先日、オランダのテレビ局からの取材があった。テーマは日本のうま味。ヨーロッパではうま味に注目する人が増えてきたので、テレビ局も本腰を上げだしたようだ。
バラエティー番組のタレント風のキャスターが開口一番質問した。おいしい料理にはうま味が重要らしいと話題になっているけれど、どの味がうま味なのか、よくわからない。うま味とはどんな味で、どうしてヨーロッパ人はうま味がよく理解できないのか。
あたりまえのようにうま味を感じて納得している日本人が欧米人には不思議に映るという。
これは、うま味の世界戦略上、重要な課題といえる。世界は理解できるうま味の説明と実感を求めている。
すでに解説した通り、うま味は、実験的には甘味と同様に世界中の人間が先天的に好ましく受け入れることができる味である。多くの食材に量の多少はあってもうま味が含まれている。だから、世界の料理の味わいには、肉や野菜やスープなど、いろいろな形でうま味成分が潜んでいることが多い
欧米の料理にもうま味を感じ取れるものがある。しかし、欧米にはうま味を全面に展開している料理は少ない。欧米では肉や油脂や香辛料の分厚く複雑な味わいが主役であるので、意識しない限りうま味は目立たない。
欧米人にうま味を説明するならば、材料としては、理論的には純粋なうま味成分の代表はMSG(グルタミン酸1ナトリウム)なのだが、料理を念頭に置くならば、料亭の一番だしが最適であろう。
一番だしは、北海域の昆布に鰹節を合わせた相乗効果満点のだしである。高濃度のグルタミン酸とアスパラギン酸、イノシン酸を含み、雑味のない液体で、世界中で最も強力な天然のうま味である。口に含むと、顎の両側にうま味の余韻が広がる。小学生でも、鰹と昆布の合わせだしをうまいと感じる。
まず強いうま味を知ってもらうことは先決である。その後に、後述するような料理の中にうま味による調和を探すことがうま味の全体像を理解する確実なプロセスである。
出典:(一社)日本ソムリエ協会「Sommelier.jp」