記事トップ

CULTURE 2020.03.05 Mog-lab取材スタッフ

~失われた食材 「姉川クラゲ」をよみがえらせたい~ 「姉川クラゲ」を練り込んだコシの強い蕎麦を開発

滋賀県にある伊吹山の麓(流水地域)で山菜採りの一環として採取され、食べられてきた「姉川クラゲ」。一般にイシクラゲと呼ばれるネンジュモ科に属する陸棲ラン藻類の一種で、現在では現地の一部の高齢者を除いて食習慣はほとんどみられず、この食文化が消えようとしてます。

そこで龍谷大学農学部4学科の学生・教員が学科の垣根を越えて集結し、この「姉川クラゲ」の魅力、価値を再発見するプロジェクトが始動しました。

そして遂に完成した「姉川くらげそば」の試食会と研究報告会が実施されたので、その様子をご紹介します。

■姉川クラゲプロジェクトについて

まずは農学部食料農業システム学科坂梨先生より本プロジェクトの概要や姉川クラゲの詳細について説明がありました。姉川クラゲは地元ではイワタケ、イシタケ、または単にクラゲと呼ばれており、戦中・戦後には天ぷら、酢の物、お味噌汁に入れたりしてよく食べられていたそうです。
昭和59年の新聞にはレシピが紹介された過去もあるほどなので、当時は今以上に食習慣があったことがうかがえます。そしてこのイシクラゲ、実は沖縄県宮古島でもオカノリ、リクノリと呼ばれ販売されているという非常に興味深い話も。

直売所で販売されているオカノリ

■イシクラゲが世界を救う!?驚きの実態

次に農学部資源生物科学科の玉井先生が、イシクラゲの凄さについて様々な視点から解説されました。
まずイシクラゲは超環境ストレス耐性植物だということ。極度の乾燥、貧栄養、高温、真空、紫外線や放射線にも強いため、レンジで温めても死なず、宇宙空間でも生きていけるそうです。これからの環境問題、エネルギー問題や宇宙開発にも活躍が期待され、まさに「世界を救う」可能性を持っています。

また、イシクラゲには生理活性物質が多く含まれていて、抗ガン性、抗ウイルス性、抗菌性、炎症抑制剤、抗酸化活性など様々な報告例があるそうです。こういった機能性食品としての側面に加え、農薬や化学肥料など使用せずに栽培することもできるというまさに三拍子揃った魅力を持っているのです。

■姉川クラゲを分析

農学部植物生命科学科古本先生からは「姉川クラゲ」のほか、各地のイシクラゲをDNA分析した研究報告がありました。

食用にされているイシクラゲは通常のイシクラゲと同じなのかそれとも特殊なものなのでしょうか。これを確かめるために、「宮古島のオカノリ」と「伊吹山の姉川クラゲ」、それに大学の近隣などから採取したイシクラゲからDNAを抽出し、部分配列を解析しました。
すると、伊吹山と宮古島のイシクラゲは、単一種で、いわゆるイシクラゲと考えられること、それ以外のものは、イシクラゲに加えて色々な生物種が混ざった状態であることが判明しました。食用のものは、ちゃんとイシクラゲだけを選抜できる生育条件を選んで利用しており、そこらあたりに生えているものを食用にはしていないことがわかりました。

■イシクラゲを蕎麦にしたその理由とは

最後に農学部食品栄養学科朝見先生が登壇。蕎麦という食材を選んだ理由について解説されました。新潟で食べられている「へぎそば」は蕎麦の「つなぎ」として海藻(ふのり)が練り込まれており、これに着目したのがきっかけでした。
試しにイシクラゲを蕎麦粉に混ぜてみると、コシが出て歯ごたえがよくなるというデータ結果が出て、蕎麦の中にあるたんぱく質の構造変化が起こることが分かりました。
そこで滋賀県内唯一の乾麺製造業者「田中製麺所」に試作を依頼して、イシクラゲの分量、小麦粉と蕎麦粉の割合など試行錯誤を繰り返し遂に「姉川くらげそば」が完成したのです。

■姉川くらげそばを実食

こちらは試食で提供された姉川くらげそば。イシクラゲを添加することで色味も濃くなっていて、見た目からも蕎麦らしさが強調されています。イシクラゲは無味無臭なので、蕎麦本来の風味を損なうことがないのも特徴で、朝見先生の解説通り、コシが非常に強く歯ごたえがあってのど越しも良い蕎麦です。
イシクラゲによって麺がのびにくくなり、温かい蕎麦でもコシがでるそうです。

最後に玉井先生から「これから商品化に向けて、イシクラゲの栽培できる場所を増やし供給体制を整えていきたい」という話がありました。
「姉川くらげそば」商品化に向けて、続報が楽しみです。