ランチを求める人で賑わう昼休み。キッチンカーのそばには、龍谷大学経営学部・細川ゼミに所属する学生たちの姿がありました。7月9日は、農業生産法人こと京都株式会社が展開する「NOUJINアカデミア」とともに開発した九条ねぎを盛り込んだ「九条ねぎのまぜそば」の販売日。今回は、プロジェクトに参加した2名の学生に、活動内容や学びについて話を伺いました。
自ら考えてアクションを起こすといった実践的な学びを大事にしている細川孝教授。地元企業の協力のもと、企業訪問や経営者による講演、さらには、企業と連携しての商品開発など、学生が企業と交流することで学びを深められる取り組みを続けています。
一方、こと京都は九条ねぎを使った商品を企画・製造・販売している農業法人。農業の担い手減少への危機感から農業への関心を高めようと、「NOUJINアカデミア」としてさまざまな活動に取り組んでいます。
2025年1月、細川ゼミの学生たちは授業の一環として伏見区向島にある同社の工場を訪問しました。これをきっかけに「大学内で提供するランチ商品の開発を一緒に行いませんか?」と提案があり、龍谷大学細川ゼミとこと京都「NOUJINアカデミア」による、九条ねぎを使った昼食メニューを開発するプロジェクトが始まりました。
稲家 菜都美さん(経営学部2年生)
まずは、こと京都の商品である「九条ねぎのまんまる焼」を試食し、ゼミ生が意見を出し合いました。
「九条ねぎのまんまる焼は、九条ねぎがかかった小さなお好み焼きのようなもので、味が濃くておいしかったです。ただ、学生のお昼ご飯としてはもう少しボリュームが欲しいと感じ、もっと食べ応えがあるものがいいと要望を伝えました」(稲家さん)
このほかにも、さまざまな学生からの意見を参考に同社が開発したのが「九条ねぎの厚揚げ丼」。ご飯の上に厚揚げと九条ねぎをたっぷり盛りつけ、さらにその上に温泉卵をトッピングした一品。まずは大学内のキッチンカーで、1ヶ月にわたり、週1回のペースで販売し、その結果を次の商品開発に活かすことに。
販売当初は、購入者から「おいしい」という声が多く寄せられ、好感触。1週目は用意した40食が完売しました。翌週からは50〜60食に増やして販売を続ける中で、「リピーターがいない」という課題が見つかりました。
「厚揚げ丼は一度食べたら満足してしまい、次の購入に繋がりにくい印象がありました。そこで、学生を代表する僕たちが、お昼ご飯に何を食べたいかを基準に意見交換を行いました。その中で次のメニュー候補として挙がったのが、まぜそばでした。ほかにもラーメンや親子丼などの人気メニューがありましたが、生卵を使うと衛生面に心配があることや、調理に時間がかかって提供までにお待たせしてしまう可能性があることから、キッチンカーでの提供には不向きだと判断し、候補から外しました。オペレーション面も踏まえながら、最終的なメニューを決定していきました」(伊藤さん)
メニューがまぜそばに決まると、使用材料の検討や味比べを行うため2種類を検討することにしました。
「当初は挽肉に豚肉を使う予定でしたが、時間が経つと肉の脂が白く浮いてしまい、キッチンカーでの販売には適していないことが分かりました。そこで、鶏肉を加えることにしたところ、コストも抑えられ、一石二鳥のアイデアでした。味付けは、辛さを抑えたものと、辛めのものの2種類を用意し、食べ比べをしました。結果、辛めの方が味に深みがあり好評だったため、そちらをベースにすることに決まりました。そのほか、挽肉と九条ねぎに加えて海苔をトッピングする案もありましたが、九条ねぎ自体にしっかりとした風味と旨みがあるので、海苔は使わないことにしました。ねぎのおいしさがより引き立つ味に仕上がったと思います」(稲家さん)
あわせて考えなければならなかったのが、費用と利益について。トッピングのアイデアはたくさん出ても、実際に販売して利益を出すところまでを考えると、好きなだけトッピングを加えるわけにはいきません。経営の視点で考える大切さにも気づくことができました。
「材料費によって必要な売上は変わってきます。いくらで何食売れば赤字にならず、利益を見込めるのか、目標を正確に定める必要がありました。最初は1食500円で販売する予定でしたが、利益が出ないことが分かったため600円に変更しました」(伊藤さん)
伊藤 琉さん(経営学部2年生)
まぜそばの販売は全3回実施され、初回は用意した40食がすべて完売。好調なスタートを切り、この日、2回目の販売も行いました。何を販売しているのかが一目で分かるように、「まぜそばはじめました」と書かれた文字にイラストを添えたボードを掲示しました。
「自分たちで考えて実践するといった、座学では得られないことを地元企業の方のおかげで学ぶことができました。行動して改善点を見つけ、それを修正する。その繰り返しを体験できたことはとても勉強になりました」(伊藤さん)
「学生のうちから企業の方と接する機会を持つことができ、経営について教えていただけたことはとても貴重な体験だったと感じています」(稲家さん)
地元企業のサポートのもとで商品を作り上げ、実際に販売まで行った学生たち。このプロジェクトのような実践で得た経験と座学で培った知識とが結びつくことで、学びはより深まり、新たなチャレンジにつながっていくでしょう。