龍谷大学瀬田学舎の開学30周年を記念して「ベジタブル料理コンテスト」が2019年10月26日(土)に開催されました。「京野菜や近江野菜を使う1汁3菜のレシピ」を、高校生以上の社会人・アマチュア・プロ問わず1チーム3名までで広く募り1次審査が行なわれ、次に進む7チームを9月上旬に決定。
そして優勝を決める2次審査は、「龍谷祭」開催中で賑わう龍谷大学瀬田キャンパス、9号館にて行なわれました。各チームが知恵を絞り考えた野菜を活かすメニューを実際に調理して、料理研究家の大原千鶴さんなどの審査員にプレゼンテーション。食欲の秋にふさわしいコンテストとなりましたが、さてその優勝者とは?
開会の挨拶を終えたらすぐさま調理室へ移動する7チーム。今回は、京野菜・近江野菜を1つ以上使うだけでなく、「ダシ以外で動物性の食材は使用しない」という決まりもありました。約2時間で1汁3菜を4名分作るという調理時間は、慣れない調理室で、どこに何があるのか、初めてのガスレンジで火加減をどうするかなど不安を抱えて進みながらも、互いに相談しコミュニケーションをとり行なわれていたのが印象的。手順を少し間違えたり、時間を勘違いしたりと、チームごとにアクシデントはあったものの、それぞれの個性を発揮され、いずれも調理を終え出来上がった瞬間は達成感のある笑顔がこぼれていました。
母は強し!を感じる西浦家のお母さんに、管理栄養士の娘さん、「せめて一品だけでも責任持って作ります」と笑いながら話すお父さんの3人によるファミリーチーム。最近の事件などのニュースを見ると心が痛むというお母さんを中心にして、幸せホルモンのセトニンが分泌されるようなレシピを構成。食物繊維がたっぷりとれる料理を考えられました。
●料理は…賀茂茄子の油淋鶏ソース・万願寺とうがらしの胡麻昆布和え・トマトと生麩の寒天・アボガドの豆乳スープ・梅生姜のもち麦ご飯
●野菜は…賀茂茄子、長ネギ、にんにく、シャインマスカット、しょうが、万願寺とうがらし、トマト、アボガド、玉ねぎ
料理に関わる仕事をしている女性たちが参加。実は、有名なスープ専門店で2018年に一緒に店を任されたという仲間で、ご褒美のご飯は必ず中華料理だったことが、今回のレシピに繋がったそう。「自分たちにとってこういう機会は新鮮で、レシピを考えることも調理をすることも楽しかったです」と参加したことが刺激に!
●料理は…ベジタリアン餃子・ブロッコリーの中華風スープ・枝豆とザーサイの白和え・秋野と菜のさっぱり揚げ浸し
●野菜は…しょうが、にんにく、玉ねぎ、キャベツ、干ししいたけ、にんじん、わさび菜、といらねぎ、伊吹大根、ブロッコリー、エリンギ、枝豆、下田なす、かぼちゃ、れんこん、杉谷とうがらし、みょうが
関東方面から縁あって参加された2人。千葉県の食品に関わる企業で上司と部下という間柄の二人が「おもしろそう」と応募。今回は、京野菜をたっぷり使った見た目の華やかさにこだわり、健康も考えてレシピづくりをしたという「大人のお子様ランチ」を作られました。
●料理は…お揚げのコロッケ風・ラタトゥイユ・春菊と京こかぶのポタージュ・キャロットラペ
●野菜は…九条ネギ、れんこん、京かんしょ、トマト、下田なす、春菊、京こかぶ、京人参、伏見とうがらし
まだ十代の若き料理人の卵。イタリアンを専攻する料理専門学校に通う仲間で応募されました。入学した4月から約半年の成果を試してみたいと挑み「野菜を使うので下準備がなかなか大変でした。大麦を使う料理Insalata di orzo peratoは、豆乳のチーズなど使ってみたかった食材も使いました」と話し、見た目もおいしそうな料理を披露しました。
●料理は…Zuppa di zucchine・Caponata di verdarakyoto・Insalata di orzo perato・Melanzane shimoda alla griglia
●野菜は…ズッキーニ、玉ねぎ、赤パプリカ、黄パプリカ、緑パプリカ、下田なす、セロリ、万願寺とうがらし、トマト、ニンニク、赤とうがらし、マッシュルーム、ハーブ各種
有名な料理大会で優勝もしている洛星高校の料理研究部。今年入部した高校1年生の3人が「この大会は自分たちにとって良い経験になりそうだ!」と応募。ルーマニア料理のサラタ・テ・ピネテを味噌田楽に仕立てたり、フランス料理のヴィシソワーズをシジミの味噌汁風にしたり、独創的なレシピで勝負し「2時間なんてあっという間でした」と、初コンテストを終えました。
●料理は…秋の炊き込みご飯・シジミと赤味噌のヴィシソワーズ・小鮎の南蛮漬け・サラタテビネテ味噌田楽・水菜と干瓢のおひたし
●野菜は…れんこん、サツマイモ、にんじん、玉ねぎ、じゃがいも、白ねぎ、万願寺とうがらし、聖護院だいこん、鹿ケ谷かぼちゃ、下田なす、大葉、にんにく、水菜、水口かんぴょう、しめじ
日夜、おいしい食べ物のことを考える龍谷大学生3人が行きついたのは、誰でも馴染みのある食べやすい中華料理。「動物性のものが使えないから湯葉を使う天津飯だったんですけど、味わいを硫黄っぽい玉子に近づけるためにカーラナマック(ブラックソルト)を使いました」。また「何より自分たちが思いつかなかったことも知れた」と、今回のことが良い勉強になった参加の喜びを語りました。
●料理は…涼拌三菜(三種の野菜ナムル)・三絲湯(三種の糸切り野菜のスープ)・乾焼茄子(茄子のチリソース煮)・天津飯
●野菜は…もやし、にんじん、空心菜、賀茂茄子、白ねぎ、にんにく、しょうが、キュウリ、椎茸、九条ネギ、紫ずきん
高校1年生から3年生まで各1人ずつで参加した料理好きな3人は、学校で京野菜を栽培。「京野菜の固定種を絶やさないためには使うことが大事で、もっと世界の人にも知ってほしい」と、料理を完成。レシピづくりでは、学校でお世話になった京たけのこを栽培するファームの孟宗竹による「メンマ」に注目し、5種を作りこんで応募されました。
●料理は…金時にんじんのおいなりさん、特製豆腐ハンバーグ、京水菜の白和え(ゴマ風味)、里芋、九条ねぎの京子カブおろし味噌汁、不思議なメンマ
●野菜は…れんこん、金時にんじん、賀茂茄子、玉ねぎ、ほうれん草、里芋、九条ねぎ、メンマ、しいたけ
コンテストの審査は、特別審査員にNHK「きょうの料理」に出演する料理研究家の大原千鶴氏さん、ミシュラン3つ星料亭の「一子相伝なかむら」店主の中村元計さんをお招きし、龍谷大学の藤原直仁副学長ほか7名が務めました。
総評としては、大原さんから「お野菜だけというところでとても工夫をされたレシピばかり。自分たちの生活や日々が見えるのが料理ですから、決して順位は関係ないし、最優秀を決めないといけないのは辛いですね。今回は、自分の想像をはるかに超えるレベルの高いコンテストでした。」と締めくくりました。そして、優勝と準優勝は……
準優勝は「うんとこさ」。老舗料亭(菊乃井、木乃婦、新月、美濃吉竹茂楼から選べる)5万円分のお食事券がプレゼントされ、お二人は「野菜っていろんな食べ方があると知れて本当に良かったです、ありがとうございました」とコメント。
優勝は「桂高等学校」。老舗料亭10万円分のお食事券をプレゼントされ「みんなで数回に渡り練習し何度も何度も同じものを食べては違いを知り創意工夫をしました。最後の試作も、豆腐ハンバーグといなりずしの味が安定しなくて不安だったけれども上手くいった」と、努力の甲斐があったと語った3人。老舗料亭は菊乃井など4軒から選べますが、最年少の女の子に決めてもらうそうです。
SDGsを促進するベジタブル料理として、京野菜・近江野菜を1つ以上使用した料理コンテストで、日本の伝統ある食文化「1汁3菜」を、野菜を主役にして創作。このコンテストは、想像力の素晴らしさに感動する時間でした。