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「昆虫が人類を救う」とお聞きになり、どのようなことを思われたでしょうか?
疑問を感じられたり、不信感を持たれたり、あるいは中にはバッタの遺伝子を持つ正義の味方やアリやハチのような姿のスーパーヒーロー&ヒロインが人類を脅かす悪の秘密結社と戦うといった内容を想像された方もいらっしゃるかもしれませんね。
でも今回はそういう話ではありません。
今回のテーマは「昆虫食」。以前からこれに興味を持っていた学生ライターの田中香帆が、昆虫食のいろいろについてご紹介します。ぜひ一緒に理解を深めていきましょう!

※この記事には閲覧注意(昆虫食)の画像を含んでいます。

昆虫食の思わぬメリット

「昆虫食が人類を救うとは言われたものの、昆虫なんて食べられるの?」「なんだか気持ち悪くてとても食べる気にならない・・・」次はそんな声が聞こえてきそうです。「そもそも昆虫を食べることにメリットなんてあるの?」という声もありそうですね。

しかし昆虫食には思わぬメリット、知られざる魅力があるのです!

1.栄養満点!タンパク質・ビタミンが豊富
2.宇宙食にも!?成長が早く保存性にも優れる
3.環境にやさしい!肉などに比べ圧倒的な環境負荷パフォーマンス

まず、栄養面について見てみましょう。
種類や与える餌によって多少違いはあるのですが、昆虫に豊富な栄養分が含まれていることはよく知られています。
体内で作り出すことができない必須アミノ酸であるロイシン、リジン、アスパラギン酸も多く含まれており、穀物とともに食することで不足しがちな栄養素を補うことができると言われています。
また、ビタミン、特にビタミンB群(ビタミンB2・ビタミンB7)を豊富に含んでいる種が多いことも知られています。
ビタミンB2とビタミンB7は、皮膚や粘膜の代謝に関与し、皮膚の健康を保ってくれる働きがあるので、気になる方はぜひ調べてみてください。

次に昆虫の成長の早さと昆虫食の保存性に注目してみましょう。
私たちが普段食べている牛や豚の成長を思い浮かべていただくとわかりやすいと思うのですが、昆虫の成長はそれらに比べるととてもスピーディーで、かつ飼育も簡単です。小学生の夏休みの自由研究でも定番のテーマですよね!
また調理方法によっては保存も簡単で、この点においても牛や豚のそれを上回ります。
これらの点により、昆虫食は宇宙食としても注目されているようです。たしかに、宇宙船の中での飼育などを考えると牛や豚よりも簡単そうです。

つづいて、環境負荷の面についても見てみましょう。
哺乳類の中で人間の次に個体数が多いのは牛や豚などの家畜であるというデータもあるように、家畜の呼吸によるCO2排出はかなりのものであると考えられます。これと比べると昆虫が排出するCO2はごく少ないと考えられます。
また、みなさんご存じかもしれませんが、牛のゲップで排出されるメタンによる地球温暖化の促進については、よく問題になります。
メタンも温室効果ガスの1つとされており、地球温暖化の大きな原因の一つとされているのです。これも併せて考えると、昆虫が排出する温室効果ガスは、牛と比較して1~10%と大幅に抑えられると言われています。
土地利用面積が少ないことや水の使用量を抑えられる、少量の餌で成長するなども考慮すると、昆虫食は地球や私たち人間にとってもやさしい食文化であると言えるでしょう。

昆虫食を食べてみよう!

みなさんだんだんと昆虫食に興味がでてきたところではないでしょうか?
そんな方のために、具体的な昆虫食のご紹介をしていきたいと思います。

①イナゴの佃煮
イナゴの佃煮はご存じの方も多いのではないのでしょうか。
この料理は日本全国(北海道を除く)で広く食されてきた料理だそうです。
洗ったイナゴをお鍋で煮て、砂糖と醤油、みりんを入れて味付けをするだけで作ることができるので、料理方法も簡単で気軽に作れそうです。
味も調味料とマッチしてご飯にも合いそうですね。ご興味があればぜひ!

②カイコ蛹の燻製
この料理は、カイコの蛹を燻製にすることで、蛹のトロっとした食感とやや苦みのあるコクがほどよくマッチした一品です。
大人の味として、お酒のおつまみにいかがですか?

③へぼ飯
「へぼ」というのは、クロスズメバチ(地蜂)の幼虫のことを指し、貴重なたんぱく源として食べられてきたのです。そんなへぼは高価で希少性が高いことから、ごちそうでふるまう料理として知られてきたそうです。
へぼはコクのある甘さで、ごはんの上にのせて食べるだけで充分に味が染みわたるとのこと。贅沢な味わいかもしれません。

以上3つの昆虫食を紹介しましたが、日本だけにかかわらず、海外の昆虫食も他にたくさん存在するので、挑戦したい方はぜひチェックしてみてくださいね。
ちなみに、私はまだ実際に昆虫食をいただいたことがないのですが、これを機に食べたいなと思っています。

 

さいごに・・・

とは言え、昆虫食には安全性に関する問題、特にアレルゲンに関する問題などクリアすべきことがまだまだあります。冒頭申し上げたように「そもそも食べる気が起きない」というのも乗り越えるべきハードルでしょう。

しかし、昆虫食にたくさんのメリットが存在していることもお分かりいただけたのではないかとおもいます。
この昆虫食のメリットを今後どのように活かしていけるのか、みなさん気になりませんか?昆虫食を食べ、地球環境への負荷を今よりもっと少なくすることが持続可能な社会実現をすることにつながるかもしれません。
現在においては、日本における昆虫食は局地的な文化としての存在になってしまっていますが、食文化は時代とともに変化するのではないかと思います。
地球問題の解決への1つの手段として、これから昆虫食が繁栄する未来がやってくるかもしれません。

○参照
・うちの郷土料理 次世代に伝えたい大切な味 農林水産省https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/inagono_tsuku_dani_nagano.html

・「昆虫食スタディーズ ハエやゴキブリが世界を変える」 水野壮 株式会社化学同人
2022年

 

今回の執筆者
田中 香帆(たなか かほ)
龍谷大学 先端理工学部 環境生態工学課程 3年生
食と農について昆虫食をテーマに記事にしました。初めて記事を書きましたが、言語化して人に伝えることを改めて意識しました。
今後も注目される昆虫食を、記事を読んで知っていただけると幸いです。