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日本酒×和菓子 京都発 マリアージュの新潮流
  • TRIVIA
  • 2018.08.07

日本酒×和菓子 京都発 マリアージュの新潮流

マリアージュはフランス語で結婚を意味します。転じて、ワイン用語として「料理とお酒の良い相性」を示します。

肉料理には赤ワインなどと言われますが、素材、味付け、香り、料理の色の濃さなどにも注目して、素晴らしいマリアージュを見つける楽しみ方は、日本酒も同じ。和食との相性はもちろん抜群ですが、フレンチやイタリアンなど幅広い料理とのマリアージュが注目されています。

今回ご紹介するのは、なんと日本酒と和菓子のマリアージュ。同じ伝統的な和のものでありながら、一緒に楽しむことがイメージできない挑戦的な試みが、京都で行われているという。

味の特徴をつかむことが、ペアリングの第一歩

日本酒と和菓子のマリアージュは、京都が誇る伝統産業をこれまでにない切り口で、より幅広い年齢層に紹介することを目的に、京都市と商業施設「京都BAL」が共催で始めた事業の中での試み。過去2回実施し人気を博した。

言わずもがな、京都府は全国2位のシェアを誇る酒どころ。特に伏見は20件以上の酒蔵が集まる一大産地だ。良質な地下水が醸すまろやかな酒は「女酒」と呼ばれ親しまれてきたが、近年は各蔵の技術革新により味わいの幅は多種多様に。同じ京の名水で作られ、宮中や茶人から愛されてきた伝統ある京菓子をしかと受け止めてくれるはず。

マリアージュを監修するのは、京都市産業技術研究所で、醸造に関する研究を行なっている廣岡青央さん、清野珠美さんのお二人。研究を通じて市内の蔵元を支援することがミッションで、過去に「京の琴」「京の咲」など新しい日本酒酵母4種を開発してきたほか、新商品開発のサポートも行っているという。

「まずはお菓子を試食して、塩味や香り、渋みなど、甘さ以外に際立つ要素をリストアップします」と廣岡さん。その上で、各要素に合う日本酒を具体的にイメージしてから、実際に試していくそうだ。

日本酒の味を構成するのは、香りや甘味、酸味、苦味、旨みに加え、キレ味や飲み口などさまざま。ここでヒントとなるのが、ペアリングの初歩である「同調」と「対比」という手法。前者は似たような風味を、後者は異種のものを合わせるもの。「特に甘く個性が強い和菓子は、酸味と甘み、コクとキレのように、逆の要素を合わせる方が試しやすく、初めての方におすすめです」(清野さん)。

今回京菓子の老舗数社の協力を得て、エントリーされた和菓子からマリアージュが成立したのは全部で6セット。お二人が選んだ組み合わせと、その訳を見ていこう。

提案① 白みそカステラに、冷酒の純米吟醸を

まずは白みそを練りこんで焼きあげる京の伝統菓子「松風」と「純米吟醸の冷酒」のマリアージュ。過去2回のイベントでも一番人気だったというお二人自慢のセットだ。日本酒は、江戸初期創業の山本本家が、京都産酒米「祝(いわい)」と京都産の冷酒用酵母「京の咲(さく)」で仕込んだ純米吟醸。キリッと冷やすことでリンゴのように爽快な酸味と香りが弾け、フルーティな味わいが広がる。モッチリとした生地や白みそとの相性も抜群だ。

和菓子:鎰良光「加茂松風」
日本酒:山本本家「全量祝 神聖(純米吟醸)」

提案② 米感のある純米吟醸酒で秋の実りを味わう

続いて秋の味覚の代表格、さつまいもと栗を砂糖で煮詰めた甘納豆。お菓子ではあるが野菜そのものの風味や食感が際立つ。「素材の風味を引き立てるには、端麗な吟醸系がベスト。ただし栗や芋に負けない味があるものを」と廣岡さん。セレクトした「聚楽第 純米吟醸(佐々木酒造)」は、京都産酵母(京の琴)を使用し、米の旨みとコクを十分に引き出したお酒。ひと口含むと、吟醸らしいキレとのどごしも健在。このバランス感もたまらない。

和菓子:ぼうだい本舗「甘納豆 さつまいも・栗」
日本酒:佐々木酒造 「聚楽第(純米吟醸)」

提案③ 大吟醸で香りのマリアージュ

パイ生地風の皮の中には、塩気のきいたゆず風味のあんこ入り。「ゆずの香りに、華やかな香りの大吟醸酒を重ねてみましょう」と清野さん。黄桜の大吟醸「華祥風」は、精米歩合35%と極限まで磨いた米を使用しており、果実のように贅沢な香り、ふくよかな旨さが絶品だ。こちらは清酒の香りを際立たせるため、少量の醸造アルコールを添加している。「(独)酒類総合研究所が主催する全国新酒鑑評会の金賞受賞酒にも欠かせない手法になっている。香味成分を酒の中に閉じ込めることができ、香り豊かなお酒を醸します」(廣岡さん)。

和菓子:鎰良光「君影草」
日本酒:黄桜 「華祥風 黄桜(大吟醸)」

提案④ あんことフルボディ酒の素敵な関係

こちらは、粒あんを薄くのばして焼き上げた“あんこのクッキー”。小豆のほどよいポリフェノール感(渋み・苦味)も感じられるのも魅力だ。「あんこのコクには、純米や熟成酒のようなフルボディ系がよくあいます」(清野さん)。今回は、通常の純米以上のコクを求めて「月の桂 伏見・旭米(増田徳兵衞商店)」をセレクト。無農薬で育てた復刻米の旨み、バナナのような個性的な香りが、熟成感にも似たふくよかな味わいを生み出す。

和菓子:かぎや政秋「ときわ木」
日本酒:増田徳兵衞商店「月の桂 伏見・旭米(純米酒)」

提案⑤ ウォッシュ感のある生酒と

「クセになりそう!」と二人が絶賛したこちらは、抹茶をまぶしたくるみの砂糖漬。「フレッシュな生感がある“生酒”がぴったり。くるみの油分やお茶のほろ苦さをスッキリ洗い流し、次のひと口をさらに美味しくしてくれます」と廣岡さん。通常清酒は「火入れ(加熱処理)」をして出荷されるが、生酒は火入れせずに出荷されるため、しぼりたての新鮮な風味を感じることができる清酒です。脂肪分のある肉料理にも合うので、ぜひご自宅でもお試しを。

和菓子:ぼうだい本舗「麿くるみ」
日本酒:月桂冠 「生酒(本醸造)」

提案⑥ とびきり甘いデザートペアリング

最後は、6つの中で最も甘〜いお干菓子。「あえて一番甘いお酒を」と選んだのは、度数が低めで、甘酸っぱいデザートワイン感覚で楽しめる「プルミエアムール(北川本家)」。日本酒度を確認するとなんと−34.0!糖度が高いほど数が小さくなり、通常は±6.0以内であることをふまえると、かなり甘口であることがわかる。ワインの世界では、甘いチョコレートにポートワインのような赤の甘口ワインを合わせるのは鉄板。これは期待が高まりそう。

和菓子:鎰良光 干菓子(琥珀 朝顔・和三盆 金魚)
日本酒:北川本家 プルミエアムール/純米酒

今回誕生した6種類のペアリングは、8月11日(土)・12日(日)に、京都BALで開催されるイベント「KYOTO PARADOX」内で味わうことが可能。上記をヒントに、自宅でのデザートタイムやおもてなしで試してみるのもおすすめだ。

イベント情報はコチラ
http://www.bal-bldg.com/kyoto/

京都市産業技術研究所 研究室バイオ系チーム 研究主幹 廣岡青央さん(理学博士)、研究員 清野珠美さん(学術博士)