TOP / Business / 世界の市場で日本の食を売るための戦略

食品を扱う日本の企業が続々と海外に進出し、現地の方々に日本由来の食を販売しています。では、どのように販売しているのでしょうか?
例えば、ファストフードチェーンのモスバーガーは9カ国・地域に進出しています。
台湾には303軒(2023年3月時点)も店舗があります。

ところで、台湾のモスバーガーで特に人気のメニューは何でしょうか?

それは、お米を使ったライスバーガーです。ライスバーガーの種類は、日本よりもバラエティに富んでいます。定番の海鮮かき揚げや焼肉の他に、季節限定商品まで含めると、時期によっては10種類にもなります。
ライスバーガーのお米の部分は、大麦入りかキヌア入りかを選べます。また、満腹感が得られるよう日本のものよりお米の量を増やしているそうです。台湾では塩味に敏感である人々が多いため、塩味を抑えて甘めの味付けにしてあります。
朝食限定のメニューも充実しています。フレンチトーストやオムレツバーガーなどは店内で調理されたものが提供されています。
台湾では元々外食文化が発展しており、3食とも外食やテイクアウトで済ませる人が多いです。モスバーガーもそのような需要に応えるため朝食の充実に力を入れています。

外食企業だけでなく、多くの食品メーカーも海外で製品を販売しています。

例えば、日清食品のカップヌードルは世界約100カ国で販売されています。
ところで、日清食品は日本と同じ商品を世界中で販売しているのでしょうか?

中国のカップヌードルはXO醤海鮮味や麻辣牛肉味など中国ならではの味があり、色とりどりのパッケージで、フォークも入っています。
インドでは、牛肉を食べないヒンドゥー教徒や豚肉を食べないイスラム教徒のために、チキンやマトンのカレー味があります。また、人口の約3割を占めるベジタリアン向けに、野菜のみを使ったカップヌードルも売られています。
インドの人々は麺をすすって食べるのではなく、スパゲッティのようにフォークで麺を巻いて食べるため、麺は短くスープの量も少なく設計されています。

このように、現地のニーズに合わせること、つまり「現地化」と呼ばれる戦略をとる企業があります。それでは、海外に進出する全ての食品関連の企業が現地化戦略をとっているのかというと、そうでもありません。

商品やサービスなどを世界中で統一する「標準化」と呼ばれる戦略をとる企業もあります。例えば、ヤクルトは世界40カ国・地域で日本と共通の味、似た形状の容器で販売されています。そして、日本だけでなく世界中で女性販売員による消費者への直接販売を行うなど、販売方法も統一しており、とても効率が良いように思います。

現地化や標準化は一概にどっちがよいかは言えず、どの企業も進出先国・地域の状況、経営の方針などに応じて2つの戦略を使い分けています。

私はこのような企業の海外戦略を研究してきました。研究の一環でヒアリングを行ったどの企業の方々も、現地の社会や文化をよく理解し、現地の方々との交流を大切にしておられました。世界の市場で日本の食を売る際には、そのような姿勢が重要だと考えています。今後も様々な角度から海外に進出した企業を分析していきたいと思います。