記事トップ

熱力学的ダイエット論 その2【第1弾】
  • HEALTH
  • 2019.03.29

熱力学的ダイエット論 その2【第1弾】

前回は、脂肪の過剰な摂取を避けるために、ごはんを中心としたでんぷんの多い食事が無難であることを述べた。今回は、エネルギーの消費にも目を向けたい。

運動すればエネルギーを使う。一日じゅう寝そべっていればエネルギーの消費は少ない。緊張したり汗をかいたりすればエネルギーを使う。しょうがでもとうがらしでも食べて身体が熱くなれば、量の多少はともかくエネルギーを消費している。

「エネルギーを使えば、やせる」

「使わなかったら、太る」

これがダイエットの第二法則である。例外はない。

1gの体脂肪は7kcalのエネルギーに匹敵

「体脂肪1g=7kcal」
体脂肪の増減を科学的に考えるさいに重要なので覚えておいてほしい。食品のカロリー表示を7で割った数字が、それを食べたときに産まれる体脂肪のグラム数であると考えてもいい。700kcalの料理ならば100gの体脂肪に匹敵する。油脂のカロリーは1gが9kcalだけれど、体脂肪組織には脂肪のほかに結合組織や水分などが含まれるので、1gが7kcalになる。

体脂肪が1週間で5kgも減るということはありえない

「1週間で体脂肪が5kg減ります」というのは物理学的にありえない。たとえなにも食べなくともこんなに減ることはない。体脂肪を消費する速度はゆっくりなのである。食事摂取基準(※)によると、運動選手などではない18〜29歳女性で1日に必要な(すなわち1日に消費できる)エネルギー量は平均すると1750kcalである。
(※「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省)のこと。栄養の欠乏や過剰症を防ぎ、健康の維持、増進に必要なエネルギーや各栄養素の摂取量の基準を示したもの。現在、2005年版が使われている。)
1750kcalに相当する体脂肪の重量は、先ほどの計算式ではカロリーの数字を7で割って250gとなる。つまり、なにも食べないと仮定しても、使われる体脂肪は1日250gであることがわかる。1週間なら2kgが限界。

なにも食べないで活発に動けばもう少し体脂肪は減るが、1日2時間歩いて200kcalを消費しても、その分の体脂肪の減少は1日に30g程度である。
もしもそれ以上体重が減ったならば次のようなことが考えられる。
まず、肝臓などに貯蔵されているグリコーゲンが絶食で枯渇するので見かけの体重が減る。グリコーゲン分子には水分子がかならず結合しているので、水分の減少もかなり大きい。合計すると短期間に数キログラムの体重減少になることは考えられる。もちろん、食べたらやがて元に戻るので本格的なダイエットとは言えない。
利尿作用のある薬品をのんだら一時的に体の水分が減る。体重の数値は減るが、水を飲んだら元に戻る。非合法な利尿成分は健康を害するので要注意である。

出典:女子栄養大学出版部「栄養と料理」

伏木 亨

伏木 亨

ふしき とおる

龍谷大学農学部教授、農学博士、龍谷大学農学研究科長

専門は農芸化学・栄養化学。「味覚と嗜好のサイエンス [京大人気講義シリーズ] 」ほか著書多数。日本香辛料研究会会長、日本料理アカデミー理事。平成24年日本農芸化学会賞受賞。平成25年飯島食品科学賞受賞。平成26年紫綬褒章受賞。