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【がんばり過ぎない食育】「高槻しいたけセンター」でできる原木育ちのしいたけ狩り

石原 かんな

ライター・食育インストラクター

【がんばり過ぎない食育】「高槻しいたけセンター」でできる原木育ちのしいたけ狩り

石原 かんな

ライター・食育インストラクター

肉厚プリプリの“しいたけ”が 年中収穫できるスポットへGO!

簡単にはじめられる子どもへの“食育”のコツやアドバイスを紹介する【がんばり過ぎない食育】シリーズ。
前号では、保育園に勤める管理栄養士さんから「お子さんと一緒に野菜を育ててみるのもいいですよ!」というアドバイスをいただき、今号ではそれをヒントに、子どもの食育にぴったりと思われる関西の名スポット「高槻しいたけセンター」を発見。
しいたけ狩りができるのはわかるけど、実際にはどんな風に採れるの?子どもでもできる?採れたしいたけの味は?料金は?そんな疑問も抱えつつ、わくわくと遠足気分で向かってみました!

「原木しいたけ」を長年栽培してきた 渡邊家にゆかりのある場所

大阪府高槻市の中心街から車で約30分。自然豊かな山道をドライブしていると、ふと現れるのが「高槻森林観光センター」。その中に「高槻しいたけセンター」の施設があります。高槻と言ってもここは標高約300m、市街地に比べると3~5℃程涼しいのだとか。
当施設の代表であり、原木しいたけを栽培しているのが渡邊美広さん。「この辺りは祖父の代から家業を行ってきた大切な場所なんです」と。その昔、祖父は炭焼きを生業に、父は原木しいたけの栽培と市場出荷をされていたとか。しかし、安価な菌床しいたけが市場に出回ることで原木しいたけの出荷が減り、父上が「原木しいたけの収穫を一般の方に楽しんでいただきたい」、また「原木しいたけの良さを広めたい」と奮起して1977年にはじめられたのが、ここ高槻しいたけセンターなのです。
そんな父上の意志を受け継ぎ、2000年より世代交代。美広さんが後を継がれることになりました。

お話を伺った、高槻しいたけセンター代表の渡邊美広さん。

小さい子どもでも大人と一緒に 簡単に収穫できるしいたけ

高槻しいたけセンターでできること。それは、まさに“しいたけの収穫”。
特に、しいたけがたくさん採れる秋の休日には溢れんばかりの人々が訪れて、しいたけを収穫しては家に持ち帰ったり、隣にあるレストランでバーベキューをしたり。気軽な“食育”にも良さそうですが、お子さんには難しくないのでしょうか。
「毎年、幼稚園や保育園からもたくさんいらっしゃいますよ。しいたけの収穫は簡単で、根元をしっかり持ってひねれば採ることができます。私たちも収穫に最適なしいたけを採りやすい場所に置くように工夫しているので、小さなお子さんとお父さんやお母さんは、ぜひ一緒に収穫していただきたいですね」と美広さん。
なるほど、これは食育にぴったりですね!

「どれを採ろうかな~」と考えるのも楽しいのが、しいたけ狩りの醍醐味。

美広さん曰く、「大人の方だけでなく、お子さんに収穫を楽しんでもらえているのは喜ばしいことです。特にお子さんは自分で採ったものが大切で、それを持ち帰りたいものじゃないですか。だから、もともとしいたけ嫌いのお子さんでも、家に持ち帰って料理したり、レストランで焼いたりすると食べちゃう。そういう話を聞くと私たちも嬉しい気持ちになりますね」。
ちなみに、高槻しいたけセンターは無料で入園でき、予約も不要で、採った分だけ購入できるシステム。100gあたり300円とお手頃なのでお財布にも優しいのです。

ズラリと並ぶ原木としいたけの様子は圧巻!まだまだ奥まであります。

そもそも「原木しいたけ」って何? スーパーで売っているしいたけと違う?

では、そもそも「原木しいたけ」と「菌床しいたけ」の違いとは何でしょうか。
スーパーなどに出回っている菌床しいたけは、簡単に言うと「人工栽培」でつくられるしいたけのこと。おがくずを固めたブロック(菌床)に種コマを打ち、湿度の高い真っ暗な室内で発生を促して育て、人工的に養分を与えることで次々に収穫することができます。
一方、原木しいたけは、菌(種コマ)を打ち込んだクヌギなどの原木に菌糸をまわらせ、しいたけを浸水発生させる完全な無農薬栽培です。まず、菌が蔓延するまで木を寝かせておく「仮伏せ」をし、その後、木を井桁状に組み直して待つ「本伏せ」。そして、菌糸が十分に蔓延した木を水槽に「浸水」させ、しいたけ狩りスペースに運んでしいたけを発生させる…。高槻しいたけセンターでは、浸水用の水も山の自然水を使用しています。まさに、自然の力を最大限に利用し、水を与えるとしても人工的に養分を与えることはないのが、原木によるしいたけ栽培なのです。

センターの奥の奥には、休養中の木が心静かに待っています。

高槻しいたけセンターでは、一本の原木で最初の年は6~7回程収穫でき、その後は約1年間休ませて、また1~2回程採ると終了するとか。
美広さんによると、「原木でしいたけを育てることはなかなか難しく、正直大変です。実は毎年1万本程に菌を植えています。全体では2~3万本ぐらい管理しているでしょうか。でも、農薬や肥料を全く使わない野菜を食べる機会って皆さんなかなかないと思うんです。それが、ここならできるようにしたいという気持ちで続けています」。

また、原木しいたけの畑であるクヌギやコナラの木は、伐採してもすぐに新しい芽が出て若い森に。原木の適度な伐採は森の新陳代謝を促し活力を高めるのだそうです。
ただし、最近ではなかなか良質な原木を手に入れるのも難しくなってきているようで…。
「原木によるしいたけ栽培は、林業とも深く関わっています。お互いが助け合うような関係性と言うのでしょうか。少し大きくなったお子さんには、そのようなことも一緒に理解してもらう機会になればいいなと思います」。

自然の持つ力だけで強くしなやかに成長した、安心で安全なしいたけ。

プリップリの歯ごたえがあるしいたけは 無農薬で安心安全、塩だけで美味

さて、美広さんをはじめとするスタッフの皆さんが、子どものように大切に育てたしいたけをカゴに収穫。それを家に持ち帰るも良し、隣のバーベキューレストランでいただくのも良し。というところですが、今回は、特別に施設内で焼いていただくことに。

カゴに好きなだけ収穫。これぐらいで約200円でした!

「原木しいたけは風味が良いので、お塩やお醤油だけで食べていただきたいですね」と美広さん。
しいたけを裏返し、ひだを上にして塩をパラパラと。確かに、網焼きするだけで良い香りが漂うこと数分。パクリといただくとしっかりとした噛みごたえがあり、とっても肉厚。普段よく食べている菌床しいたけのプニプニ、ペシャッとした感じではない満足感があります。

しいたけの水分がじわじわと。湯気が上がると食べ頃。

そして、原木しいたけのもうひとつの良さは、安心・安全なこと。菌床しいたけでは栄養剤や殺虫剤などが使われることもあるなか、美広さんの原木しいたけでは農薬や化学肥料を一切使っていないので、安全性が大きな特長だとか。
「最近では地域の特産品として取り上げてもらっています。『たかつき土産』に認定された『しいたけカモ!?』というしいたけと合鴨肉の佃煮もオススメですし、乾しいたけなども販売しています。ここを観光拠点に、皆さんには色々な自然体験をしていただきたいと思っています」。

なお、しいたけ狩りができるスポットは大抵、秋などの季節限定が多いですが、ここ高槻しいたけセンターでは年中しいたけが収穫できるのも嬉しいポイント。
自分でしいたけを採って、焼いて、食べる!
ぜひ今度のお休みには、お子さんと一緒に気軽な“しいたけ狩り”に出かけてみてはいかがでしょうか。

取材協力:高槻しいたけセンター(大阪府高槻市)

https://www.kinokos.net/

撮影:井原 完祐