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What’s Fat? 今こそきちんと知りたい、脂肪のこと。

石原 健吾

龍谷大学農学部教授、農学博士

What’s Fat? 今こそきちんと知りたい、脂肪のこと。

石原 健吾

龍谷大学農学部教授、農学博士

石原先生が「脂肪がつきやすくなる理由」を解説。

加齢とともに太る。脂肪が増える。のにはちゃんとしたワケがあった。

まずは脂肪の役割について教えていただけますか?

脂肪には2つの役割があります。ひとつは余分なエネルギーを蓄えること、ふたつ目は体温を維持してエネルギーを逃さないようにする役割です。人間の基本的な身体の仕組みは、食べ物に十分にありつけない野生動物と変わりません。つまり、食べ物が十分にないときは、蓄えられる余分なエネルギーがほとんどないので、皮膚の下に皮下脂肪としてエネルギーを蓄えると同時に、エネルギーを逃さないようにすることが最も効率が良かったのです。中高年になると脇腹や内股につくのはこの皮下脂肪です。

内臓脂肪はどうして増えるのでしょう?

身体がエネルギーを吸収する場所は小腸です。小腸で吸収された脂肪の粒子が血液によって皮下脂肪へ運ばれ、脂肪として蓄えられます。皮下脂肪が十分にあるのにエネルギーを過剰に摂り続けた場合、その脂肪はどうなっていくか? 実はこれ、人種や遺伝子タイプによって異なるのですが、皮下脂肪としてさらに蓄積されてお尻や太ももに肉がついていくタイプと、小腸で吸収した脂肪が小腸の血管の周りにたまり、内臓脂肪としてお腹まわりにつくタイプに分かれます。

では中性脂肪とは何なのでしょうか?

健康診断での測定項目である中性脂肪とは、小腸で吸収した脂肪や肝臓で合成された脂肪が血液中を漂っている量を表しています。健康診断は大抵、朝の空腹時に採血するので、本来的には小腸で吸収された脂肪が血液から運ばれた後であり、血液中の量は食後に比べると少なくなります。中性脂肪が高いという結果が出たら、それは「あなたの血液の中には、まだ食後のように脂肪があふれていますよ。食べ過ぎていませんか」というメッセージだと思ってください。

ドキっとしますね。やはり脂肪量と健康は深く関係しているのですね

生活習慣予防の観点では、内臓脂肪が多いことと糖尿病や高血圧のリスクが高いことは関連していると考えられています。もちろん中性脂肪が高いことも、高血圧や肝硬変につながる可能性があるので気をつけないといけません。

先生、中高年になるとどうして太りやすくなるのでしょうか?

加齢によってすべての人が「太りやすく」なります。これは避けて通れません。その理由としてはさまざまな要因が考えられ、主には基礎代謝量の減少です。基礎代謝とは一日中、横になっていたとしても、呼吸や血液の循環、消化吸収など生命活動の維持に消費されるエネルギーで、普通の生活をしている人の1日のエネルギー消費量の60%を占めています。この基礎代謝量が加齢とともに減少するため、若い頃と同じ食生活や活動量を続けていると消費できないエネルギーが身体に蓄積されやすくなります。

その基礎代謝量を上げることはできないのですか?

筋肉をつけることで基礎代謝量の減少を食い止められるという説がありますが、実は必ずしもそうではありません。明らかに筋肉量がある身体つきなのにお腹周りが出ている人も多いでしょう。お相撲の力士の身体は筋肉と皮下脂肪が多く、基礎代謝量が高いのが特徴です。現役時代はたくさん食べてその身体を維持していますが、引退して食べる量が減って皮下脂肪が落ちても、筋肉量による基礎代謝の高さによって筋肉や血管が浮き出るような身体にはなりません。さまざまな研究データからも筋肉をつける=脂肪が減るとは言い切れないのです。

では先生、太ってしまう身体をどうしたらいいのでしょう?

まずはアメリカで行われた研究をご説明しましょう。757名を対象に、基礎代謝量が高い人と低い人のどちらが太りやすいのかを約10年にわたって追跡調査したところ、どちらも10年後の体重に違いはありませんでした。どちらのグループにも体重が増えた人と減った人が混在し、平均すると毎年約300〜500グラム体重が増えていました。この研究結果を含めて言えるのは、基礎代謝量が太りやすさに関係があるものの、実際に太るかどうかは「運動などによる1日全体のエネルギー消費量」と「1日の食事の量やタイミング」の方が影響しているということなのです。

運動によるエネルギー消費量と食事を意識するべきだと。

食事で脂肪を落とすために最も効果的なのは寝るときに軽い空腹になっていること。夕食の時間を早くしても、量を減らしても構いません。遅い時間に食べて満腹で寝る習慣は確実に太ります。寝る2〜3時間前には食事を終え、さらに夕食には糖質を減らした方が体脂肪蓄積予防には効果があります。この理由は体内で糖質などが脂肪に合成される時間帯が夜だから。血糖値が上がりにくい低糖質の食事によってインスリンの分泌が抑制されるとともに脂肪の合成も抑えられ、脂肪の分解が活性化されます。

最後に運動習慣としての自転車はどうでしょうか?

1日全体のエネルギー消費量を増やすという点では、特に太っている人にとって自転車運動は良いと思います。同じ時間運動するならば、スポーツバイクを利用すると歩行よりもエネルギー消費量が高く、ランニングなどに比べても長い時間運動を継続しやすいことから脂肪燃焼に適した運動になると思います。

出典:Cyclingood(サイクリングッド) ,株式会社シマノ,No.24
   https://cyclingood.shimano.co.jp/health/interview20_1.html