ、食べることへの興味につながるのだと実感しています。

保育園でとうもろこしに触れる園児たち。皮を剥いたりひげで遊んだり、とってもうれしそう!

Q.ほかに、手軽にできることはありませんか?

A.野菜や果物をひとつ、育ててみませんか。

「野菜や果物を育ててみる」というのもおすすめです。
シソやキュウリ、トマト、オクラやピーマンなどの夏野菜。簡単に育ちやすく、実がなったり、花が咲くなどの変化があると、大人の負担も少なく、子どもも一層楽しめると思います。
保育園では、春にはイチゴ、夏にはシソやキュウリ、プチトマトなどを育てており、子どもたちが水やりや収穫をしています。すると、成長過程を見ることで期待も膨らみ“自分が育てている”という意識が高まるのか、最初はシソが苦くて食べられなかった子どもたちも食べられるようになるなど、うれしい変化が見られます。そして、保育者やお友だちと食べると“もっと食べたい”という気持ちも生まれるようで、おかわりにもつながります(笑)。
ホームセンターなどに行けば苗ごと売っている野菜や果物も数百円で手に入りますし、栽培キットが売っているお店もあります。ぜひ気軽な気持ちで育ててみてはいかがでしょうか。

シソに水やりをする子どもたち。底に穴をあけたペットボトルなら水やりもしやすくて便利だとか。
収穫したシソはそのまま給食室の先生へ。自分がとったものを調理してもらえるという喜びも。

Q.家庭の食卓で“こうしたらいいよ”というアドバイスはありますか?

A.家族で「楽しいね」「美味しいね」を共有することからはじめましょう。

子どもたちに食への興味を持たせるきっかけは“遊び”や“楽しみ”の延長線上にあります。子どもは初めてのことに興味津々ですし、さまざまなうれしい経験を通して学び、成長していきます。
家庭の食卓においてもそれは同じ。子どもたちが大好きなお母さんやお父さんと一緒に「楽しい」「美味しい」が感じられることがまず第一です。もし親子ふたりだけのご飯タイムが多いとしても、それも親子にとっての大切な時間です。
まずは、テレビを消して会話を楽しみ(お子さんの年齢にもよりますが)同じものを食べましょう。
「同じ釜の飯を食う」ということわざがあるように、「共食(誰かと共に食べること)」は重要です。家族やまわりの人が美味しそうに食べているから、子どもは“食べてみたい”という気持ちが高まったり、食べることが好きになるのです。
また、お子さんに好き嫌いがあっても無理をしなくて大丈夫です。当保育園では子どもたちと保育者だけでなく、私たちやほかのスタッフも一緒に会話をしながら給食を食べる機会が多くあります。そのなかで、お友だちが食べているからと苦手なものも食べる姿があったり、おすもう大会という行事があるのですが、4・5歳くらいになってくると「おすもうが強くなりたいからいっぱい食べる!」「本当は○○嫌いやけど食べてみる」などの気持ちが芽生えた頼もしい姿を目にすることがあります。
ですので、お母さんやお父さん方は立派なお料理をつくることが第一優先ではなく、子どもと食卓を囲み、楽しい時間を「共有」すること、「共感」しあうこと。まずはここからはじめていけばよいのではないでしょうか。そうやって子どもが好きなものを発見できたり、好きなものがたくさん増えていけばいいなと願っています。

みんなで一緒に食べるからもっと美味しく!「共食」「共有」「共感」がポイント。

後編では具体的な食材選びや調理のコツなどをご紹介!

この前編では、子どもたちが「やってみたい」「食べてみたい」というようなきっかけをつくり、食への興味を持たせるコツを主に紹介しました。
後編では、具体的な食材選びや調理のアドバイスなどもお伝えしますので、ぜひ続きもご覧ください。

取材協力:社会福祉法人 あおば福祉会「おひさま岡町保育園」(大阪府豊中市)
http://www.ohisamaokamachi.jp/

撮影:井原 完祐

石原 かんな

いしはら かんな

ライター・エディター

京都育ち、大阪在住のフリーライター。少しお調子ものでマイペースな男児の母。人物取材、グルメやファッションの取材撮影、企業や学校関係など分野は問わず活動中。美味しいもの、人生を楽しむこと、一生懸命に生きるひとに興味津々。世界中でいちばんお気に入りの場所は、京都の「鴨川べり」。