新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛で、運動不足やストレス解消のための、おうちで出来るラジオ体操が注目されています。国民的体操として「第1」「第2」がよく知られていますが、実は「第3」があったことをご存知でしょうか?
戦後の一時期だけ放送された「ラジオ体操第3」は、しなやかでユニークな動作をリズミカルに行い、楽しく運動の効果も高いのだとか。
前々回のMog-labでは、「ラジオ体操第3」の概要を紹介しました。2013年にこの幻の体操を復刻させることに成功した、龍谷大学社会学部教授の安西先生にお話をうかがいましたので、今回はインタビュー形式で「ラジオ体操第3」を紹介します。
編集部:小学生の夏休みに、毎朝ラジオ体操をしていたのを思い出します。「第1」「第2」は記憶がありますが「第3」は何故されなくなったのでしょうか?
安西先生:皆さんが良く知っているラジオ体操は、三代目の「第1」「第2」のことです。年表で説明しますと、ラジオ体操は「第1」「第2」「第3」まで存在しており、「第1」「第2」が三代目まで、「第3」が二代目まであります。
編集部:「第1」「第2」の初代、二代目、三代目、「第3」の初代、二代目ということは、全部で8種類あったということなのですね、知りませんでした。
安西先生:初代は「第1」「第2」「第3」ともに戦争のために終了したようです。戦後になってから、昭和21年に二代目の「第1」「第2」「第3」が放送されましたが、1年半程度で廃止されています。その理由は以下の3つがあげられています。
①ラジオ放送で国民が一斉に体操することにGHQが危機感をもち、中止干渉したこと
②戦後の混乱期で、ラジオ放送が不定期に放送されたこと
③複雑な動作の体操を音声だけで伝えることが難しかったこと
その後、昭和26年に三代目第1、昭和27年に三代目第2が放送されましたが、第3は放送されていません。その理由は不明です。
編集部:なるほど、歴史を感じますね。「第3」を復刻することになったきっかけは何ですか?
安西先生:2013年に滋賀県東近江市から「こころとからだの健康づくり事業」の協力依頼を受けたことをきっかけとして、昭和21年から1年半だけNHKラジオ放送されていた「二代目ラジオ体操第3」を復刻しました。
動作は文献「図解二代目ラジオ体操第三」を参考にし、Youtubeにあった曲を採譜して新たにピアノ曲を作成しました。
編集部:では早速ですが、ラジオ体操第3はどんな体操なのか教えてください。
安西先生:動作は文献「図解二代目ラジオ体操第三」で紹介されていますが、「第1」「第2」にはみられない、11種類の躍動的な動作で構成されています。リズムも軽快で、実際やってみると結構ハードです。
編集部:腕をぐるぐる振り回す動作とか、楽しそうですね。
安西先生:おっしゃる通りです。楽しく体操して軽い汗をかくことで体温が上がれば免疫力も高まることが知られています。コロナ感染予防にも体操効果が期待できます。
また、ストレス解消にも良いかもしれません。うつ病予防についても効果が期待できることが分かっています。
編集部:すばらしい!
安西先生:二代目ラジオ体操第3の心拍数は運動中 110から150bpmの範囲で、個人差はありますが有酸素運動域の運動強度をキープしていました。(図1)
有酸素運動は体脂肪を燃焼させることから生活習慣病予防に効果があり、同時に不安感・抑うつ感を解消します。つまり、うつ病予防効果も期待できるということです。
安西先生:運動強度(運動時の負荷やキツさに相当)についても検証してみました。
二代目ラジオ体操第3の運動強度を比較測定するため、「第1」「第2」「第3」の心拍数を比較測定しましたら,現在の三代目ラジオ体操第1、三代目ラジオ体操第2の平均心拍数よりも高いことがわかりました。(図2)
編集部:つまり、それだけハードだということですよね。「第1」「第2」ではもの足りない方に「第3」はオススメですね。
安西先生:実際に滋賀県の某市での「健康づくり教室」でその効果を測定しましたら、半年後に参加者の皆さんの平均体重、腹囲が減少、持久力が向上しました。どうやらダイエット効果があるようです。
また、滋賀県某町の役場職員さん71人に毎朝就業前に「二代目ラジオ体操第3」を実施してもらったところ、45%の職員さんのうつ症状が改善 (表1)し、こころとからだの改善効果を検証できました。
「二代目ラジオ体操第3」について、ここまでいかがでしたでしょうか。少しハードな「ラジオ体操第3」、おうちで試してみてくださいね。
さて、後編では「初代ラジオ体操第3」を紹介します。高齢者の方や膝、腰などに課題のある方が座位でもできる体操のようです。ぜひご覧ください。