巨大なカルデラ近くの豊かな裸子植物の森で、大小様々な恐竜たちはそれぞれの生活を営んでいた。ある時、突然の大音響と共に噴煙が立ち上り、その噴煙はみるみる間に空高くまで昇っていった。恐竜たちはみな驚いて動きを止め、一斉に巨大な噴煙を見上げた。かと思うと、その噴煙が崩れながら黒い雲のような煙が猛烈なスピードで一気に襲いかかってきた。火砕流だ。慌てた恐竜たちは、必死で走ったり、穴に逃げ込んだりと逃げ惑ったが、黒い、高熱の噴煙にあっという間に追いつかれ、足が遅い大型の草食恐竜から次々と飲み込まれていった。このカルデラは二度の噴火の時期があったが、途中でお休みしてカルデラ内に大きな湖ができた時期もあった。この噴火は長くて100万年ほども続いていた。
・・・こんな映画のようなお話しが約7400万年前の日本、しかも今は活火山がない近畿の滋賀県で起こっていたのです。巨大なカルデラが何度も噴火をして、高温の火砕流を噴出していたのです。もっとも、恐竜が噴火に巻き込まれた証拠はないのですが、7400万年前というのは中生代白亜紀後期という時代で、恐竜が全盛期の時代ですので火砕流に巻き込まれた恐竜も多くいたに違いありません。私たち新人は20万年ほど前にアフリカで誕生したので、ヒトはまだまだいない時代のことです。
みなさんは、日本が火山国だというのはよく知っておられると思います。過去に火山が噴火して大変な災害を引き起こしていますし、将来も噴火する可能性のある活火山が多くあります。ところで、火山にはマグマの粘り気によって噴火の激しさが異なるのを知っていますか?滋賀の火山は、マグマの粘り気が強かったので、カルデラができて、高い噴煙と火砕流を伴う激しい噴火でした。
さて、現在は近畿地方には活火山がないのですが、なぜ過去に世界でも最大級のカルデラの噴火があったことがわかるのでしょうか?そして、なぜ今はカルデラが見られないのでしょうか?その答えは、度々の噴火で噴出した火砕流が冷えて固まってできた、湖東流紋岩という岩石が滋賀県の湖東に見られるからです。数千万年経つと火砕流も岩石になってしまうのですね。そしてカルデラが見られないのは、数千万年の間に、川の浸食で地面がどんどん削られてしまったからです。今の地表面は、7400万年前の深い地下なのです。そこにカルデラを形作った大きな円形の名残り(環状岩脈)があるので、カルデラがあったことがわかるのです。日本の場合は隆起が激しいので、今ある平野や山々の地形なども何千万年も経つと跡形もなくなってしまうということです。なんか不思議な感じがしますよね。