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BUSINESS 2020.02.13 Mog-lab取材スタッフ

龍谷大学農学部×伊那食品工業株式会社 「KANTENプロジェクト」が示唆する、寒天の新たな可能性

龍谷大学農学部と伊那食品工業による、寒天をテーマにした「KANTENプロジェクト」。2019年12月、その最終報告会が龍谷大学瀬田キャンパスにて行われました。寒天を活用すること以外、ルールはなし。5月のキックオフミーティング、8月の中間報告会を経て、たどり着いたそれぞれのゴールとは?学生チームが完成させた寒天プロダクトと、そこまでのプロセスをポスターセッション形式で発表。最後には各賞の発表と表彰も行われました。

企業と一緒に取り組む3回目のプロジェクト

企業と連携したこのような試みは、今回が3回目となります。初回の2016年にはハウス食品との「スパイスを使用した製品開発」、2018年にはローソンとの「新しいお米のカタチ」という共同プロジェクトを実施。そして2019年、龍谷大学農学部とタッグを組んだのが「かんてんぱぱ」ブランドで知られる寒天メーカー・伊那食品工業でした。寒天は、無色透明で、ほぼ無味な素材。それゆえ自由自在にカタチを変えられる特性が、全14チームのアイデアによって実証されました。

個性あふれる14チームと報告内容をご紹介

●Ama×Toma(植物生命科学科3年 井上愛茄さん・奥村穂香さん)

「甘酒×寒天×トマトジュース」
甘酒、トマトジュース、それぞれ単体では飲むことが苦手な人も、甘酒の甘みとトマトの酸味を合わせ、寒天の弾力を加えることで食べやすさが向上。子どもからお年寄りまで幅広い年齢層に向けた健康食品となった。

●寒天でスーパーボール(植物生命科学科1年 香川隼人さん・神田優さん・小池大景さん・神野椰直さん、食料農業システム学科1年 向井光生さん)

「寒天でスーパーボール」
伊那食品工業の担当者から、寒天強度の説明を受けた際に目にしたボール状の寒天からスーパーボールを着想。製品のイメージは、子ども向けの自由研究キット。かけ合わせる寒天の種類と割合を変え、それぞれの弾力を測定。

●根酸観察キット(資源生物科学科4年 吉田悠希さん・門間律さん・小澤佳穂さん・松園志織さん・加藤翔汰さん・片岡里樹さん)

「栽培植物の根酸を観察する寒天キットの開発」
一部の植物の根から分泌されている有機酸(根酸)を可視化するために寒天を活用して観測。pH指示薬を入れた寒天5種に植物の根を貼り、その周辺の寒天の色の変化を比較した。想定したのは中・高生の理科教育のための寒天キット。

●寒天ストロー(資源生物科学科3年 東浦仁美さん・古川有紗さん・岡山彩里さん・浦野梓さん・平井菜摘さん)

「寒天ストロー」
5種の寒天を比較しながら、最適な強度を導き出し、プラスチックに代わる寒天ストローを研究。またドリンクを飲み終わった後はストローまでおいしく食べられるよう、砂糖やコーヒーフレーバーをつけるというアイデアも斬新。

●TEAM寒天アイス(植物生命科学科2年 山中優香さん・佐藤友香さん・西村若菜さん・井上麻衣さん)

「溶けないソフトクリーム」
屋内でも手がベタベタになることなく、ソフトクリームをゆっくり味わいたい、という願望から製品化をスタート。寒天2種とアイスクリーム2種をかけ合わせながら、溶けないことはもちろん、口溶けの良い組み合わせを探した。

●チーム奥野研(植物生命科学科4年 田村仁さん・篠永隼さん・藤田祐輝さん)

「アガロースゲルに代わる電気泳動用寒天ゲルの探索 」
電気泳動に用いるアガーロスゲルは強度が比較的高く、DNAバンドが鮮明に確認できるけれど高価で高校の理科実験には不向き。そこでアガーロスゲルに代わる寒天ゲルを探すため、5種類の寒天を比較し、実験を繰り返した。

●Agar-agar(資源生物科学科4年 木村尚輝さん、資源生物科学科3年 中川鮎実さん)

「寒天を使った栄養食」
食物繊維不足を解消する、焼き菓子を考案。通常、冷やし固めることが多い寒天を生地に練り込んで焼き、アーモンドが香ばしいフロランタンに仕上げた。しかもアーモンドプードルや米粉を採用した、小麦粉不使用のグルテンフリー食品。

●チームドッグ(資源生物科学科2年 川北菜奈さん・中原紘子さん)

「犬×クッキー=イヌッキー」
人間のみならず犬も肥満傾向にある現代社会。低カロリーで食物繊維が腸内環境を整えてくれる、犬の肥満を防ぐ寒天クッキーを作成。寒天によってサクサクとした食感が生まれたクッキーは、犬だけでなく飼い主も一緒に食べられる。

●ペントロー(資源生物科学科2年 増田幸歩さん・新堂文郁乃さん・田中里奈さん・二ノ倉菜緒さん・前川結佳さん)

「寒天ストロー」
アメリカ・ヨーロッパを中心にプラスチック製ストローの廃止が広がっていることから、寒天製のストローづくりを研究。4種類の寒天を比較するとともに、どうすれば強度が高く、口当たりの良いストローになるまで試作を繰り返した。

●カヌレ(食品栄養学科3年 平川真斗香さん・中谷曜さん・新田晏子さん・早川実奈さん)

「華やKANTEN生け」
寒天に好みの花を生けるだけ、あとは水の交換なしで2週間は美しい状態をキープできる。寒天を流し入れた、フワラーベースを考案。4種のカラー展開や華やかなラメ使い、好きな角度で固定できるなど、インテリア雑貨として優等生。

●ヴィーガンチーズ(食品栄養学科2年 猪田美里さん・日比裕美子さん)

「ニュートリショナルイーストdeヴィーガンチーズ」
たんぱく質やビタミンB12が豊富で、チーズのような風味を持つ、ニュートリショナルイースト(=サトウキビとビートを原料とする糖蜜を培養・発酵させて作った酵母を乾かしたもの)と、寒天の食感を利用した植物性チーズの提案。

●チームヤマザキ(食品栄養学科1年 前田穂乃香さん、食料農業システム学科1年 世古祭さん・諏訪由真さん・髙田友紀子さん・田中湖都さん)

「寒天だし」
めざしたのは、誰でも簡単に使える万能な寒天だし。餃子とロールキャベツを作る過程で、寒天だしの加え方や量を変えて試食を重ねた。寒天だしは塊で使わず、肉餡と混ぜ合わせることで、お肉がしっとり柔らかくなるという結論に。

●#カンドリ(食料農業システム学科3年 大東夏美さん・豊島彩世さん・安田瑠花さん)

「カンテンドリンク」
大ブレイクしたタピオカドリンクの次は、低カロリーで食物繊維が豊富な寒天ドリンクを。長野県に本社をおく伊那食品工業にちなんで、ブルーベリーやぶどうといった長野県特産のフルーツを使用。フローズン寒天で味の薄まりも解消。

●チーム塩尻(農学研究科修士課程2年 萩原幹花さん、植物生命科学科4年 廣本結香さん、植物生命科学科3年 東晃大さん・原田将和さん)

「KANTENそ・だ・ち」
プラスチック削減の第一歩として、農学部全体で年間1万個を使用しているプラスチック製の育苗ポットに着目。土に還るジフィーポットを寒天でコーティングしたり、土ではなく寒天自体を培地にしたり、未来の育苗ポットを探求した。

固定概念を飛び越える、柔軟なアイデアが好評価

伊那食品工業からは、取締役開発本部長の柴克宏さん、取締役営業本部長の湯澤正芳さん、研究開発部の根橋怜美さん、大阪支店支店長の伊藤哲成さん・営業部主任の小野哲彦さん。龍谷大学からは、副学長の藤原直仁さん、瀬田教育学部長の横田岳人さん、農学部長の大門弘幸さん、アドバイザーの農学部教授伏木亨さん。以上、9名の審査員によって決まった受賞チームは、次の通りでした。

伊那食品工業賞…カヌレ「華やKANTEN生け」
学長賞…チーム塩尻「KANTENそ・だ・ち」
瀬田教学部長賞…#カンドリ「カンテンドリンク」
農学部長賞…ヴィーガンチーズ「ニュートリショナルイーストdeヴィーガンチーズ」
オーディエンス賞…寒天でスーパーボール「寒天でスーパーボール」

無限の可能性を秘めた寒天で社会問題を解決

最終報告会の終盤、「KANTENプロジェクト」のアドバイザーを務めた、農学部教授の伏木亨先生からも、コメントをいただきました。
「寒天というポテンシャルの高い素材から、さまざまなモノが出来上がるであろうと想像はしていましたが、学生たちのアイデアは私の想像が及ばない領域にまで広がっていました。一つひとつの完成度が高く、すぐ商品化できそうなものもあるのではないかと感じています。中でも、心にとまったのはプラスチック素材に代わるストローや育苗ポットなど、地球環境に配慮した案件です。社会問題ときちんと向きあい、農学部生らしい解決策を生み出せたことを評価したいと思います。」

学生自体が方向性もゴールも設定し、チームがひとつになってプロセスを考え抜く課外活動。半年以上に渡ったプロジェクトという、新しい挑戦を乗り越えた学生さんたちの表情はとても晴れやかでした。

龍大農×伊那食品工業(株)「KANTENプロジェクト」最終報告会の様子
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-4753.html