2025年5月23、24日の2日間、京都市・岡崎にある京都みやこめっせで行われた「第2回 オーガニックライフスタイルEXPO WEST in 京都2025」。野菜や果物、マクロビオティック食品、有機米、スキンケア、オーガニックコットンなどを扱う企業や団体、生産者が一堂に集いました。「食と農のソーシャル・イノベーション」をテーマに、有機農業の普及に取り組む政策学部・大石ゼミの3回生たちもイベントに参加。学生たちは、京都市・大原で有機農業に取り組む農家さんを紹介するパネル展示の隣で、自分たちで仕入れた有機野菜の販売を行いました。今回は、ブースに立った代表学生5人に、イベント参加の感想と有機野菜への思いをお聞きしました。
食の安全や環境保全の重要性から推進されている有機農業や、有機農産物の魅力が社会に十分に伝わっていないという課題に対し、その解決に向けた取り組みの一環として、オーガニックフェスタに参加しました。
このイベントは、オーガニック、ナチュラル、エシカル、サステナブルなど、さまざまなテーマを掲げた130ブースが並ぶ関西最大級のオーガニックフェスタ。有機農業について紹介するパネル制作も、すべて学生たちの手によって行われました。
有機農業とは、化学的に合成された肥料や農薬を使用せず、遺伝子組換え技術も使わないことを基本とする農業です。日本では、農林水産省が定めた「有機JAS」の基準に従って生産された農産物だけが「有機農産物」として認められ、有機JASマークを表示することができます。
日本における有機農業の普及状況は、野菜で0.46%、米・麦・果実ではわずか0.1%と、有機農産物が占める割合は非常に低いのですが、新規就農者の2〜3割が有機農業に取り組んでいるという前向きな動きもあり、今後の広がりが期待されています。
大原で有機農業を営む方々にインタビューを行い、有機農業の魅力や課題、そして消費者の皆さんに伝えたい思いなどをパネルにまとめました。なかでも、フィールドワークにご協力いただいている「パープルファーム」の藤岡良さんは、学生たちにとって顔馴染みの有機農家さんです。
大志万 史瞳さん(政策学部3年生)
「大原に広がる藤岡さんの畑には、今年2月から毎週木曜日に通わせていただいています。藤岡さんは、大学時代にフィールドワークを通して有機野菜と出会ったことをきかっけに、有機農家の道に進まれた方です。これは藤岡さんが育てた野菜ですよ』とお声がけするだけで、クオリティの高さが伝わる、そんな知る人ぞ知る農家さんです」(大志万さん)
山口 朋香さん(政策学部3年生)
「藤岡さんの農場に通う中で、有機質肥料の選定だけでなく、JAS認証を取得するためには審査を受けなければならないことや、出荷する際にも細かな手続きが必要であることを知りました。有機野菜を届けるということは、決して簡単なことではありません。おいしくて安全な野菜を作るためには、多くの手間と時間、そして労力がかかります。そのおいしさは、そうした努力の積み重ねの先にあるのだと思いました」(山口さん)
山本 颯さん(政策学部3年生)
「これまでも農業は大変そうだ、と漠然と思っていましたが、実際に作業をしてみて、その大変さを身をもって実感しました。草抜きにしても、鶏ふんの堆肥をまく作業にしても、想像以上に作業量が多く、僕たち8人がかりでもかなり時間がかかりました。それを日常的にこなされていると思うと、本当に驚かされます」(山本さん)
手作業も多く、体力勝負の農作業。その疲れを癒してくれたのが、収穫したばかりの野菜を現地で味わうことだったそうです。
鎌田 奎吾さん(政策学部3年生)
「収穫作業は、やはり楽しかったです。地道な草抜き作業を重ねて野菜がしっかり育ち、それを自分たちの手で収穫し、料理して、みんなで囲んで食べる。そうした一連の営みをすべて体験できたことは、貴重な経験になったと思います。大原の有機野菜はどれも味が濃くておいしいのですが、最近特に気に入っているのはズッキーニです。シンプルにソテーするだけで、おいしいくいただけます」(鎌田さん)
オーガニックフェスタでは、情熱を持って野菜と向き合う農家さんや、テーブルに並べた採れたての野菜をPRするだけでなく、来場者の方々と直接会話することで、新たな気づきや発見もあったそうです。
「ブースに立ち寄ってくださった方々との会話を通じて、大原の有機野菜がすでに多くの方に知られていることを、改めて実感することができました。また、今回の出展では、仕入れも私たちが担当したのですが、特に難しかったのが値段の設定です。有機野菜に関わるゼミの活動を知っていただくことが主な目的でしたので、利益を重視した価格にならないように気を付けていました。それでも、来場者の方々からは『けっこう高いんですね』といった声があり、農家さんにとっても、消費者の方にとっても、双方が納得できる価格で売買することの難しさを実感しました」(山本さん)
木村 つばささん(政策学部3年生)
「これまでもマルシェやイベントに参加したことはありましたが、一般のお客様とお話しすることがほとんどでした。今回は、長野県で三ツ星レストランを経営されているシェフの方や、商談を目的に来場された方ともお話しすることができ、とても貴重な経験になりました」(木村さん)
「インタビューにご協力くださった農家さんたちから、『まだまだ大原の有機野菜を知らない方が多いので、認知してもらえる機会を増やしたい。学生さんたちの活動は本当にありがたい』というお言葉をいただけたことがとても嬉しく、励みになりました。価格に対して慎重な消費者の意見を知る一方で、有機農家さんの営みを間近で学んでいる僕たちだからこそ、果たせる役割があると感じています。有機農業と消費者をつなぐ“架け橋”のような存在になれたらと思っています」(鎌田さん)
安全でおいしい有機野菜を多くの人に広めたい
今回のイベントに参加して、オーガニックに携わるさまざまな企業や団体の活動を知り、新たに挑戦してみたいことも芽生えたそうです。
「さまざまな企業の方がブースに立ち寄ってくださり、お話しを重ねるうちに、いつか一緒に取り組める機会があれば嬉しいな、という気持ちが芽生えました。例えば、どこかのマルシェに共同で出展したり、地域のイベントに参加して、有機野菜を広めていくような活動も面白そうだと思っています」(木村さん)
「これまでも、キャンパス内の『Café Ryukoku &』に有機野菜を納品したり、キッチンカーで有機野菜を使ったスープを販売したりといった活動を行ってきました。今後も、ひとりでも多くの学生に有機農業を知ってもらえるよう、活動を続けていきたいです。また、有機野菜には、需要と供給の変動に左右されにくく、長期的に価格が安定しやすいといった、あまり知られていない魅力もあります。そうした点も含めて、有機野菜の価値をより多くの人に伝えていけたらと思っています」(山本さん)