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国産火鍋底料デビュー!~火鍋を愛し、火鍋に愛された男④~

中村 篤史

デザインオフィス代表

国産火鍋底料デビュー!~火鍋を愛し、火鍋に愛された男④~

中村 篤史

デザインオフィス代表

前回は、火鍋底料の商品化へ向け、中国四川省で生産現場を視察。品質管理と、材料のポイントになる上質な牛脂の調達などを鑑み、中国ではなく日本国内での製造を模索します。

数多くの工場を視察し、いい製品を作る事ができると思った工場との交渉を繰り返して、ようやく熱意を理解してもらえるパートナーを見つけることができました。いよいよ日本初の麻辣火鍋底料の商品化に乗り出します。

国産初の本格麻辣火鍋底料

中国語では鍋料理全般を火鍋といいます。
その種類は多く、使用される食材や味付けも様々ですが、今回商品化に向けて採用したのは四川、重慶を中心に中国全土で最も親しまれている「麻辣火鍋」です。
四川料理に欠かせない「花椒(ホアジャア)」の風味を”麻”、唐辛子の辛さを”辣”といい、その風味をスープのベースとしたものが麻辣火鍋です。四川では更に様々な香辛料等を加えつつも全体の調和を取りながら風味豊かに仕上げます。
ゴマ油ベースのタレで楽しむのも特徴のひとつです。

「食の安全・安心」がビジネスチャンスに。

ライフスタイルとして食には熱意を注いできた私ですが、食品を扱うビジネスは初めてです。それでも、本場で愛される麻辣火鍋底料を日本品質で作り上げることにチャレンジできたのは、そこにビジネスチャンスがあったからにほかなりません。

日本では作物の栽培段階から厳しい品質管理が行われています。
世界を見渡しても上位に入る食の品質管理体制ですので私たち日本人の食卓はとても高品質だと思います。
こういったことは日本にいると当たり前のように感じますが、国が変われば食に対する信頼は千差万別で、中国国内では残念ながら自国の食品に対する信頼は決して高いとは言えません。熟成された生産知識や技術は日本よりも劣るのが現状です。
また食用油に関してのモラルも問題になっていて、料理店に自分で持ち込んだ油で調理をさせる客がいるほどです。
食品を扱うバイヤーなどに日本製底料についてヒアリングを行うと、「そんな商品があれば是非取り扱いたい」「富裕層向けに高価格帯を狙える」といった良いリアクションを多くいただきました。

ジャパンクオリティーの安心安全への信頼、そして「味の信頼」を埋めることで巨大なマーケットへ参入できると確信を持てた瞬間でもありました。

商品化へのハードル

日本国内でパートナー工場を見つけることができ、実際の開発に取りかかりましたが、日本ではまだ誰も作った事の無いようなものです。大まかな使用スパイスや副材料が分かっているだけで実際の配合や手順はさっぱり分かりません。

現地四川の料理人からの情報や、中国の動画メディアなどからヒントを集めつつ試行錯誤するしかありません。
最初は全然ダメだったのですが、何度も何度も試作を繰り返すにつれ、理想の味に近づいていきました。何かを足すと何かが足りないといった悪循環も多く、開発担当者は大変苦労しました。

次に原材料の問題。美味しさと安心安全の品質がコンセプトの柱。スパイスは現地の最高品質のものを使い、油脂類などの副材料はできる限り国産のものにこだわりたいところです。しかしスパイスの検疫はとても厳しく、食品原料として使えるものは専門商社でないと難しいのが現状です。特殊な業界です。

こちらも私達が納得できるレベルのスパイスを扱える商社がなかなか見つからなかったのですが、専門商社の協力を元に、現地の最高品質のものを手にいれる事が可能になりました。

製品デビュー!

やっと商品開発の目処が立った後には、ブランド名の商標登録や、ロゴデザイン、パッケージデザインに取りかかります。これは私の本業でもありますから、これまでに練ってきたブランドコンセプトに沿って仕上げて行きます。

販売に関してはこの商品の構想初期からオファーを頂いていたcookpad社の新しい物販アプリ”Komerco”と自社ECの二本立てでスタートする事が決まりました。
同時にKomercoマルシェの開催も決まりましたので、そちらで商品のお披露目をできることになりました。

さて、Komercoマルシェにていよいよ商品のお披露目です。
蓋を開けてみるまで全く売れ行きの保証はありませんでしたが、こちらは大好評!
試食して頂いた方は家庭でこんなに美味しい火鍋を出来る事にびっくりされて、数あるブースの中でもトップクラスの売上でした。

今後の展望

まずは国産初の麻辣火鍋底料の製品化に、まずは成功しました。引き続き、もっと美味しい食べ方の提案や違った味の火鍋の展開をしていこうと思っています。
来年には新しい味の商品や専用のつけだれ、そして別のルート向けの商品の展開も予定しています。

いまは国内での販売にとどまっていますが、目指すは中国という巨大マーケットへ!
この連載は今回で終わりますが、我々の挑戦は続きます!