新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛で、運動不足やストレスを解消のための、おうちで出来るラジオ体操が注目されています。
【前編】では、「幻のラジオ体操第3」、その”二代目”について龍谷大学社会学部教授の安西先生にうかがって紹介しました。この後編では、「”初代”ラジオ体操第3」についてご覧いただきます。
編集部:安西先生は“初代”ラジオ体操第3についても、復刻されたんですよね。
安西先生:復刻した“二代目”ラジオ体操第3を普及している際に、全国の皆さんから「二代目ラジオ体操第3」と組み合わせてできる体操はないのか?」や「高齢者の方や膝、腰などの下肢に課題のある方が座位でもできる体操はないのか?」などのお声をいただいていました。
ちょうどその時に、有難いことに一般の方から、初代ラジオ体操第3(大日本体操)の掲載新聞と初代ラジオ体操第3の管弦楽曲SP版を寄贈いただいたんです。初代の復刻を後押ししてくれました。
編集部:おお、貴重な品を!
安西先生:レコードに収録されていた初代ラジオ体操第3の原曲は管弦楽曲でした。それを日本コロムビア株式会社さまに再現していただき、ピアニストの方にピアノ曲としていただきました。そのピアノ曲は,軽快なリズムとゆったりとしたスローテンポなリズムがあり、全体として爽やかでありながらもどこか昭和の哀愁が漂う曲となっています。
貴重な資料をご寄贈いただいた埼玉県の植田誠氏、京都府の吉池一郎氏に感謝するとともに,昭和14年のSP盤レコードの管弦曲をデジタル再生していただいた日本コロムビア株式会社の関係各位の皆さんには大変感謝しています。
編集部:皆さんのご協力あっての復刻ですね。で、その初代とは。
安西先生:初代の動作は第1運動から第14運動まで14種類のしなやかな動作が3分20秒程度で構成されています。
資料の図解から動作を復刻して心拍数を測定すると、個人差はありますが現行の三代目ラジオ体操第1とほぼ同じ運動強度でした。
また、跳躍動作がなく、全体的に上肢の運動動作が多いため高齢者の方や座位でもできる体操いわば動的ストレッチ効果が期待できることがわかりました。
この動的ストレッチは反動を使ってダイナミックに筋肉を引き伸ばすことから、脳の活性化と全身の血流を良くし体温が上がることから免疫力向上効果が期待できます。
動作のなかでも特徴的なのは第6運動の簡単には覚えられない体側を曲げる動作,第9運動の身体を前に倒して腕を前と上に振る動作や第11運動のボート漕ぎ(船漕ぎ)はユニークな動作です。子どもでも楽しく体操ができます。
編集部:高齢の方にも、お子さまにも実践いただきたいですね。
安西先生:前述した二代目ラジオ体操第3と組み合わせて毎日実践しても楽しいと思います。初代と二代目を組み合わせると,7分弱のかなりの運動量になります。
私どもが「幻シリーズ」として70年以上の時を経て復刻致しました初代と二代目ラジオ体操第3が、子どもや若者たちのこころと身体の健康づくり、職場での生活習慣病予防や高齢の方の認知症予防・介護予防、下肢に課題のある方のロコモティブシンドローム予防などにお役に立てれば幸いです。
バランスの取れた食事、質の高い睡眠とともに、初代・二代目ラジオ体操第3を「おうち体操」として実践していただいてコロナ感染に負けないように免疫力を高めていただきたいと思います。
編集部:復刻された情報がこれだけあれば、おうちでも気軽にできますね。是非やってみたいと思います。本日はありがとうございます。
出典:「幻のラジオ体操第3」角川書店