TOP / Culture / 家庭料理研究家 山上公実さんに聞く お手軽保存食
家庭料理研究家 山上公実さんに聞く お手軽保存食

山上 公実

家庭料理研究家

家庭料理研究家 山上公実さんに聞く お手軽保存食

山上 公実

家庭料理研究家

おうちで過ごす時間が増え、家族で一緒に食事する機会が増えている昨今、家庭料理のあり方が見直され始めています。できるだけ手間は省きたいですが、栄養はしっかり摂りたい。そしてできるだけ保存できるものの方が外出頻度も減って重宝しますよね。

そこで今回は「保存食」「家庭料理」をテーマにご紹介したいと思います。

■家庭料理研究家 山上さんを訪ねて 三条大宮にある「キッチンみのり」へ

今回お邪魔したのは三条会商店街の近くで家庭料理や保存食を作る料理教室や暮らしに役立つワークショップを開催されている「キッチンみのり」。こちらを主宰されている山上公実(やまがみひろみ)さんに保存食について伺い、おすすめレシピなどを紹介していただきます。

京都の街並みに溶け込む立派な町家が目印です。

主宰の山上さんは、三条会商店街内にある乾物や鮮魚を取り扱う老舗食料品店に生まれ、大学卒業後商社に就職。様々な経験をする中で「料理が好き」という想いから飲食店に転職し、おばんざい作りなどを担当することに。
その後諸事情でそのお店は閉店することになるのですが、常連さん達から料理の作り方を教えてほしいと頼まれ、自宅で小規模な料理教室を始めるとそれが徐々に話題となり、新聞の連載も始まり、カフェなど広い場所でも教室開催するようになっていきます。
そして2016年11月3日、この地で「キッチンみのり」をオープン。今は週2回ほど教室を開催する傍ら、料理研究、雑誌などの取材対応など忙しい日々を過ごされています。

趣向を凝らした教室はいつも予約で一杯。かつお節削り器をキット化した教室は子供にも人気だそう。

■保存食って

山上さん「保存食とは長期間にわたり常温で美味しく食べられる食品のことです。塩で水分を抜いたり、干したり煙でいぶしたりして保存性を高めます。本当に様々な保存食があるのですが、やはり梅干しとお味噌は基本で重宝しますね。」

20年前に農家の女性から味噌作りを教わって以来、毎年様々なお味噌作りを続けられています。

珍しい豆麹を使った味噌

山上さん「お味噌作りは豆をつぶして米麹や麦麹と塩を合わせたらできるので、簡単ですよ。豆麹が手に入れば豆味噌作りや、甘みを出すため麹を2.5~3倍使って早く発酵させる白味噌作りなんかもいいですね」

山上さん「和歌山の紀の川市で梅を栽培している友人がいるので、ゲストに呼んで梅干しや梅シロップの作り方、梅を使った料理を教える「梅の会」という教室もしています。」

毎年6月に仕込む梅干し

大きく立派で、見るからに美味しそうな梅。

ちなみに梅干しの種を取り、梅をたたいてみりんと砂糖を合わせペーストにすると様々な食べ物に合う調味料が出来るそうで、なんと一年以上保つそうです。

■お手軽な保存食レシピ紹介

それではおうちで簡単にできる保存食レシピを二つ紹介します。
一つ目は野菜たっぷりの【ミックスピクルス】。

素材
黄パプリカ(1個)、カリフラワー(1/2株)、きゅうり(1本)、セロリ(1本)、にんじん(1本)にんにくスライス(1かけ分)、赤唐辛子(2本)、ローリエ(2枚)、ディル(1房)

ピクルス液
酢と水を400mlずつ、きび砂糖or上白糖(大さじ8)、塩(大さじ2)

作り方も簡単です。
① 野菜カット…黄色パプリカとカリフラワーを食べやすい大きさに、きゅうりとセロリは2㎝幅に、にんじんは5mmの輪切りにする。
② 下準備…鍋に湯を沸かし、カリフラワーとにんじんをさっと茹で、ざるに上げて冷ます。
③ ピクルス液作り…酢、水、砂糖、塩、にんにくスライス、赤唐辛子、ローリエ、ディルを鍋に入れ火をかけ、砂糖が溶けたら止めて冷ます。
④ 完成…保存容器に野菜を入れ、③のピクルス液を加えて完成。
※半日ほど漬けてからいただけます。冷蔵庫で10日ほど保存可能。野菜はブロッコリーやレンコンなどでもOK。

山上さん「結構ボリュームもあるのでご家族が多いご家庭向きです。少人数なら、料理で残った野菜を使って、少量で作るのもおすすめです」

二品目は【いわしの佃煮】です。

素材
いわし(8~10尾)、しょうが(1かけ)、粉がつお(大さじ3)
酒(200ml)、きび砂糖(大さじ3)、しょうゆ(大さじ4)
作り方
① 下準備…包丁の背でいわしのうろこをとり、頭を落として3~4等分にぶつ切りする。内臓を取り出して水で洗いキッチンペーパーで水気をふきとる。しょうがは皮付きのまま千切りにする。
② 煮る…鍋にしょうが、酒、きび砂糖、しょうゆを入れて煮立たせ、いわしを並べ、ひと煮立ちしたら中火にし、落しぶたをして途中何度か煮汁をかけながら20分ほど煮る。
③ 煮詰める…落しぶたをとり、煮汁が少なくなるまで煮詰める。
④ 完成…火を止めてそのまま冷まし、粉がつおをまぶす。
※冷蔵庫で一週間ほど保存可能。

山上さん「粉がつおをまぶし、濃いめの味付けなので、ごはんのおともにぴったりです。2品とも冷蔵保存ですが、作り置きしておけるものとしてご紹介させていただきました。」

■最後に~家庭料理を美味しく楽しく健康的に~

山上さんのモットーは「家庭料理を美味しく楽しく健康的に」。普段作られている保存食の一部を見せていただきました。

豆板醤、ゆず胡椒(橙こしょう)、にんにく味噌、へしこなど実に多彩で、いずれもご飯のお供だけでなくお酒にも合うものばかりです。

裏のお庭では乾物作りの真っ最中。

料理教室に使えそうなハーブなどが沢山。

山上さん「意外と知らない方も多いのですが乾物は水につけておくだけで戻るので、実はすごく便利。干し大根や干しにんじんの天日干しもおうちですぐに実践できますよ」
と終始楽しそうに語る山上さん。

簡単に作ることができ、長期間保存も可能な保存食。そこには日本人が古来より培ってきた知恵と和の食文化を垣間見ることができますし、なんといっても想像以上に楽しい。気になる方は味噌作りから始めてみてはいかがでしょうか。

取材協力:キッチンみのり http://kitchen-minori.com/
京都市中京区大宮通三条上ル姉大宮町東側102