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ケバブ、パン、魚料理…トルコの豊かな食文化に迫る

林 則仁

龍谷大学国際学部 准教授、博士(国際文化学)

ケバブ、パン、魚料理…トルコの豊かな食文化に迫る

林 則仁

龍谷大学国際学部 准教授、博士(国際文化学)

トルコは「東西の文化が交差する国」として知られています。
実際、トルコ共和国は西アジアのアナトリア半島から東ヨーロッパのバルカン半島にまたがる広大な国土を有し、ヨーロッパとアジアの両州にまたがっている国です。そして、その両州をつなぐのは大都市イスタンブル。ここは古代からビザンツ帝国の都として長らく地中海交易の中心として栄えました。15世紀以降はアジア、アフリカ、ヨーロッパの各地を征服したオスマン帝国の都として発展し、時代ごとに各地域の文化が流入することで豊かな食文化が形成されてきました。

つまり、トルコ料理は歴史的にも、民族的にも、地理的にも多様な地域の食文化が融合されてできあがったものです。そのため、現代のトルコではさまざまな素材、味、調理法に出合うことができます。私はイスラーム美術の研究調査のため何度もトルコを訪れ、トルコ人の研究者たちと一緒に食事をしていますが、トルコ料理は何を食べても本当に美味しいです。

ケバブはやっぱり大定番

トルコの代表的な料理といえば、肉や野菜などを焼いて食べる「ケバブ」。日本では、薄切り肉をかたまりにして回転させながら直火で炙り焼きする「ドネル・ケバブ」(アラブ圏では「シャワルマ」)が有名ですね。トルコでは「ピデ」というピザ風パンの上にのせて食べることが多いです。

トルコのケバブは羊肉が中心ですが、牛肉、鶏肉も近年では人気。とくに鉄の串に仔羊肉を刺した「シシ・ケバブ」が代表的で、ほかにもミンチ肉を使ったトルコ式ミニハンバーグ「キョフテ」など食べ方も多様です。トルコでは、ケバブはグリル専門店、レストラン、屋台など、さまざまなお店で食べることができます。

こちらは私が訪れたレストランのランチプレートで、これにパンがつきます。中央は仔羊肉や鶏肉のケバブ、ミニハンバーグ風のキョフテ、そして付け合わせにグリルしたトマトと、味付けをしてふっくらと炊いた米料理「ピラフ」。トルコでは米は野菜の一種とされており、肉や魚にピラフが添えられることもしばしばです。

ギネス認定も! トルコは「世界で一番パンを食べる国」

トルコの主食はパン。意外に思われるかもしれませんが、トルコは世界で一番パンを食べる国として知られています。国民1人あたりの年間パン消費量が199.6kgになった2000年は、ギネス世界記録に認定されました。そのトルコでもっとも定番のパンは「シミット」。ロープ状の生地をねじって丸い輪にし、ゴマをたっぷりとまぶして焼き上げたパンで、パリパリとした軽い食感が特徴です。ほかにも一般的なバゲット風のパン(エキメキ)や生地をクレープ状に薄く伸ばして焼いた「ユフカ」、ピザ風パンの「ピデ」などはトルコ料理に欠かせない食材となっています。

パンは、バターや蜂蜜、クリームチーズ、ジャムをつけて食べるだけでなく、ケバブなどおかずと組み合わせるのも定番です。私がイスタンブルを訪れたときに必ず食べるのはサバのサンド「バルク・エキメキ」。塩とコショウなどで味付けされたサバと野菜をパン(エキメキ)ではさんだファストフードで、観光客も地元民もおいしそうにかぶりついています。私は旧市街と新市街を結ぶガラタ橋の近くでテイクアウトをして、海を眺めながら食べ歩きで楽しんでいます。

肉料理だけじゃない!トルコは魚料理も魅力たっぷり

トルコは三方を海に囲まれたアナトリア半島が国土の97%を占めています。そのため、近海で獲れた魚貝を使った料理も豊富です。なかでも定番のメイン料理がヨーロッパスズキの塩焼き「ウズガラ・レヴレッキ」。ほんのり脂がのったふっくら柔らかい白身魚をシンプルな塩焼きにして食べます。レストランでは一尾まるごと出てくることが多いですが、あっという間に平らげてしまうほど食べやすい魚料理です。

イスタンブルの街中には鮮魚店もあり、新鮮な魚貝類が多く売られています。トルコでは魚は肉の消費量に比べると少ないため凝った調理はあまりないのですが、メゼと呼ばれる前菜ではマリネや塩漬けにしたシーフードが人気です。ムール貝にピラフを詰めて蒸した「ミディエ・ドルマ」はトルコの代表的な屋台料理。冷やしたミディエ・ドルマにレモン汁をかけると、さっぱりとした味のなかにムール貝の旨みが広がってまさに絶品です。

トルコ料理は世界三大料理の一つといわれますが、みなさんがトルコに行かれた際はぜひ現地のお店で伝統的なトルコ料理を食べてみてもらえたら嬉しいです。どの街、どのお店にいってもレベルの高い食を楽しむことができると思います。