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BUSINESS 2021.06.04 角谷 香織

人と人をつなぐ野菜~畑から始まるコミュニケーション~

ひょっとしたら野菜嫌いな人は減るかもしれない。農業と真剣に取り組んでいる生産者の畑から、そのまま消費者に届けることができれば、採れたての野菜が味わえて、少しクセのあるニンジンなどもおいしく食べることができるかもしれません。それに、野菜への興味が湧いてくるかも。

京都の畑の土で育ち、誰が育てたのかわかる採れたての野菜を、できるだけ新鮮なまま地元の食卓へ、また、地元の飲食店へ届けることができることができれば。京の農家に伝わる販売方法「振り売り」をしている、おいしい野菜をセレクトし伝える「Gg's」主宰の角谷香織さんに話を聞きました。

京都の野菜と人をつなげる活動をはじめたきっかけ

農家が店舗を持たずに、京都の地野菜などを売り歩く「振り売り」というスタイル。京都の上賀茂でも昔から見かけますが、角谷さんのおばあさんも、昔振り売りの方からお野菜を買っていたそうです。

「学生時代は、京都大学工学部にいました。むしろ生物は苦手で物理化学好きでしたから(笑)。農業に興味を抱いたのは、東日本大震災の後に訪れた福島で農家さんに出会ったことがきっかけです。学生時代に、福島県出身シンガーソングライターYammyさんのアシスタントマネージャーをしていて、復興支援になるかはわからないけど、風評被害のある福島の「食」を食べようということで農家さんと関わるようになり、その時に「Gg’s」という名前で動き始めました。大きなメディアが伝える情報と、私たちが実際に訪れて感じることとの違いに温度差があることを感じて[もう少し違う角度で福島のことを伝えらえたら、関西の方々も福島の印象が変わるはず]と思っていました。第三者になるのではなく、ちゃんと関わって情報を発信することが大事じゃないかと思っていたことが、今の仕事につながっているように思います。

当時は、農業のことなんて、1ミリも知りませんでした。福島の農家の方との関りから畑に興味が湧きましたが、私は普段、福島にいるわけではなかったので、そのうち京都の農家さんと仲良くしていただいて、上賀茂の八隅農園さんへ手伝いに行かせていただくようになりました。」

生産農家のことを伝える方法は畑を知る自らが野菜を届けること

「振り売りをはじめたのは、2015年からになります。八隅農園さんで体験した京都の伝統漬物”すぐき漬け”の、すぐき菜の皮むきをSNSで発信したところ予想外の反応で、試しにインターネット上で販売してみたんです。その後近所の飲食店さんから八隅さんのお野菜を頼まれる機会も増え、少しずつ私が届けたりしていたんですが、「細々行くのも大変なだけやから、いっそのこと振り売りをしてみたら」と八隅さんからいわれたことが振り売りのスタートです。」


「6年ほど経った今思うことは、生産農家さんのことを伝えるには、日々の畑の様子や農家さんの言葉を、その都度お伝えすることが一番大事だと思っています。[生産者・農家さんの話をします!]というテーマを立てて、大々的にイベントなどでお伝えするよりも、振り売りをしながら、畑で獲れた野菜を[今これがおいしいです]とお渡ししながら、例えばちょっと珍しい菜の花を持っていくとか。
菜の花って市場で出回っているもの以外にも色んな種類があるんです。大根にも青梗菜にも、董立ちした後菜の花がついてそれがおいしかったりするので、そういうのを持って行って[畑、今こんなん育っています]という話をするほうが、リアリティーもありますよね。実際に、農家さんたちも野菜を食べていただけることが何より嬉しいはず。畑のことやつくる人のこと思って、食べてくださる方が増えていくのが嬉しいと思います。私は、畑と食べる人をつなげることができるのが嬉しいです。大々的に何かを掲げるよりも畑で獲れた野菜を日々届けて皆さんに食べていただくということを、積み重ねていきたいです。」

つくる人の性格がでる野菜。農家さんのキャラが大事

「販売する野菜は、生産農家さんの畑へ直接行くことからはじまります。その日により違いますが、朝に農家さんのところでお野菜をいただき、時には自分で畑に入ることもあります。なかでも上賀茂の森田農園さんは、今では自分で収穫して値付けをして、後から申告するスタイルです。信頼してくださっているので、変な事は絶対できないですし、かえって値段も安くは付けづらいですね。笑。

取引をしている生産農家さんは、いま20人以上の方々がいらして、野菜をもらうかどうかは、もちろん品質も大事だと考えていますが、[この人おいしそうな野菜を作りそう]という農家さんのお人柄をとても大事にしています。野菜に、つくる人の性格が不思議と現れるんですよね。これは私の感覚ですが、几帳面な性格の農家さんが育てると、キュッって綺麗な形で整ったみたいなバランスいいものに育っていたり、例えばちょっとやんちゃな感じの農家さんだと、サイズが大きくなっちゃったり、少々暴れている時もあるんですが、味は濃くてパンチがあるように感じたり。料理人さんしてみればどちらもあるほうが、味にアクセントがついて面白いって聞いたりもします。」

残りものまでおいしく!畑をまるごと食べることを考えたい

「基本的には、移動販売で車に積み込んでお得意先の飲食店や、ご家庭のお客さんのところへ行ったりしている毎日ですが、毎週日曜日には大徳寺近くで【晴れときどき雨、のちお野菜】を開店しています。大原&上賀茂の農家さんのお野菜が中心です。

私は、八百屋として生産農家さんが自ら売れる野菜は農家さんも売ることができるし、もちろん私も売りますけど、それだけではなくて、農家さんがちょっと売りにくいような、例えば形は良くないけどおいしい野菜とか、知られていない新種の野菜や珍種の野菜もなるべく、関係性ができている相手にだからこそ売りたいと思っています。
さっきお話しした董立ちしてしまって本来なら売りにくい青梗菜の菜の花なんか、さっと湯がくだけで、湯がくのが面倒くさかったらフライパンで蒸し焼きにするだけですごくおいしいから、そういう『畑まるごと食べる』ことを、生産農家さんと料理人さん、一般のおうちの方々とも一緒に考えながらできると、すごく未来が開けるように思います。」


私の場合、初めから野菜を何かしたいというよりも、野菜を介して人と人を繋ぐということを大切にしてきました。だから、あくまでも「人ありき」なんです。おいしいことって誰にとっても嬉しいし、それが身近なところでつくられているって、実はすごく大事なことだと思っています。あくまで野菜はコミュニケーションの手段、というと表現としておかしいかもしれないけど、私は、野菜を通していろんなコミュニケーションができる、このすごく優しい世界を大事にしたいなと。後は、地元のものを地元で食べてもらいたいです。すぐ隣にある畑の野菜を、京都に住む人が食べられなかったりすることって、もったいないし残念なことです。できれば私は、できるだけ近隣でできた野菜を、新鮮なうちに近隣で食べる楽しさや良さを伝えていけたらと思います。


お野菜の販売「Gg’s」
http://ggs-kyoto.com/

店舗販売「晴れときどき雨、のちお野菜」
京都府京都市北区紫野下鳥田町23-1
毎週日曜日、正午〜午後6時ごろまで。

角谷 香織

すみや かおり

「Ggʼs」主宰

1988年、京都⽣まれ。京都⼤学⼤学院 修⼠課程修了。
⽣産農家と⾷べる⼈とのつながりを⼤切に、おいしいお野菜をセレクトし伝える「Ggʼs」を主宰。名前のGgʼsとは、「Greengroceryʼs」の略で⼋百屋を意味する
活動やいま畑で採れる野菜のことは、FacebookやInstagramなどSNSで発信中。