TOP / Health / SNSが招いた自己嫌悪と危険な食生活

1.SNSの普及とその落とし穴

いまやSNSのない生活は考えられません。
友達と連絡を取る時はもちろん、世の中の動きを知る時や、飲食店などのお店を探すときにもSNSは欠かせません。いまやSNSがなかった時代はどんなふうだったのか、想像もつきませんね。

こちらのデータをご覧ください。

SNSについて、何らかの形で利用したことがあると答えた人が全体的に多く、20〜29歳に絞って見ると4分の3を超える人がSNSを利用していることがわかります。

このように現代人にとってなくてはならない、利用することが当たり前になっているSNS。その普及は人々に良い影響ももたらしましたが、一方で人々にネガティブな影響も与えている気がしてなりません。
毎日のように起こる不毛な論争、著名人など個人への言葉の暴力、飲食店でのいたずらのように不適切な方法で目立とうとする行為。これらはSNSがあればこそ起こるネガティブな現象であり、このような指摘は頻繁に耳にします。

しかし、わたしが感じる、それらに比肩するSNSの最もネガティブな面は「見た目のコンプレックスを加速」させてしまう点ではないかと思います。
この稿では、学生ライターの池谷杏花が体験談も交えながらSNSによるネガティブな思考の喚起と食生活の危機について取り上げます。

2.SNS上の「自撮り」と自分の姿を比較して・・・

SNSを見るとフィード画面には多くの「自撮り」が並びます。芸能人の方はもちろん、一般の人でも自分自身の写真を投稿する人は多くいます。
このようなフィードに並ぶ写真、そしてその写真につけられたその容姿をもてはやすようなコメントをずっと見ていると、生身の姿の自分と比較し、自分の容姿は劣っているのではないかと自己嫌悪に陥ってしまうこともあるのではないでしょうか?

もちろん、SNSに載せられているのは、投稿者が何枚、何十枚も撮影したものの中から厳選された良いものだというのは頭ではわかっていますし、自分と比較する必要などないこともわかってはいるのですが、一度自己嫌悪に陥ると、そのネガティブな考えから抜け出しづらくなってしまいます。

そして、そのネガティブな考えはときに自身の健康の危険を招いてしまうこともあると思うのです。

実は筆者にもそういった経験があります。

一年前、SNSで頻繁に見かけるいろいろな人の美しい容姿の画像と自分を比べてしまい、自分の容姿は劣っているのではないか、今より痩せなければならないのではないかとの思いにとらわれてしまいました。

以来、早朝5時に起き、筋トレと有酸素運動を行い、カロリーを徹底的に抑えたお弁当を作り、その状態で学校へ通うなどの生活が続きました。
適度に行うのであればそれ自体は良いことのように思えるのですが、そのときはそのお弁当の内容やその他に摂取する食事のカロリー制限の内容が過激だったのです。
一日に摂取するのは500キロカロリー以下。
これが自分に課したノルマでした。とにかく自分も早くSNSで見るような細い身体に近づきたくて、必死のダイエットを行いました。カロリーが0とされる大豆の粉を水で固めてフライパンで焼いた味のない食べ物を咽ながら無理やり水で流し込んで腹の足しにしたり、炭水化物や小麦粉は1gすらも許さず摂取しないなど、今思うと無茶な方法を試していました。

3.精神への悪影響とリバウンド

そのような過度なダイエットが引き起こす影響は身体だけでなく、精神にまで及びました。
これだけ一生懸命やっているのにどうして早く痩せないの?というプレッシャーから理想を追求する気持ちが膨らみすぎてどんどん悪循環へと陥っていき、自分より細い人を街中で見かけるだけでいらいらしたり、落ち込んだり。そんな日々が続きました。
少なくとも精神は「美しくない」状態に陥ってしまったのです。

そうなると当然、無理も長続きはしませんでした。

毎日暗い気持ちで過ごすことになり、勉強やアルバイトのストレスも増加。やがて本来以上に大量に食事をするようになってしまいました。
それまでの食事制限はむなしくなんと一か月で7キロ増加という急激なリバウンドをしてしまったのです。

4.適切に食べることの重要性

身も心もボロボロ。そんな中わたしは「適切に食べる」ことの重要性に気づきます。
それまでは単純に「食べれば太る、食べなければ痩せる」と考えていたのですが、食事というのはそれだけでなく、体調そのものを作り、精神を穏やかな状態に保ち、適切に食事をすることで、自分にとっての美しさを最大限に引き出すのではないかと考えるようになったのです。

このことに気づけたのは、周りの人の言葉の影響がありました。
自分の大切な人からの言葉が支えとなり、自分の行いが適切ではなかったことに気づいたのです。
SNSだけではない、リアルな言葉のやり取りが私を救いました。

そう感じて以来、短期的な結果しかもたらさない過度な食事制限は取りやめることにしました。一生続けられる内容でないと、またリバウンドに繋がると気が付いたからです。

一日の摂取カロリー制限を自身の身長や代謝、運動量に基づいて適切なものに改め、食事の内容も一変させました。
これまではカロリーの低さのみに目を向け食事を選んでいたのですが、バランスよく適量の食事で栄養を摂るということに重きを置くようにしました。
夕食を抜くこともやめました。朝、昼、夕と三食きちんと摂ることで良いメンタルを取り戻すことにもつながりました。

5.誰かの助けになれれば・・・

私の体験は極端なものかもしれません。しかし、誰かと比べて美しくなりたい、そのためには多少の無理も仕方がないと考えたことがあるという人は多いのではないでしょうか?
私の体験談を通して、無理なダイエットがどれだけの悪影響を及ぼすのかを広く知ってもらえたらと思います。

私は大切な人の言葉でそのことに気づき、自分を責めることをやめられましたが、この記事が誰かの身体を、そしてメンタルを助けることにつながれば幸いです。

 

今回の執筆者
池谷 杏花(いけたに ももか)
龍谷大学 法学部法律学科 1年生。
京都府出身。趣味は食事とピアノ。