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食品栄養学科の大学生団体が伝える「運動部学生の体づくりに必要な、食と栄養のはなし」

龍谷スポーツ栄養

龍谷大学農学部 食品栄養学科 学生団体

食品栄養学科の大学生団体が伝える「運動部学生の体づくりに必要な、食と栄養のはなし」

龍谷スポーツ栄養

龍谷大学農学部 食品栄養学科 学生団体

「龍谷スポーツ栄養」は、龍谷大学 農学部 食品栄養学科の学生10名と管理栄養士の助手の先生3名で構成されています。授業で得た知識を活かして、中学校・高校・大学の運動部を栄養教育の観点からサポートしています。

今回は「龍谷スポーツ栄養」に、運動部で頑張る学生や、子どもたちを支える保護者に向けて「体づくりに必要な食と栄養」について教えていただきました。

食品栄養学の知識を、学生スポーツの現場に活かす

龍谷大学 農学部 食品栄養学科の学生団体「龍谷スポーツ栄養」

私たちは農学部 食品栄養学科で、健康科学やスポーツ栄養学、栄養教育論など、栄養と健康の仕組みを勉強しています。授業で学んだ知識を学生スポーツの現場で活かしたいと考え、選手の競技力向上を目的として、栄養面での指導およびサポートをおこなっています。

具体的には、高精度体成分分析装置「InBody」での測定と分析、一人ひとりの体に合った食事指導などです。スポーツの種類や性別、年齢により指導内容を変えています。

これまで、滋賀県大津市立日吉中学校バドミントン部、滋賀県立膳所高校 野球部、龍谷大付属平安高校バスケットボール部、龍谷大学 陸上競技部の長距離・短距離部門へ講習会を開催してきました。

体格づくりと栄養の関連に関心をもつ、滋賀県立膳所高校 野球部

滋賀県立膳所高校 野球部は、2018年の第90回記念選抜高校野球大会に21世紀枠で出場した実力のあるチーム。全国でも珍しく、データ分析の専門部員も所属しています。データに重きを置く監督からは「選手の体格を大きくするために、どのような食事をとるのが効果的なのかを知りたい」と相談を受けました。

2023年11月の第1回目サポートでは、選手のうち20名が瀬田キャンパスに来校。講義の後に体組成の測定をおこない、測定結果と食生活アンケートをもとにした食事習慣の個別指導を実施しました。選手たちはみな自分たちの体づくりに関心が高く、食生活の改善に意欲的でした。今後は2ヶ月に1回、選手や保護者に指導をおこなう予定です。

左上から時計回りに「龍谷スポーツ栄養」リーダーの中島海斗さん、奥谷 桜さん、田中 秀輔さん、楯野 七海さん

専用測定機で、体の組織を把握しよう

スポーツ選手は誰でも、競技力を伸ばしたい、もっと強くなりたいと考えているでしょう。確かに、技術を身につけるために練習やトレーニングを積むことは大切です。しかし、スポーツをする上で大切なのは、土台となる体づくりであることを彼らは見落としがちです。競技において最大のパフォーマンスを発揮するに必要なのは、やはり土台である体だと考えます。特に、中・高生は体をつくる時期ですので、食に意識を向けて体づくりに取り組んでほしいと思います。

体づくりというと、体重数値の増減に目がいく人が多いでしょう。しかし、注目すべきは体の組織がどのような状態であるかということです。体は筋肉の大部分であるタンパク質、脂肪、水分、ミネラルなどで構成されています。体をつくる元となるのは食べ物です。摂取した食べ物は、体を構成する成分の材料として使われるのです。

体成分分析装置「InBody」で体組織の測定と分析をおこなった

食事を考える前に、まず大切なのは自分の体の状態を把握することです。私たち「龍谷スポーツ栄養」の講習会では、体成分分析装置「InBody」を使用して、体重、体脂肪率だけでなく、腕や脚、体幹の筋肉量のほか、左右の体のバランスを測定します、また、持久力向上に不可欠な酸素を運ぶ血液中のヘモグロビン量も測定します。

家庭では細かな測定や分析は難しいと思いますので、体成分分析装置を設置しているトレーニングジムや医療機関、自治体の体育館で測定をお願いするとよいでしょう。測定結果をみると自分の体に何が足りないかがわかります。1日に必要な炭水化物やタンパク質の量を計算することもできます。

テレビやインターネットには、健康に関する情報が溢れています。しかし、その情報が正しいかどうか疑問に感じるものもありますし、正しかったとしても、その人にとって100%良いものとは限りません。そのためにもまず、自分の体の現状を知ることが必要となるのです。

食事は「栄養素」と「タイミング」を意識すると体づくりの効果がアップする

食事改善でもっとも大切なのは「食事内容」と「食べるタイミング」です。つまり「何を」「いつ」食べるかにより、どのような体がつくられるかが決まるということです。

成長期は特に、1日3食をしっかり食べることが前提となります。朝は10〜20分程度の有酸素運動のあとに朝食をとると脂肪が燃えやすいという実験結果があります。朝、起きたらジョギングやストレッチなどで有酸素運動をおこなうことを習慣化したいですね。

運動部の学生は補食の活用がカギとなります。朝練習や部活などで消費するエネルギー量が多く、3食だけでは体づくりに必要な栄養素が足りなくなってしまうからです。望ましいのは、運動後30分以内の補食です。食べるまでの時間が短ければ短いほど、糖質がエネルギーに変換されます。同時にタンパク質を摂取すると、失ったエネルギーを早く回復させることができます。

手軽に補食を摂るなら、糖質が含まれたおにぎりやゼリー飲料、タンパク質が豊富なサラダチキンやスパゲティサラダがおすすめです。コンビニのおにぎりは量が少ないので、自宅で茶碗1杯分のおにぎりを作って学校に持っていくと良いと思います。具材は、タンパク質が含まれた枝豆や、汗で失われた塩分を補給できる塩昆布がベストです。

学生たちの測定結果をみると男性も女性も貧血の人が多いので、ふだんの食事では鉄分を積極的に摂りたいですね。特に、長距離走など競技時間が長いスポーツでは運動の途中で赤血球が壊れやすくなりますので、鉄分摂取を意識してほしいと思います。

栄養素の鉄分には2種類あります。レバーやカツオなど動物性食品に多く含まれる「ヘム鉄」は体に吸収されやすいのですが、毎日食べるのは難しいかもしれません。干しひじきや小松菜、納豆などに含まれる「非ヘム鉄」は吸収率が「ヘム鉄」の5分の1と低いのですが、ビタミンCと一緒に摂ると吸収が促進されます。ビタミンCを含むフルーツや野菜、オレンジジュースと組み合わせたメニューがおすすめです。

栄養摂取の知識は、中・高生や大学生に限らず、社会人のみなさんにも身につけていただきたいと思っています。授業や仕事の集中力が上がったり、趣味のランニングや農作業で疲れにくくなったり、お子さんや家族の健康を支えたりと、さまざまな場面で役に立つと思います。

私たち「龍谷スポーツ栄養」の学部生は皆、管理栄養士を目指して日々勉強しています。メンバーには管理栄養士の助手がおり、教授とも連携を取りながらスポーツに励む選手たちを食の面でサポートしています。これからも、選手一人ひとりと向き合って体の状態を分析し、競技力を向上できるように尽力したいと思っています。