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絵本と食べ物のおはなし④『ガンピーさんのふなあそび』-絵本に描かれるアフタヌーンティー-

生駒 幸子

龍谷大学短期大学部准教授、博士(人間科学)

絵本と食べ物のおはなし④『ガンピーさんのふなあそび』-絵本に描かれるアフタヌーンティー-

生駒 幸子

龍谷大学短期大学部准教授、博士(人間科学)

絵本には、子どもたちが大好きな食べ物がたくさん登場します。一度食べてみたいと幼心に感じた人も多いのではないでしょうか。絵本研究者で龍谷大学短期大学部こども教育学科の准教授を務める生駒幸子先生に、絵本と食べ物の切っても切れない関係を語っていただきます。

 

<書籍データ>初版1976年
ガンピーさんのふなあそび
作:ジョン・バーニンガム
訳:光吉夏弥
出版社:ほるぷ出版

 

<あらすじ>
川のほとりに住むガンピーさん。ある日、小舟に乗って出かけます。すると、子どもたちやうさぎ、ねこ、いぬ、ぶた、ひつじ、にわとり、こうし、やぎ…が、次々小舟に乗せてとやってきます。みんな仲良く乗っていたのですが、やがて…。

イギリスの牧歌的な田園風景を描いた絵本

イギリスの絵本作家、ジョン・バーニンガムが1970年(昭和45)に手がけた絵本です。この作品は、日本ではあまりメジャーとはいえませんが、イギリスでその年に出版された絵本のなかで特に優れた作家に対しておくられる「ケイト・グリーナウェイ賞」に選ばれました。以前、ご紹介した『かいじゅうたちのいるところ』と同様に、この作品もヴィクトリア朝の絵本の技法である線のタッチを巧みに活かした、やわらかな絵が特徴的。イギリスの牧歌的な雰囲気が伝わってきます。

懐の深いイギリス紳士のガンピーさん

川のほとりの家に住む主人公のガンピーさん。ある日、小舟に乗って川を進んでいると、子どもたちやうさぎ、ねこ、いぬ、ぶた、ひつじ、にわとり、こうし、やぎ、と実にたくさんの仲間たちが船に乗せてとガンピーさんにお願いします。
この絵本を読んでいる子どもたちにすれば小舟が転覆しないかヒヤヒヤしてしまいますが、そこは懐の深いイギリス紳士のガンピーさん。騒いだりいじめたりしないなら乗ってもいいよと優しく受け入れます。
最初はみんな川下りに夢中になっているのですが、次第にみんなが禁止事項を破りはじめ…。こうなると当然、小舟はひっくりかえってしまいます。みんなびしょ濡れです。
なんとか無事に岸へと上がったガンピーさんたち一行。濡れた体を太陽にあてて乾かすと、ガンピーさんは何事もなかったかのように、「そろそろおちゃのじかんだから」とみんなをアフタヌーンティーに招待します。このシーンにも、ガンピーさんの懐の深さが感じられますね。

テーブルを囲んでティータイムを楽しむ幸せな時間

アフタヌーンティーといえば、イギリスを代表する食文化。ガンピーさんが用意したアフタヌーンティーも、サンドイッチやたくさんのフルーツ、イギリス伝統のヴィクトリアンケーキに甘いメレンゲのお菓子やショートブレッドクッキーといった古典的菓子も並び、子どもたちもティータイムに参加しているような気持ちになります。敢えて文章を入れず絵だけでこの様子を表現しているのも印象的です。
私が師事した絵本研究者の正置友子氏は、この絵を見て「まさにイギリスのアフタヌーンティーだわ」とおっしゃっていました。
正置氏は、大阪・吹田の千里青山台団地で「青山台文庫」を開設する傍ら、イギリス・ローハンプトン大学大学院に留学し、ヴィクトリア時代の絵本研究で博士号を取得しました。イギリス人は、本当にお茶をよく飲むそうで、朝昼夕はもちろん、なにかにつけティータイムを楽しむ文化が根付いています。そんなイギリスのことをよく知る正置氏からしても、この絵はアフタヌーンティーを正確に描写していると感じたのでしょう。

みんながテーブルを囲んでティータイムを楽しむ光景は幸せそのもの。牧歌的な風景を描くことが多いジョン・バーニンガムの作品のなかでも、とりわけ好きな一冊です。