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HEALTH 2020.02.20 石原 かんな

【がんばり過ぎない食育】「歯科医・歯科衛生士」さんが教える口の健康づくり(前編)

「歯」の視点から考える、子どもの「健康」と「食」

子どもへの食育のコツやアドバイスを紹介する【がんばり過ぎない食育】シリーズ。

今回は、大阪府豊中市の住宅地にある「ふじたか歯科クリニック」を訪問。日々、小さなお子さんからお年寄りの方まで通われているこの歯医者さんでは、先生や歯科衛生士さんがとても丁寧に診察されていたり、スタッフさんが患者さん一人ひとりに親切に対応されている様子が垣間見えます。

その院長であり歯学博士の藤髙英晃先生と、食育アドバイザーの資格を持つ主任歯科衛生士の山下礼子さんに、歯への想いから食育のコツまで、ねほりはほり伺ってきました。

Q.まずは、歯科医としての「歯」への想い、お子さんを持つ親御さんへの想いについてお聞かせください。

A.「健康的な口をつくる」ことが大事。そのためにも親子での「仕上げ磨き」の時間を大切にしましょう。

私たちは「健康的な口をつくる」ことをめざして診察や治療を行っています。人間は毎日、口から食べ物を取り込んで体をつくっていますが、自分自身の歯で生きることは全身の健康にもつながりますし、何よりも、美味しいものを食べられること、それは楽しく生きることにもつながっていくからです。
そのためにも、お子さんのいるお父さんやお母さんには歯への関心をもっと持っていただきたいですね。まずは「歯が痛くなってきたから歯科医院に行く」前の「予防」を大事にしていただくように呼びかけています。
そして、お子さんの歯を健康的に保つために大切なのは、やはり「仕上げ磨き」です。これは、お子さんと親御さんのコミュニケーションの手段にもなり、大切なスキンシップの時間となります。忙しい親御さんでも一日数回の歯磨きはできますよね。歯磨きを当たり前の習慣にすると、お子さんがもっと成長しても歯磨きをすることが苦痛になりません。お子さんとの遊びの延長のように仕上げ磨きを続けることは、未来の口の健康につながるのです。

お話を伺った「ふじたか歯科クリニック」の藤髙英晃先生。

Q.仕上げ磨きはいつ頃までやるとよいのでしょうか?

A.小学校高学年まで続けていただきたいですね。

お子さんが大きくなってくると、なんとなく恥ずかしくて親御さんに仕上げ磨きをさせたくないお子さんも出てくると思います。でも、仕上げ磨きをしなくなった頃から虫歯は急激に増えたりするものです。つまり、自分でキレイに磨けていないんですよね。
歯磨きで大切なのは、回数よりも「きちんと磨けている」こと。そのためにも、お父さんやお母さんの仕上げ磨きは有効です。歯磨きは、大人でも自分では完璧にできないものですので、小さな頃から仕上げ磨きの習慣をつけることは本当に大事なんですよ。
極端なことを言いますと、歯が無くなったら歯医者に行っても仕方ないですよね。そのためにも幼い頃からの習慣づくりを大切にしていただきたいと思います。

Q.仕上げ磨き以外に、口の健康をつくるためのアドバイスはありますか?

A.「予防のための歯科通い」を習慣化してください。

今は1・2歳頃に初めてフッ素塗布にいらっしゃるお子さんも多いです。毎日の歯磨き習慣はもちろんですが、歯医医院に通うことを数カ月に1度の習慣にするのも良いことだと思います。例えば、初めて歯医医院に来るお子さんは「何をされるのだろう?」と泣くことも多い。でも、フッ素塗布や歯科検診は痛くないものなので、お子さんが慣れやすいんですよね。一方で、虫歯治療などの痛い治療から始めてしまうと、「歯医者さんは怖い」となってしまい余計に行きたくなくなる。すると、歯が痛くなっても我慢して歯科医院に行かなくなってしまう…。そんな悪循環が生じて、どんどん虫歯が進行してしまいます。
実は、歯への関心が低い親御さんのお子さんは虫歯が多いと感じています。お子さんがずっと自分の歯で食を楽しめることを願って、今以上に歯に関心を持っていただきたいと願っています。

幼い頃から歯医者さんに慣れておくと、虫歯も予防できやすくて安心だとか。

Q.ちなみに、虫歯のなりやすさは遺伝するのですか?

A.遺伝しません。でも、虫歯菌は親から子へ伝わるかも?

親から子へ遺伝するのは、歯の質や顎の形など。虫歯のなりやすさは遺伝しないのです。と言っても、虫歯菌は食べかけの食べ物や食器を経由するなど、何らかの形で伝わることもあります。
ただし、虫歯菌は決してダメなものではないです。それよりも、虫歯菌が住まない環境にすることが大切です。そのためにも「歯磨き」と「唾液」は大切です。特に唾液は、「天然の抗菌剤」とも言われているんですよ。

Q.では、「唾液」の働きについて詳しく教えてください。

A.「唾液」には口の健康に欠かせない役割がたくさんあります。

唾液は、口の中で以下のような働きをします。
●口を清潔に保つ:食べかすや細菌を洗い流し、口を清潔に保つ自浄作用が。唾液が減り、口の中が汚れがちになると細菌が繁殖しやすくなり、虫歯や歯周病などにかかりやすくなります。
●口の粘膜を守る:ネバネバ成分が粘膜を保護します。粘液の潤いが減ると、傷ついて口内炎などになりやすくなります。
●口の中を中性に戻す:酸性に傾いた口の中を中性に戻します。
●歯を補修する:唾液中に溶け出した歯の成分が唾液から歯に戻り、歯が補修されます(再石灰化)。
●細菌感染から守る:唾液の自浄作用と、唾液中のIgAやラクトフェリンなどが口内の細菌の活動を抑制します。
●食べ物をまとめる:細かくかみ砕かれた食べ物を飲み込みやすくします。
●消化を助ける:唾液中のアミラーゼがデンプンを分解し、消化を助けます。
●味を感じさせる:食べ物の成分が唾液に溶けることで、味を感じやすくなります。
他にも、唾液にはカラダの中で感染症を予防したり、食道や胃の粘膜を保護するなどの働きがあります。お口の健康は体全体の健康にもつながり、食を楽しむためにも欠かせないということを認識していただきたいと思います。

後編では、虫歯を防ぐためにも重要な「唾液を出す」コツなどをご紹介!

この前編では、歯科医の観点から健康的な口をつくるためのアドバイスや、「天然の抗菌剤」と呼ばれる唾液のお話などを伺いました。
後編では、この唾液を出すためのコツや「噛む」ことの重要性などを具体的にお伝えしますので、ぜひご覧ください。


取材協力:ふじたか歯科クリニック(大阪府豊中市)

https://www.fujitaka-dc.com/

撮影:井原 完祐

石原 かんな

いしはら かんな

ライター・エディター

京都育ち、大阪在住のフリーライター。少しお調子ものでマイペースな男児の母。人物取材、グルメやファッションの取材撮影、企業や学校関係など分野は問わず活動中。美味しいもの、人生を楽しむこと、一生懸命に生きるひとに興味津々。世界中でいちばんお気に入りの場所は、京都の「鴨川べり」。