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イギリス料理はまずい!?シェイクスピアが愛したイングリッシュ・ブレックファスト

吉村 征洋

龍谷大学農学部准教授、博士(文学)

イギリス料理はまずい!?シェイクスピアが愛したイングリッシュ・ブレックファスト

吉村 征洋

龍谷大学農学部准教授、博士(文学)

イギリスでは、1日3食をすべて朝食にすべき

皆さんはイギリスの料理について、どのようなイメージを持っていますか。
フィッシュアンドチップスやローストビーフなど、イギリス料理の代表例は思い浮かぶと思いますが、それ以外の料理は一般的にあまり知られていません。
また料理の味に関しては、「イギリス料理はまずい」とよく耳にするのではないでしょうか。そのため、イギリスの小説家サマセット・モームは、「イギリスでおいしいものを食べるなら、1日に朝食を3回とるべきだ」と言っています。

イングリッシュ・ブレックファスト協会によれば、イギリス式朝食の代名詞である「イングリッシュ・ブレックファスト」は、ベーコン、卵、ソーセージ、ベイクド・ビーンズ、バブル&スクイーク(お好み焼きのようなもの)、焼きトマト、フライド・マッシュルーム、ブラック・プディング、フライド・ブレッド、トーストで構成されています。
ちなみに、朝食を表す英語 “breakfast” は、「break=破る」と「fast=断食(する)」という2語から成り立っていて、「(前日の夕食以降)断食した状態を破る食事」という意味を表しています。

朝食に思い入れがあるシェイクスピア

現在のイングリッシュ・ブレックファスト文化は、20世紀初めのエドワード7世時代に形成されたといわれていますが、シェイクスピアが生きた時代のイングランドの朝食はどのようなものだったのでしょうか。
当時のイングランドでは、階級によって朝食の内容は異なっていました。労働者階級の人々は朝早く起きて労働していたため、たいてい朝食を食べていたようですが、貴族階級の人々は労働のために早起きする必要がないため、朝食を食べないことが多かったようです。
貴族階級の人々が朝食を食べる場合、食卓に着席しながら優雅に小麦から作られたパンやチーズ、フルーツ、野菜、スープなどを食していましたが、階級の低い人たちはライ麦パンやオートミール、あるいは前日の残り物などを食べていました。

実はシェイクスピアが朝食を食べていたのか、もしくは朝食で何を食べていたのかについて、記録がほとんど残っていないため、あまり明らかになっていません。しかし彼の作品を見ると、朝食に言及する箇所が散見されます。
例えば、『ヘンリー4世第1部』ではフォルスタッフが、“go, make ready breakfast”や “Hostess, my breakfast, come!” (太字は筆者)と言っています。あくまでも推測ですが、シェイクスピアが作品の中で何度も朝食に言及しているのは、もしかすると朝食に対して何かしらの思い入れがあったからなのかもしれませんね。

(ロンドンにあるグローブ座)

(グローブ座にあるフォルスタッフ像)

<参考文献>
川北稔『世界の食文化〈17〉イギリス』農山漁村文化協会、2006年。
The English Breakfast Society. “The Traditional Full English Breakfast.” <https://englishbreakfastsociety.com/full-english-breakfast.html>