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野菜の大敵「病虫害」 ~ カレーの真実 ③ ~

岩堀 英晶

龍谷大学農学部教授、博士(農学)

野菜の大敵「病虫害」 ~ カレーの真実 ③ ~

岩堀 英晶

龍谷大学農学部教授、博士(農学)

具だくさんの「野菜カレー」なんてのが好まれるように、カレーの美味しさを「ぐっ」と引き立てる具として、ジャガイモや人参、たまねぎなどの野菜は欠かせません。
美味しい野菜が食卓に届くまでには、生産者の方々が行う様々な努力がありますが、特に「病害虫の防除」は野菜の生産において大きな課題です。

線虫によって収穫量が10%~20%減少?

農業生産に被害をもたらすのは、悪天候や栽培の失敗のほかに、農作物の病気や害虫による被害(病虫害)があります。病虫害には様々なものがあり、病原体や昆虫ばかりが目につきやすいのですが、実は畑の土の中には肉眼で見ることができないくらい小さな「線虫」という生き物がいて、大きな農業被害を引き起こしています。

カレーに欠かせないジャガイモや人参、トウガラシは特に線虫の被害を受けやすい作物といえます。線虫のいる畑では10%~20%の収穫量を減少させ、ひどい時には枯死して収穫が皆無になることもあります。線虫は世界の農業生産に約780億ドル(約8.5兆円)の被害をもたらしているとする推計もあります。

農薬を正しく使用することが重要!

このような病虫害を放置しておくと、野菜は生育不良となり、収穫量は減少し、生産効率は落ちてしまいます。また、外形が変形したり腐ったりして著しく商品価値は下落してしまいます。

病害虫防除のための代表的な対策としては「農薬」の使用があり、日本の農業は農薬に大きく依存しています。農薬と聞けば体に有害な印象があり、不安を感じる消費者も多いのですが、近年では毒性が低く分解性も高くなっています。使用基準をしっかり守って使用すれば心配はありません。

カレーの具となる野菜を安定的に生産し、食卓に届けるためには、病虫害農薬をいたずらに恐れ、拒絶するのではなく、科学的に冷静に判断し、有効に活用することが必要なのです。