日本には、ご飯と汁物、香の物に、煮ものや魚のみならず多様な料理を組み合わせる一汁三菜の伝統的な食の形式がある。ご飯の淡泊な味わいは、古くからある日本の料理や食材だけでなく、様々な国の食文化を副食として取り込むのに適している。これは肴を選ばない日本酒とも共通の特性と言えよう。現在の日本の食卓には、これまで日本になかったような食材や料理が次々に現れる。これら海外から輸入された料理や食材は、自然に日本的な味わいの料理にアレンジされて定着している。副食や肴を何でも受け入れる包容力に満ちた日本の食文化のパターンは現在も生きている。
2000年9月に味の素社によって5000人を対象とした大規模な日本人の食噌好調査が行われた。この調査によると、日本人が好む主食の1位は白米のご飯であり、地域、年齢、性別を問わず、約8割の人が好んでいる。2位が握り寿司。ご飯もののメニューに対する人気は非常に強く、炊き込みご飯、おにぎり、ちらし寿司、カレーライスが上位10メニューにランクインしている。ご飯以外では、4位にラーメン、8位にうどん、9位に日本そばが入る。この10年後に行われた調査として、朝日新聞の読者を対象としたアスパラクラブ欄による嗜好調査がある。 ラーメンとカレーライスの他に何が好きかという読者調査であるが、味の素社の5000人の調査結果と比較しても、日本人の好きな食の傾向は変わっていない。
米の摂取量は低下傾向にあるといわれてきた。実際に、1960年代にくらべて国民1人あたりの米の年間消費量は半分にまで落ち込んでいる。しかし、少なくとも2000年調査の時点では、日本人のご飯好きは明らかであり、今も変わっていないようだ。日本人がご飯離れしているとは必ずしも言えない。
日本の主食は、依然としてご飯なのである。日本人のカロリー摂取は今も高くない。副食が多様化して食べる量も増えていることで相対的にご飯の消費量が減っているのが、現代日本の状況であろう。
ユネスコの世界文化遺産登録の影郷もあって、最近は日本のみならず世界的な和食ブームといえる。米の消費が持ち直してくれるきっかけになれば喜ばしいことである。
出典「互助組合報」(2014.10.10号)