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熱力学的ダイエット論 その5 ー寝る前に食べると太る?ー 【第1弾】

伏木 亨

龍谷大学名誉教授、農学博士

熱力学的ダイエット論 その5 ー寝る前に食べると太る?ー 【第1弾】

伏木 亨

龍谷大学名誉教授、農学博士

「寝る前に食べたら太るかって? あたり前でしょ」

もう世界の常識になっている感がある。疑う人はいないかもしれない。しかし、その根拠がどこにあるのかというとかならずしもはっきりしないのだ。

夜中に食事をすると太ると感じるのは、人間は夜中にエネルギーをあまり使わないからだろう。いくらあなたが寝相が悪くて夜中に寝室を一周するほどの猛者だとしても、障子が震えるほどいびきが強烈でも、就寝中のエネルギー消費は意外に少ない。だから寝る前に食べると、使えないエネルギーをとったのだから体脂肪になりやすいのではないかと感じやすい。

活動しない夜中に食べたら太るというが・・・

いつものように、1日の食事量は一定という前提で考える。同じ量を夜中に多く食べるのと日中に多く食べるのとでは、どちらが太るかという比較である。
夜中に多く食べて日中に食べなければどうなるのか。夜の食事は体に蓄積される。しかし、昼間、活動のエネルギーが必要なときには少ししか食べないのだから、昼間に体脂肪が使われて差し引きゼロではないかとも考えられる。
昼に食べるのと夜に食べるのと、同じ食事量で同じ運動量ならば結果はほぼ同じになるのではないか。もしも食べ方によって体脂肪の蓄積量が違うのならば、そのエネルギーの差はどこから生まれるのか。あるいはどこに消えるのか。そんな説明は誰もできないはずだ。だから、夜中に食べると太るという明快な説明にはならない。

体内時計のたんぱく質が発見された

最近の研究で、体内の時計を形成しているたんぱく質であるBmal1が発見された。動物の体には時計の役割を果たす機構があって、たとえば夕方になったら体が食事の摂取に同調して体じゅうの代謝系を活性化する。そんな毎日の繰り返しが体内時計で調節されている。体内時計の発見は、夜中に食べたら太るかどうかにもかかわる問題である。余分なカロリーを体脂肪としてため込む脂肪合成酵素群は夜に活性化されるのだろうか。

出典:女子栄養大学出版部「栄養と料理」